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「安倍改憲」のキーマンは引退した老弁護士 高村正彦76歳の思惑 - 「週刊文春」編集部

「憲法改正 要路に『安倍派』」、「改憲へ強気の党人事」。10月2日の自民党役員人事を受けて翌日各紙にはこんな見出しが躍った。ともに安倍晋三首相に近い、下村博文元文部科学相を党憲法改正推進本部長に、加藤勝信前厚生労働相を党の最高決定機関である総務会の長に就け、悲願の改憲を加速させる――そんな見方が広がったのだ。

昨秋の衆院選で息子に地盤を譲り引退 ©共同通信社

だがこの見方は同日、早くも変容しはじめる。キーマンは、今や非議員ながら首相への強い影響力を保ち続ける高村正彦前自民党副総裁(76)。この日、午後1時過ぎに官邸に入ると、約1時間に及ぶ首相とのサシの会談で、知られざる提案をしていた。

「正式な改憲条文案ならば総務会決定が必要だが、今国会に示すのは、あくまで自民党の考え方を示すための“条文案”だから総務会を通す必要はない」と説明。首相も「それでいい」と応じた。

つまり10月下旬からの臨時国会で衆参の憲法審査会に提出される自民案は総務会を通っていない「たたき台」に過ぎなくなる。「秋の臨時国会で改憲議論を」と主張してきた首相のメンツは立つが、「改憲原案」(国会審議に付す正式な条文案)提出からは遠のき「急がば回れ」を意味する。

個室が用意された高村氏

安倍首相は総裁選で、自衛隊明記など改憲4項目について強気の発言を連発。対する石破茂元幹事長は総務会を経ていない4項目は正式な自民案ではないと反発し続けていた。理屈の上だけなら石破氏が正論。「だからこそ首相は総裁選で圧勝し、その余勢を駆って総務会で改憲4項目をきちんと通す構えだった」(政治部デスク)。

ところが結果は石破氏の善戦で、当初の強気シナリオで突き進めば大混乱は必至。そこで一計を案じてペースダウンを狙った高村提案は、まさに「渡りに船」だった。

実は2人は、2日前の1日にも会談。首相は高村氏に「改憲は手伝って欲しい。党本部に個室を用意しますから」と推進本部の最高顧問就任を要請した。弁護士資格を持つ高村氏は安倍氏が総裁に復帰した2012年に副総裁に就任すると「安倍総裁の顧問弁護士になる」と宣言。

集団的自衛権の行使を認める憲法解釈変更や天皇陛下の退位、総裁任期延長といった重要課題を悉(ことごと)く仕上げた実績がある。

高村氏の個室は、憲法改正推進本部長室を区切って新設される。「安倍改憲」のペースを握るキーマンは下村氏ではなく、引退した老弁護士が担うことになりそうだ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2018年10月18日号)

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