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自民党と内閣の改造人事に示されている安倍首相の二つの狙い

 10月2日に自民党役員と内閣の改造が行われ、第4次安倍改造内閣が発足しました。内閣の「土台」とされている菅官房長官や麻生太郎副総理兼財務相は留任し、その周りを安倍首相の側近や「お友達」の議員が固め、過去最多となった新入閣者は派閥均衡・滞貨一掃の古手がほとんどという顔ぶれです。

 その結果、公明党出身の石井国交相を除く19人の閣僚全員が改憲右翼団体と連携する「神道政治連盟国会議員懇談会」に所属し、「日本会議国会議員懇談会」にも14人が加盟しているなど極右政権の本質は変わらず、失言や暴言のリスクが高い「ガラクタ」ばかりをかき集めた形になってしまいました。早速、柴山昌彦文科相が教育勅語を評価するような発言をして批判を浴び、釈明に追われています。

 このような自民党と内閣の新しい布陣には、安倍首相の二つの狙いがはっきりと示されています。その一つは改憲発議の強行を狙った「改憲シフト」であり、もう一つは選挙対策を強化した「選挙シフト」です。

 第1の改憲発議強行の狙いは「改憲シフト」と評されるような人事に明瞭です。改憲の先頭に立つ司令塔を穏健派とされる細田博之氏から強引なやり方をためらわない腹心の下村博文氏に変え、自民党内で改憲案を承認させるために重鎮でもない加藤勝信前厚労相を総務会長に抜擢しました。

 これまで公明党とのパイプ役を果たしてきた高村正彦前副総裁も後ろに引っ込めました。必ずしも、公明党との了解を前提としないという姿勢を示したことになります。

 安倍首相は成算の少ない改憲路線へのこだわりを、依然として諦めていません。自民党だけでも改憲発議に向けて突っ走ることができるような態勢をとりあえず人事面で固めたというのが、今回の改造が示しているポイントです。

 安倍首相は総裁選で改憲を重要な争点の一つに掲げ、これまで臨時国会での条文案の「提出」に意欲を示してきました。しかし、最近になって、議論のたたき台として「説明」するだけでも構わないとトーンダウンしたと報じられています。

 10月3日に自民党の高村正彦前副総裁と会談した際、安倍首相は自衛隊の明記など4項目の党憲法改正案を臨時国会で与野党に説明したいと表明し、高村氏が「党の条文案を衆参両院の憲法審査会で説明するという意味でいいか」と真意を尋ねると、首相は「そうとらえてもらって結構だ」と答えました。「提出」から「説明」へのトーンダウンだと受け取られています。

 だからと言って、油断してはなりません。このような形で印象を操作することが、安倍首相一流の「隠す、誤魔化す、ウソをつく」作戦である可能性が高いからです。

 当面、「説明」だからと言って世論と野党を油断させ、与野党を巻き込んで憲法審査会を開かせて改憲発議を強行するチャンスをうかがうということが十分に考えられるからです。こんなことは常識的には考えられませんが、そのような常識の通用しないのが安倍首相です。

 そのような形で強行したら、野党や世論の大きな反発を買うことは目に見えています。統一地方選挙を控えている地方議員や参院選で立候補を予定している参院議員の予定候補者も動揺するでしょう。

 そこで意味を持ってくるのが第2の「選挙シフト」です。今回の改造で、安倍首相は来年の選挙に向けての体制を格段に強化したからです。

 選対委員長に今回の総裁選で安倍陣営の選対事務総長を務めた盟友の甘利明氏、総裁特別補佐兼筆頭副幹事長に安倍首相の秘蔵っ子と言われている稲田朋美氏などを要職に付け、幹事長代行には総裁特別補佐や官房副長官として常に側近くで仕えてきた側近中の側近である萩生田光一氏を再任するなど、安倍首相の盟友や側近を起用して万全の構えが取られています。党内の動揺を抑えて睨みを利かせ、首相の指導力を強化して選挙を勝ち抜こうという並々ならぬ決意が示された布陣です。

 安倍首相は、今回の改造によって大きな賭けに出たということでしょう。公文書改ざんやセクハラ問題、暴言などでとっくの昔に辞任して当然だった麻生副総理を再任し、政治とカネの問題を抱えている甘利氏や下村氏、岩屋氏などを起用し、女性大臣を1人しか起用しないとなれば、世論の反発や批判を受けることは十分に分かっていたはずです。

 しかし、「改憲シフト」や「選挙シフト」を敷き、80人とも言われている入閣待望組の不満を抑え、再選に協力してもらった派閥のご機嫌を取るためには、そうせざるを得なかったのです。安倍首相としては、「苦渋の選択」だったということになるでしょう。

 それもこれも、改憲を自分の手でやり遂げたいという野望の実現を願ってのことだったと思われます。今回の改造人事には、隙あらば参院選の前に改憲発議を強行したい、それで混乱しても参院選で勝てるようにしておきたい、発議に失敗しても参院選後に可能性を残すために何としても勝ち抜きたいという首相の執念がにじみ出ています。

 このような執念をしっかりと見抜き、油断することなく対応しなければなりません。トーンダウンしたとされている首相の「死んだふり」に騙されてはいけません。

 さし当り、「説明」のための憲法審査会の開催には断固として反対する必要があります。同時に、捏造したとされる「TAG」問題をはじめ日米貿易交渉などについての追及を強め、安倍政権の「死に体(レームダック)」化を促進することによって改憲発議の余裕を与えないようにすることが、臨時国会において野党のめざすところとなるでしょう。

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