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消費税で忘れられがちな「直間比率」の論点

 アメリカの大統領選挙で減税、特に法人税の減税を巡る議論が一つの焦点になっているようです。

 その一方、我が国においては消費税の増税議論ばかりで、他の論点がおざなりになってしまっている印象を受けます。このところ消費税の議論が盛んにされていますが、実は法人税については復興の名目で昨年決定された減税は事実上先送りされてしまいました。また、所得税についても増税が決められようとしています。

 以前このブログでも指摘させていただきましたが、法人税所得税増税の理由とされている復興に必要とされる資金は当面十数兆円。一方、例えば平成19年度と21年度を比較すると、わずか2年の違いにも関わらず、法人税・所得税の税収は10兆円以上落ち込んでしまっています。このことは、景気状況を数年前のレベルに回復させることができれば、それだけで、復興のための費用は十分にまかなうことができる、そして法人税や所得税の増税は必要ないということに他なりません。にもかかわらず復興増税はうやむやのうちに決まってしまいました。

 このことでもわかるように、消費税にあまりにも焦点が当たりすぎていて、本当に必要な議論が税制全体についてされていないのが今の実態です。

 現在の社会は、納税者たる企業や個人が納税先の国を選ぶ時代です。そんな中、納税者の海外への流出を避けるために、さらにはそもそも厳しい国際競争の中で日本企業が勝ち残るための支援を実施するためには、可能な限り所得税や法人税といった直接税についての減税を進めることが必要です。経済成長しなければ増税しても増収しないといった事態にもなりかねません。

 また、そもそも、少子化・高齢化にともなって、労働人口の全人口に占める比率が減少してきている今の社会構造を考えれば、いわゆる直間比率をどうするかという議論も必要です。いつまでも働いている人だけに(法人税・所得税というかたちで)過重な負担を強いていていいのか。必要な負担をどの年齢層(あるいは「働いている人」とその他と)で配分するのが最も「公平」なのかという論点は、所得層別にどのように負担を配分するのが「公平」なのかという議論と同じくらい重要なものです。

 本来であれば消費税の問題は、この社会構造の変化に伴う直間比率の組み替えの一環で議論されねばならない問題です。

 「消費税を増税すべきかどうか」という問題だけ取り出せば、もちろん誰でも税率は低い方がいいに決まっている以上、「必要なサービスのファイナンスをしつつ、金利等も勘案した将来の負担を最小限に抑えるためにはいつどのようなかたちで消費税増税したらいいのか」という点を巡る、技術的な議論となります。増税自体は他に選択肢がない「現実」であって、その中で可能な限り増税幅を抑えるという技術論です。決して価値観の「選択」ではありません。一方、直間比率の問題は、負担の割合をどこにどのくらい持っていくのが「公正」で「公平」なのかという価値観を巡る「選択」の問題でもあります。本来これこそ政治が議論し結論を出さねばならない問題です。

 今の増税論議ではあまりにこの観点が抜け落ちてしまっている、今後の日本のあり方を考えるとき、そのことが非常に危惧されます。

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