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米中貿易戦争は軍事衝突に発展するか? 被害を受けるのは日本という悲しい現実=高島康司

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米中はお互いに関税の引き上げによる貿易戦争が激化し、今後は軍事衝突にも発展しかねない深刻さをみせてきた。この貿易戦争はどのように収束するのだろうか。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2018年10月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

米中戦争を避けるために日米交渉は厳しくなる?トランプの戦略は

制裁合戦が軍事衝突に発展する?

9月24日、トランプ政権は中国からの2千億ドル(約22兆円)相当の輸入品に10%の関税を上乗せする制裁措置を発動した。中国が交渉に応じない場合、来年早々にも関税は25%まで引き上げられる

一方、中国も年間600億ドル(約6兆7千億円)相当のアメリカ製品に追加関税を米国と同時に実施に踏み切った。

このような状況だが、米中の対立は貿易戦争の域を越えて、軍事的な衝突さえ引き起こしかねない方向に動いている。

ことの深刻さを理解するために、まずはこれまでの展開を時系列で見てみよう。

<9月20日:中国軍に向けた制裁>

トランプ政権は、中国共産党中央軍事委員会の装備発展部がアメリカの制裁を破ってロシア製兵器を購入したとして同部および李尚福部長を制裁対象に指定した。李部長がロシア製の戦闘機と地対空ミサイル「S400」の購入に関与したとトランプ政権は主張している。

<9月24日:台湾への武器供与>

国務省は、台湾に3億3000万ドル(約370億円)相当の戦闘機部品などを売却する案を承認した。F16戦闘機やC130輸送機を含む戦闘機の部品が売却される。

<9月24日:第3弾の高関税>

第3弾の関税発動で、アメリカの対中関税対象は合わせて2500億ドル(約28兆2000億円)に達した。中国からの年間輸入総額の約半分に当たる。中国もアメリカからの輸入品600億ドル(約6兆7600億円)相当に追加関税を課した。

<9月25日:中国、米海軍艦艇の香港入港拒否>

香港の米総領事館は、米海軍が来月予定していた強襲揚陸艦「ワスプ」の香港寄港の申請を中国政府が拒否したと明らかにした。アメリカがロシア製兵器購入を理由に、中国共産党中央軍事委員会装備発展部などを制裁指定したことに中国は猛反発しており、対抗措置の一環とみられる。

<9月26日:トランプ政権の制裁強化>

トランプ米大統領は、11月の米中間選挙に介入しようと画策していると中国を非難。また、ボルトン大統領補佐官が中心となって、貿易摩擦の枠を超え、サイバー活動や台湾、南シナ海の領有権問題なども含めて、中国に対して強い姿勢を取るようトランプ大統領を説得している。これにより、今後数週間でトランプ政権からのさらなる強硬発言や、新たな政策措置が出てくる可能性がある。

<9月30日:中国軍駆逐艦の危険な接近>

「航行の自由作戦」で、米イージス駆逐艦の「ディケーター」が中国が実効支配する南シナ海・南沙諸島付近を航行した際、中国軍駆逐艦が米駆逐艦の船首から45ヤード(約41メートル)以内の距離まで異常接近した。米太平洋艦隊は「危険であり、未熟な操縦」と批判している。

中国軍駆逐艦は「ディケーター」に対し、そのエリアを離れるように警告を発しながら、攻撃的な操縦を繰り返した。「ディケーター」が衝突回避の操縦をしたとき、船首から中国軍駆逐艦の距離は45ヤード以内だったという。

<10月1日:米中外交・安全保障対話の中止>

米中両政府が今月中旬に予定していたマティス国防長官の北京訪問による「外交・安全保障対話」を、中国は中止するとアメリカ側に伝えた。トランプ政権がロシア製兵器を購入した中国共産党の軍備調達部門を9月20日に制裁対象に指定したことが引き金になった可能性が高い。

このような動きに対し、マティス国防長官は「国同士の関係は緊張することもあるが、ニューヨークでの先週の協議などに基づくと、関係が悪化していると思わない」とし、関係を維持していく考えを示した。

上記のように米中の対立を時系列的に見ると、明らかに貿易戦争の水準を越え、全面的な対立に向けて動いていることが分かる。

EU、メキシコ、カナダのように、トランプ政権が望む妥協を引き出すために高関税の適用で脅すという手は、中国には通用しないと思ったほうがよい。中国は一層態度を硬化させ、アメリカとの全面的な対立も辞さない覚悟だ。

2014年の米ロの対立に似た状況

この状況を見ると、ウクライナ内戦を機に、ロシアがクリミアを併合した際に発生した厳しい米ロの対立と類似しているのが分かる。

このとき、クリミアの併合に反発したアメリカとNATO軍は、黒海のロシア国境付近まで海軍を派遣し、近隣の海域に展開していたロシアの黒海艦隊と一触即発の状況になった。

このときは、ゴルバチョフ元書記長の第3次世界大戦の可能性を示唆する警告や、その他の著名な専門家が本格的な米ロの軍事衝突の可能性について言及していた。ネットでは、「第3次世界大戦間近」とのうわさが飛び交っていた。

こうした危険な緊張状態は、ロシアがシリア内戦に介入した2015年9月から一層強まり、アメリカ軍の高官からも戦争を辞さないとの発言も出てくるようになっていた。ロシアに対する好戦的な態度で知られ、ロシアとの軍事衝突も辞さないとする発言をしていたヒラリー・クリントンがもし大統領になっていたら、本当に米ロの戦争は起こっていたのかもしれない。

ところが、ロシアとの和解を主張するトランプが大統領になることで、少なくとも軍事衝突に発展する可能性は回避され、いまに至っている。

いまのところ、米中の対立は、2014年から15年までの米ロの対立ほど先鋭化していないものの、アメリカも中国も妥協する意思がまったくない以上、4年前から3年前の米ロと同水準の対立へと発展してもおかしくない状況だ。

偶発的な軍事衝突はあっても、戦争にならない

では、米中が激しく対立し、両国間の対話が途絶えたままの状態で、たとえば南沙諸島などで偶発的な軍事衝突が起こると、それがきっかけとなり、米中戦争に発展するというようなことが起こる可能性はあるのだろうか?

いまネットでは、そのような可能性を示唆する記事が数多く出ている。しかし、結論からいうと、そのような可能性はまずないと見たほうがよいだろう。

筆者の予想だが、11月6日に実施される中間選挙でトランプの共和党が勝利するタイミングで、トランプ政権は中国に対して妥協するのではないかと思われる。

米中対立は選挙のための演出ではない

それは、主要メディアでよく言われるように、トランプ政権は、中間選挙で勝利するために米中の対立を演出しているからではない。もちろんそうであれば、中間選挙後、米中の対立を演出する必要がなくなるので、トランプ政権は妥協することだろう。

しかし、そうした短期的な視点の理由ではない。「トランプ・ドクトリン」のようなものは発表されていないのでトランプの外交政策の理念は見えない。

だが、当メルマガの記事で何度も書いてきたように、トランプ政権には長期戦略が明白にあるのだ。

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