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被災地支援、歌の感覚… 泉谷しげるが語る「さだまさし論」

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◆芸術というのは個人的作業による「発明品」

 じゃあ何を歌っているのか。それはもしかしたら、過去のことかもしれない。未来のことかもしれない。今の自分の後の後、先の先……そういうものを描くのが創作だよね。それは小説でも歌でも絵でも同じ。

 いい作品っていうのは、少なくとも自分の先を行っている。後から作家は、のこのことついていくわけ、その作品に。「作品が一人歩きする」っていうのはそういうことで、作家がもし、自分の経験しか描けないのだとしたら、作品は先には行けない。

 そいつがダメでも作品が残るってこと、あるよな。あれは作品が本人のはるか遠くへ行っちゃったんだよ。歌の場合は、ファンが育てて成長させるってこともある。じゃあ、一人歩きする作品の大本は何かって言ったら、イマジネーション。正直に言えば、妄想(笑)。こっちは妄想膨らませながら、せっせと詞や詩を書いてるんだから。発明という言い方もできるだろうね。

 オレは芸術というのは「発明品」だと思ってるんだけど、ようは妄想でひとつの人生や世界を創り出すわけだから。だから一個一個の歌を、もっと大事にしないと、と思う。だって自分の作った曲に、自分が影響されて、今の自分になっている、というのもあるわけだから。

 そして発明というのは、常に個人的作業なんだよな。集団じゃない。さだの場合は、その「個人」が徹底している。たとえば『防人の詩』で、右翼だなんだって叩かれたけど、あれはそういう歌じゃない。

 たいそうな歌詞だから誤解されるんだろうけど、実に個人的なため息だな。「個人的なため息」だから、皆でシングアウトできない。皆で合唱したら、右翼的なナショナリズムに繋がっていくけど、あんなため息、歌えないだろ?

 あの歌を聴いた後で残るのは、さだ個人の感覚なんだよね。「個人の感覚」というのは、その人しか生み出せない。だから発明。きっとさ、『防人の詩』だって断れなくて作ったんだと思うぜ。でも映画のテーマ曲を歌ってるようで、映画にすり寄っていない。

 オレはリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』という映画が好きで、続編の『ブレードランナー2049』も観に行った。でもさ、これがスッキリしないのよ(笑)。さだまさしの映画を観てるのと同じくらいスッキリしない(笑)。

 ようはこの映画も、リドリー・スコットの「個人的なため息」なんだな。SF映画として観るからスッキリしないんであって、「個人的なため息」と思えば、わかる。ただ、こういう「個人的なため息」に100億円以上かけてンだろ? 日本じゃ企画が通らないだろうね。

 何が言いたいかって、人を揺さぶるものは、それが何であれ、「個人的なため息」なんだよ。さだはそれをずっとやってンだよ。『案山子』もそうだよ。ドキュメンタリーじゃないだろ? あんなヤツが近くにいてさ、「寂しかないか」「お金はあるか」ってしつこく聞かれたら、「うっせーな、コノヤロウ」ってなるよ(笑)。オレのセオリーにはない。でもだからこそ、「さだはすげぇな」と思う。

 時代にすり寄った作品には何にも感じないが、「個人的なため息」っていうのは、個人である分、思いが強い。だから、「金頼む、なんてオレは親に電話しねぇぞ」って思うけれど、親になかなか連絡しないというのは、どこかで思い当たる。「ああ、オレ、親に冷たくしてるかな」とか思ってしまうんだろうね。痛いところを突いている。これが「作家」なんだろうね。

※さだまさしとゆかいな仲間たち・著/『うらさだ』より

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