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「多数派のリスナーを集める事業モデル」の限界を越える!?パーソナリティが月会費を「払い」、つながるネットラジオ

聴く習慣のない人にとってはやや縁遠く感じる「ラジオ」だが、調査によると首都圏・関西圏で約55%、中京圏で61%(*ビデオリサーチ2018年6・8月調査より)の人がラジオを聴いているという。

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「聴かないから、知らない」だから「聴かない」

残り約4割の「ラジオは聴かない」という人は、なぜ聴かないのか。総務省による非聴取理由の調査 によると(「聴く習慣がない」ゆえに)「どんな番組が放送されているのかわからない」という理由がトップに来てしまう。その人たちにラジオを聴いてもらうのは至難の業だ。

運転などの移動中、仕事中、家事・育児中などでも利用できるラジオというメディアは、世界一睡眠時間が短い多忙な人種と言われる日本人であっても、本来的には親和性が高いはず。

もし、しばらく強制的に視聴する機会さえあれば、どんな番組があるのかもつかむことができ、そのうち聴くようになるのだろうか。

以前NHKが実施した<しばらく強制的に聴く視聴テスト>の結果、調査後も「聴きたい番組を見つけて聴くようになる」人もいれば、「通勤時や残業時などの聴けるタイミングに合わせて聴くようになった」人もいるという。

しかし残りは聴くようにならなかった、という人たちで、その中には「面白い番組に出会えず、聴くのをやめた」という理由の人もいる。

イギリスは9割の人がラジオを聴く。そのわけは「多チャンネル」「多メディア」

日本のラジオ聴取率は国際的に見ると低いほうだ。少し前のものになるが総務省のラジオ聴取に関する資料によると、1週間に1回以上のラジオの聴取習慣を持つ人(聴取者)は、日本が5割強なのに対して英米では全体の約9割になるという。

日本でラジオが出現して約90年、日本を含め様々な国でラジオがオールドメディアとして縮小傾向にあるなかで、イギリスではなぜこんなに人気があるのだろうか。その理由の一つに、デジタル化を活かした「多チャンネル」「多メディア」戦略があるという。(NHKメディア研究部資料より) 様々な番組がある分、それだけユーザーは自分好みのチャンネルを見つけやすいということのようだ。

日本でも既存のラジオに代わる、個人でも参加できる音声メディアのプラットフォームが成長してきているが、なるべく多くの人を集客し「広告モデル」で事業を成り立たせようとすると、どうしても「多数派」のニーズに合った番組構成になってしまいがちだ。

「金儲け」「モテ」「美容」「性」「ビジネス」「語学」などの「多数派に向けられたコンテンツ」を毎日配信できる番組がランキング上位になり、そういった番組にスポンサーが広告を出していく。番組提供側にとっては弱肉強食の世界であり、それに疲れたり飽きたりして配信をしなくなっていく番組も多い。

また、その淘汰の結果、リスナー側も多数派の興味関心を持つ人以外には「自分が面白いと思える番組に出会えない」ことになり、発信者と受信者は交わらないままとなってしまう。

「人を応援するラジオ」がコンセプトのネットラジオ「ゆめのたね放送局」。
全国7ヵ所にスタジオを構え、561人のパーソナリティが毎日、ネットラジオを配信

2018年10月1日発売の『ビッグイシュー日本版』344号の特集、「誰もがパーソナリティ」で取り上げているネットラジオ「ゆめのたね放送局」は、「多数派ではない」人たちも含めてがっちりとファンを掴んでいる。

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2015年6月、大阪の門真市で生まれたそのネットラジオは「人を応援するラジオ」がコンセプト。23歳から73歳という幅広い年齢のパーソナリティの561人のそのほとんどはプロではなく一般の人たちだ。

番組を持ちたい人を募り、「ご縁・応援・貢献」をテーマにした「パーソナリティ養成講座」を受けてもらう(※)。そして月会費1万2000円を払うと、週1回30分、月最大4回の番組を持つことができる。そしてその月会費が、スポンサーを取らないこの放送局の運営資金となっているのだ。運営資金は、全国7ケ所あるスタジオの家賃や経費、そこで働くスタッフの人件費となる。(※東京は希望者が多く、現在募集停止中)

現在は「関西チャンネル」「東日本チャンネル」「中四国・沖縄チャンネル」の3チャンネル体制。その番組表を見ると、健康や美容情報を専門にしたものもあれば、障害者やLGBT当事者などマイノリティの声を発信するものも多い。手づくり感あるWebサイトだが、リスナーのアクセスは月20万件。

オンライン編集部がアクセスしたときには発達障害のある子どもとその母親が一緒に出演し「なぜ親の言うことを聞かずにいなくなってしまうのか」をテーマに話を展開していた。

母親のゆっくりと子に寄り添った問いかけに対し、子は自分の行動の裏でどう感じ、どう考えて行動しているかを説明したり、リスナーへのメッセージを伝えたりして、ふっと笑わされたり涙腺が刺激されたりしているうちに30分間があっという間に過ぎていった。

**

「広告モデル事業」で「選ばれた人」が提供する番組作りでは、つながれる人たちに限界がある。しかしこのような「市民ラジオ」形式であれば、多くの人を勇気づけ、パーソナリティとリスナーが「気持ち」でつながることができるのではないだろうか。

『ビッグイシュー日本版』344号では、「ゆめのたね放送局」の共同代表の佐藤大輔さんと岡田尚起さん、そして8人のパーソナリティにその想いや「ゆめのたね放送局」の「いま」についてじっくり語ってもらったのでぜひお手に取って読んでいただきたい。

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