記事

被災地支援、歌の感覚… 泉谷しげるが語る「さだまさし論」

1/2
【泉谷しげるは「さだまさし」をどう見ているのか】

 コンサートだけでなく、被災地支援でも全国を駆け回るさだまさし。2015年には災害復興支援などを目的に「風に立つライオン基金」を立ち上げた。同じくチャリティー活動や被災地支援に熱心なミュージシャンが泉谷しげるだ。対照的なキャラクターながらも、ともに被災地支援活動を行った経験もある2人。さだの活動や作品について、泉谷はどう見ているのか。さだの素顔に迫る短期集中連載、今回は泉谷が毒舌を交えながら、「さだまさし論」を語る。

 * * *
 さだとは、デビューした当時からイベントとかでは一緒になっていたと思うけど、ちゃんと組んだのは、長崎・普賢岳噴火のチャリティコンサート。「泉谷しげるとスーパーバンド」というのを作ったんだけど、そこに参加してくれた。

 アイツもそうだろうけどよ、被災地支援ってのは、オレらが勝手にやってるだけなんだよな。勝手に(被災地に)行って、勝手に(支援物資を)渡して、勝手にいなくなる。それだけ。誰に頼まれたわけでもない。自分勝手に、オレがやりたいからやってる。彼ら(被災者)にとっては迷惑千万かもしれない。でもさ、誰かがひどい目に遭ってるんだとしたら、心配しちゃうのはしょうがないよな。

 2011年に武道館で「セイ!ヤング・オールナイトニッポン コンサート」ってのがあったんだけど、そこでさだと一緒になってね。打ち上げの場で、さだに向かって、「宮崎で口蹄疫・復興支援ライブやってンだけど、時間あったら来ない?」って軽い気持ちで誘ったら、その翌年の10月、本当に来てくれた。

 それはいいんだけど、迎える側の宮崎の主催者のひとりが、「せっかくなんで、さだまさしさんと一緒に何かやってもらえませんか」とぬかしやがる。なんで自分のイベントで、そんな面倒なことやらなくちゃいけないんだよ。「やるか、コラっ!」って内心思ったんだけど、断れない。だから、仕方なく買いましたよ、さだのベストアルバム。

 で、何か一緒にやらなくちゃいけないから、どれにしようかと思って聴いてるんだけど、いちいち難しい(笑)。具体的に言うと、ロックと譜割りが違う。オレらは2ビートか4ビート。正拍が基本なの。

 ところがアイツの歌は正拍じゃない。一音にいっぱい言葉を乗せているし、1番と2番の歌詞でも乗せ方が違う。途中でテンポが変わることも多い。完コピなんてできっこない。それで、「まあこれなら歌えるな」という理由で、『案山子』を選びました。

 一所懸命覚えてさ、必死に練習してさ、気づいたら朝の4時になっててさ、リハーサルで歌ったら、あのヤロウ、「『友達出来たかい』じゃない。『か』だ」と。うるせぇな、細かいこと言うな。いいじゃねぇか、一文字くらい(笑)。

 そしたら本番でも「かい」ってやってしまった。「だから『かい』じゃない。『か』」だと。うるせぇな、コイツ(笑)。さだがNHKでやってる生の番組があるだろ? あそこで『案山子』のリベンジをしたよ。完璧に歌って、さだのファンを唸らせてやった。どうだ、コノヤロウ。

 さだのもうひとつ面白いところは、大都市から離れた町に行きたがるところだよな。スケジュールを見せてもらって驚いたんだけど、もうビッシリ。「お前、そんな離れ小島まで行くのか」って言ったら、アイツ、こんなこと言ったね。「いや、だって大都会でやったって当たり前の評価しか得られない。田舎では歴史的な大歓迎をされる」

「小泉進次郎か、お前は」ってツッコんでやったけどな(笑)。誰も行きそうもないところを進んで訪れるという精神は、震災の支援活動と一緒なわけ。あれだって、人が行きたがらないところに行く、やりたがらないことをやる、っていうのがいちばんありがたいわけだから。

 最初は「暗いヤロウだ」と思っていたけど、近くにいて印象が変わった。よく考えてみたら、暗い歌が歌えるヤツは明るいんだな(笑)。暗い歌を歌ってるヤツが本当に暗かったら、そりゃ聴くほうも嫌だよな。体力も関係するな。暗く重い歌は、体力がないと、歌ってる本人が参ってしまう。中島みゆきだってそうだろ? アイツだって歌と性格が全然違う。

 なぜ歌のイメージを歌ってるヤツに覆い被せちゃうかと言うと、歌をドキュメンタリーと勘違いしてるんだな。その人の経験を歌にしていると思い込んでいる。歌はドキュメンタリーじゃない。むしろ、小説に近い。

 たとえば、その土地に行かなければその土地のことを書けないというなら、それは紀行作家かルポライターだよね。作家だったら、行かずして書けないといけない。作家は、経験主義じゃないってことなんだな。じゃなきゃ、月に行かなけりゃ、月旅行の物語は書けないのかってことになる。

あわせて読みたい

「音楽業界」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    GoTo見直し 協力体制みえず幻滅

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    新井浩文が語った「性的武勇伝」

    文春オンライン

  3. 3

    赤旗は佐藤優氏批判する資格なし

    鈴木宗男

  4. 4

    意見広告は嘘でも許容されるのか

    島田範正

  5. 5

    バイキングで疑惑報道の社長怒り

    SmartFLASH

  6. 6

    本厚木が1位 住みたい街は本当か

    中川寛子

  7. 7

    よしのり氏「皇女」案に危機感

    小林よしのり

  8. 8

    よしのり氏 コロナの正体見たり

    小林よしのり

  9. 9

    なぜリベラリズムは生き残るのか

    SYNODOS

  10. 10

    コロナ禍で缶コーヒー離れが加速

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。