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トヨタとソフトバンク、時価総額1位と2位が握手したワケは? - 中西 享 (経済ジャーナリスト)

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 日本の株式市場で時価総額トップのトヨタ自動車と、2位のソフトバンクが自動運転やライドシェアなど次世代の移動サービス事業で手を握った。車づくりでは世界でナンバーワンのトヨタが、車とは直接的には縁のなかったソフトバンクと提携するとは誰も予想してなかった。しかし、提携を発表した4日に豊田章男社長と孫正義社長ががっちりと握手を交わした。

「強者連合」

 孫社長は「この提携は第一弾で、より幅広い提携になることを願っている」と述べたのに対して、豊田社長は「新しい仲間と提携したことでモビリティサービスを拡大できる」と応じ、得意分野を生かせる「強者連合」による相乗効果が期待できそうな雰囲気が感じられた。

 株式市場では両社は「仲が悪いのではないか」と見られていたようだが、自動車を取り巻く環境がまさにコペルニクス的な大変革が起きる中で、両社の経営陣は時代の先を見据えていた。

 豊田社長はこの日の会見で「トヨタが自動運転やライドシェアなどの事業で提携しようとした会社(例えば米国のウーバー・テクノロジーズや中国の滴滴出行)の資本を見ると、どれもソフトバンクが筆頭株主になっていることに驚いた」と述べて、ソフトバンクを敵に回すことは不可能だと判断した。それなら手を組んで味方につけるしかないとして、トヨタの側からソフトバンクに声をかけた。その後、両社の若手社員による会議を進める中で、移動体サービスで提携することが最善の道であることになった。

 豊田社長が「会いたい」と言っていると聞いた孫社長は「えっ、まじかよ」と反応して最初は信じられなかったという。この提携のタイミングを「流れは自然にそういう方向にあった。人工知能(AI)に力を入れているソフトバンクとモビリティ(車)ではトップの両社が手を組めば、もっと進化した次世代のモビリティを実現できる。今の時代が両社を引き合わせた」と説明した。これまでの常識ではあり得なかった垣根を超えた異業種のトップ企業の提携は、モビリティサービスが中心を占めるであろう未来を見据えると、当然あり得るというのが孫社長の見立てだ。

社風は異なるがビジョンは共有

 「車には愛が求められるので『愛車』と呼ばれる。私はこの愛を大事にしている」と大企業のトップらしからぬ情緒的な発言をする豊田社長。

 一方のソフトバンクは特別の傑出した技術を持っているわけでもない。孫社長は兆円単位のファンドを世界各地の将来的に芽が出そうなビジネスに種まきをして、収益を計算する。『孫正義300年王国への野望』(杉本貴司著、日本経済新聞社)によると、「部下に対して『2000年から2300年までの300年間の売り上げ計画を作れ』と命じた」そうで、未来志向の稀代の経営者なのかもしれない。このやり方だけを見ても、トヨタとソフトバンクは社風が相当異なる感じがする。

 しかし、豊田社長は「両社のビジョンは同じで両社首脳4人の意見はかみ合った」と指摘した。つまり、次世代の移動サービス事業であるモビリティについての考え方では一致したということだ。しかも、トヨタは世界中で大量の自動車を提供できる。

 一方のソフトバンクは出資したライドシェア企業を足し合わせると世界のライドシェアの90%のシエアを持つことになり、膨大なデータが自動的に集まってくる。中でも中国のライドシェア市場トップの滴滴出行を傘下に入れているだけに膨大なデータを集積できる。世界中でモビリティのデータをこれだけの量を蓄積できる企業は欧米にもないと見られており、多種多様なデータが得られるソフトバンクはAIを進化させる上で大きな強みになる。トヨタもこの点に関しては、ソフトバンクには到底勝てないと見たに違いない。

 AIの性能の優劣は、消化したデータの量によって決まると言われている。大量のデータで訓練されたAIは、あらゆる事態に遭遇してきているため事故や故障が少なくなる。ほかのAIと違って洗練されており、こうしたAIを自動運転車などモビリティに組み込めば、世界的にも負けない競争力を発揮することができる。となると、トヨタとソフトバンク連合は進化することはあっても離れられないパートナーとなっていくかもしれない。

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