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性暴力被害者や女性の視点から見た世の中とは?沈黙を破り、過去の自分と決別する

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性暴力や女性の視点で世の中を見た本を取り寄せてみた

性的ハラスメントや性犯罪に抗議する運動「MeToo」は昨秋、米国から端を発し、世界中に広がっている。

筆者自身、性にかかわる問題について頭の中を整理してみたくなった。現状はどのようになっていて、私たちにできること何なのか。「性犯罪の実態」、「児童への性的虐待」、「男女の関係を考えるために役立つ本」のトピックで数冊を選び、ページをめくってみた。

「同情を買いたくないことだけは、先に伝えておきたい」

最初に手にしたのは、小林美佳さんが書いた『性犯罪被害にあうということ』(朝日文庫、初出2008年)である。

性犯罪被害にあうということ

性犯罪被害にあうということ

小林さんは24歳の時に、知らない男性二人にレイプされた経験を持つ。

冒頭には、読者へのメッセージが入っている。

事件の翌日から仕事に出かけた小林さん。「レイプされたという事実」が「『私』という人間を構成する一部になってしまった」。レイプは「消す必要も、忘れる必要もない。乗り越える必要もない」ことなのだという。

メッセージの最後には、「同情を買いたくないことだけは、先に伝えておきたい」と添えられていた。

筆者はここで、頬をぴしゃりと叩かれた思いがした。「レイプされた女性か、かわいそうに」という気持ちがどこかにあったからだ。

では、読者はどうしたらいいのだろう?それは、「理解」だ。大切なのは制度や警察、支援団体、お金、復讐ではなく「近くにいる人の支えや理解なのだ」という。

少々気を引き締めながら、小林さんの手記を追った。

レイプ事件後、支えてくれなかった母

具体的な事件の一部始終が、本書の最初の方につづられている。レイプ事件後、一度は別れたボーイフレンド「シンちゃん」に、小林さんは連絡を取る。一緒に警察に行ってくれたのはその彼だった。その後もシンちゃんに助けられながら毎日を過ごす。

しかし、支援してくれるとばかり思っていた親、特に母からはそれが得られなかった。母自身が事件に大きな衝撃を受けていたからだ。

小林さんは当時の日記に「死にたい」「殺されちゃえばよかった」「死んだらみんながもっと真剣に考えてくれたかな」と書いたという。ひと月で体重が13キロ、落ちた。何かのきかっけで、「突然、発作のように事件の諦め感情感・恐怖感・絶望感に襲われ、思考が停止してしまう」日々が続いた。

苦しみながらも、日々仕事に出かけることが、支えの1つとなった。

 

そのうち、新しいボーイフレンドもできたが、性行為が苦痛になり、吐くようになってしまう。

周囲からの理解がなかなか得られず苦しんでいた時、小林さんは性犯罪の被害者の掲示板に出会う。「いろんな思いをしている被害者がいる。そんなことに気づいた」。

小林さんはボーイフレンドと同居後、結婚。カウンセリングにも通うようになった。

被害体験を公に語ったことが転機

事件から4年が過ぎ、小林さんはほかの性犯罪被害者のことを知りたくなり、法律相談をする人を対応する仕事に転職した。順風満帆のようだったが、性行為の際に吐いてしまうこともあって、離婚してしまう。

しかし、あるシンポジウムで自分の被害体験を果た話したことが転機となり、小林さんの人生が変わり始める。メディアで紹介されたことで、家族に彼女の苦しみが伝わった。母も苦しんでいたことを知り、二人はようやく心を通じ合わせる。

レイプ発生から本の執筆までの過程を淡々と、かつ詳細に語った本書『性犯罪被害にあうということ』は、レイプがどのような影響を人に及ぼすのか、友人や家族はどのように反応するのか、体験を「自分の一部」として生きるということはどういうことなのかをしっかりと伝えてくれる。

筆者は、著者と母の和解の場面で思わず落涙してしまった。「この人には、わかってほしい」という相手がいるものである。それは親友かもしれないし、夫あるいは妻かもしれない。でも、この時は自分を生んでくれた母だった。どれほど互いに意見が衝突しても、憎まれ口を叩きあっても、「わかってもらえた」だけで心の中の氷が解けてしまう。

著者は続編として『性犯罪被害とたたかうということ』(同じく朝日文庫)も出している。最初の本を読んだ後に、読んでみていただきたい。

性犯罪被害とたたかうということ

性犯罪被害とたたかうということ

児童の性被害  加害者は地域や職場の評価が高い人物であることも

英国にいると、児童に対する性被害、しかも何十年も前の事件が明るみに出た報道を目にすることが多い。

性的虐待を行ったのは教会の牧師だったり、寄宿生学校の教師だったり、サッカークラブのコーチだったりする。親やその子どもたちの信頼感を悪用しての行為である。

翻って、日本ではどうなのか?

フリーライター、吉田タカコさんが書いた『子供と性被害』(集英社新書、初出2001年)によると、子どもに対する性的虐待は「そんなことが頻繁に起きているはずがない」、あるとしても特殊な例のみという思い込みが強いため、問題視されることがほとんどなかったという。

子どもと性被害

子どもと性被害

実際には、虐待は様々な場所で様々な人によって発生しており、「親、親戚、兄弟姉妹、近隣者、親の友人、学校の教師…見知らぬ人」などあらゆる人が加害者になっており、「表向きには普通の社会生活を送り、さらには地域や職場などの評価が高い人物」であったりする。

第1章では、具体的な被害例を挙げている。例えば、執筆当時25歳の舞さんは、小学低学年のころから叔父に性行為を含む虐待を受けてきたが、後に叔父自身が性的虐待の犠牲者だったことがわかる。

22歳の胡蝶さんの場合は、4歳から13歳まで、実父から性的虐待を受けた。中学生の時に、勇気を出して保健室の先生に事情を話した。答えは「お父さんはあなたがかわいかったからしたんじゃないの?」

先生の心無い言葉、そして父親に対してさえも怒りの感情は出てこなかったという。怒りよりも諦めることで生き延びてきたからだ。

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