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「いじめは科学で解決できる」岩隈久志投手が発起人のいじめ撲滅プロジェクト"BE A HERO"

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左から木村匡宏氏、和久田学氏、新保友映氏

子どもたちのいじめが社会問題になって久しく、自殺や不登校のニュースを目にすることも多い。こうした問題に詳しい公益社団法人 子どもの発達科学研究所、主席研究員の和久田学氏は「いじめは科学で解決できる」と強調する。いじめの問題にどう取り組むべきなのか、和久田氏をはじめ、プロ野球・岩隈久志選手が発起人となり立ち上げた「BE A HERO」プロジェクトのメンバーに話を聞いた。【取材:田野幸伸 構成:島村優 撮影:弘田充】

—「BE A HERO」プロジェクトとはどういうものなのでしょうか。

木村匡宏氏(以下、木村):「BE A HERO」プロジェクトはプロ野球選手の岩隈久志さんを発起人に、公益社団法人 子どもの発達科学研究所、IWA JAPAN、B-creative agencyが中心となって立ち上げました。

「科学でいじめのない世界を創る」というコンセプトのもと、最新の科学的知見を活かしたいじめ解決の方法論を、小中学校など教育の現場や部活動などで教えるという活動を行っています。

岩隈久志:Getty Images

—岩隈選手が発起人なんですね。

和久田学氏(以下、和久田):こうしたプロジェクトでは、岩隈さんみたいに発言力が強い人がモデルとなってくれると心強いんです。見本となるモデルはすごく大事で、今まで野球界ですと「巨人の星」の星一徹みたいな、いわゆる力で指導するモデルは多くいたのですが、もうそういう時代ではないですよね。

もっとスマートな人がモデルになって、スマートな振る舞い方があってもいいよね、という思いがあります。岩隈さんご自身にもこのプログラムをよく理解していただいて、オフシーズンには、随分と一緒に活動させて頂いています。

いじめは経験則ではなく科学で解決せよ

BLOGOS編集部

—いじめの解決に科学を使うというアプローチがとても新鮮に聞こえました。

和久田:いじめの問題もそうですけど、教育の中には、叱った方が良いのか、褒めた方が良いのか悩む場面が多くありますよね。でも、これらの判断は現状では「経験則」を基に行われていることが多いです。でも、言ってみれば、人類はもう長い間子育てをしているわけですから、そこに科学があったっていいはずなんです。実際、人の行動をターゲットにした研究はずいぶん進んでいるんですよ。

—経験則ではなく科学だと。

和久田:そうです。科学です。経験則ではありません。例えば、社会を構成する多くの人は、「いじめなんて、どこにでもあるし、そんなことに負けるようではダメだ」「いじめられたけど、耐えてきたし、そのおかげで強くなれた」などと自分のことを振り返って、いわば経験則を語るんですが、これは科学的に正しいとは言えません。「生存者バイアス」といって、うまく切り抜けた人の意見が大きくクローズアップされているだけだと言えます。

いじめの被害で悪い影響を受けた人は、その存在そのものが見えにくくなります。そういう人は、いじめ被害がトラウマになったり、それが原因で抑うつ状態に陥ったりして、今も社会の片隅で苦しんでいる可能性が高い。

一方、今、社会で活躍している人は少しタフだったり、何かいじめられてもそれを跳ねのけることができる要因を持っていたりしている人が多い。つまりいじめられても、その影響を最小限に抑えられる人が生き残ってきたということですので、そうやって切り抜けられた人の経験則では、今苦しんでいる子どもを救えないんですよ。だから、いじめの場合、経験則を使わないで、科学的に分かっている事実を使いましょう、というのが僕らの考えなんです。

—科学的な知見やエビデンスを使って、いじめを解決する。

和久田:そうです。ですから、私が言ったことに対して「いや、先生それは違うんですよ」と否定されても、「これは僕の意見じゃなく科学なんですよ」と言って、さらにデータを見せることだってできる。説得力が違います。

エビデンスというところでは、こんな研究があります。いじめの被害者が精神的になんらかの傷を負うリスクが高くなるのは当然なんですけど、一方でいじめの加害者が犯罪者になったり反社会的人格を持ったりするリスクが高くなるというものです。

いじめを撲滅しないといけない理由は、いじめそのものが子どもを傷つけるのを防ぐ必要があるから、というのは当然ですが、さらに言うなら、いじめは、その加害者、被害者に対して5年後10年後にまで悪い影響を与える。私たちが思っているよりいじめが人生に与える影響は大きいわけです。

学校で起こるいじめの研究はほぼ済んでいる

—和久田先生はもともと教育が専門だったのですか?

和久田:はい、私は学校現場で教員をしていました。実際にどういう仕事をしていたのかというと、特別支援教育という分野です。例えば、2000年くらいからキレる子どもが社会問題になったことがありましたよね? その頃、私はそうしたいわゆる特別な支援が必要な子どもの対応をする専門家として、いろんな学校に呼ばれていたんですが、そこで悩むことが多かったんです。

というのは、あるキレる子どもに対して、ある先生は「彼らは傷ついてるから優しくした方が良い」と言うのに、別の先生は「大人の権威を見せてガツンとやればいいんだ」と言う。中には「医者に連れて行って薬を飲ませた方がいい」とまで言う人もいる。つまり同じ子どもを見ても、人によって言うことが違って解決策がわからなかったんです。それでもっと学ばないといけないと思って、大学院に入ったんです。

ー進んだ大学院でいじめに関する分野を学ばれた。

和久田:大学院でいじめを専攻したわけではありません。もともとは発達障害児への早期支援とか、子どもの暴力などの問題行動などを扱っていたんですが、その中でいじめの問題についても研究を始めるようになりました。それで実際に調べてみると、いじめについては、欧米諸国を中心にすでに多くの研究があるんですよ。もともとは日本がこの分野をリードしていたんですけど、近年はそれが逆転して欧米が強くなった印象があります。

世界の研究をよく検討してみると、実は学校で起こるいじめの研究は、あらかた終わっているように思います。欧米では、学校のいじめ対策のプログラムが多数あって、そうしたことのコンセンサスが得られているんですけど、それは日本にほとんど伝わってない感じです。じゃあそれを伝える仕事をしようと思って、今に至っているわけです。

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