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ラオス 中国のダム建設で環境破壊も

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セピアン・セナムノイ・ダムの完成予想図 出典 PNPCウェブサイトより

室橋裕和(ライター・編集者)

【まとめ】

・ラオス政府は、諸外国の支援によるダム建設を次々に進めるようになった。

・特に中国はメコン河と支流域で複数のダム建設計画を進めている。

・巨大ダムでメコンデルタに塩害や水不足の恐れ→世界的食料不足も。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=42235でお読みください。】

7月23日、ラオス南部アッタプーで建設中だったダムが崩壊する事故が発生した(参考動画) 。周辺の村々が濁流に飲み込まれ、これまでに39人が死亡、97人が行方不明となっている。また6000人以上が避難生活を余儀なくされており、下流域のカンボジアでも5000人あまりが家を失った。

建設を請け負っていたのはPNPC(Xe-Pian Xe-Namnoy Power Co., Ltd.、セピアン・セナムノイ電力)という3か国による合弁企業だ。ラオスの国営企業、タイのエネルギー大手であるラチャブリー電力、そして事業主体を担っていたのは韓国のSK建設韓国西部発電である。

インドシナ半島を貫く「母なる大河」ともいわれるメコン河の支流で建設が進んでいたセピアン・セナムノイ・ダムだったが、工事がおよそ90%ほどまで進んでいたところで決壊。50億立方メートルの水が土砂とともに流出したと見られている。そのとき、インドシナ半島には台風9号(ソンティン)が襲来、ベトナムで多量の雨を降らせ、首都ハノイでは各地で洪水が発生するなど大きな被害をもたらしていた。

日本と同様、毎年この時期には台風が多く、東からインドシナ半島に侵入してくる。そして半島の背骨のように南北に続くラオスの山岳部で停滞し、周辺は大雨となる。

ダムは7月20日に一部の損壊が発見され、住民の避難がはじまったものの、豪雨のために修復工事ができず決壊に至った。事故の原因については韓国企業の手抜き工事の可能性も指摘されており、今後の調査が待たれるところだ。

▲写真 セピアン・セナムノイ・ダムの完成予想図 出典:PNPCウェブサイトより

PNPCを形成する企業のひとつは、タイの電力会社である。これは、ダム完成後に水力発電で得られた電力をタイに輸出する計画になっていたためだ。想定発電量410MWのうち、実に90%をタイが買い取る契約だったという。

ラオスは資源に乏しい山岳国だ。日本の本州とほぼ同じ面積を持っているが、そのうちおよそ80%が山地となっている。タイとの国境線となっているメコン河の東部にわずかな平野があり、農業が営まれているほか、林業もさかんだ。近年は金や銅、ボーキサイトなどの鉱床が発見されているが、開発はまだ進んでいない。

▲写真 ベトナムのメコンデルタ。メコン河は恵みの象徴でもある ©室橋裕和

そんなラオスで好調な産業が「売電」なのである。メコン河やその支流などを利用した水力発電ダムを次々に建設、電力を周辺諸国(おもにタイ)に輸出している。その発電量は6390.9MW(2016年)に達しており、「東南アジアのバッテリー」ともいわれている。

2016年には中国によって、北部ルアンパバン県にナムカン3ダムが建設されるなど、新たに4つのダムが稼動をはじめた。国内には42か所の発電施設があり、さらに各地で建造が続く。中部のボリカムサイ県では、関西電力によってナムニアップ1水力プロジェクトが進む。やはりメコン河の支流であるナムニアップ河に、発電容量計29万kwの発電所を2基、建設する。電力はこちらもタイへと輸出される。大林組やIHIインフラシステムなどが計画に参加し、運転開始は2019年1月の予定。このダムの総貯水容量は約22億立方メートルで、日本最大級である黒部ダムの10倍以上という規模になる。

▲写真 建設中のナムニアップ1水力プロジェクト 出典:関西電力

▲写真 ラオスではまだまだ河とともに生きる昔ながらの暮らしが残っている ©室橋裕和

莫大な発電量を持つラオスでは電気料金は安価で、家庭用の場合1kw/hあたり0.05〜0.08米ドルだ。東京0.16〜0.25米ドル、プノンペン0.15米ドルと比べてみるとその安さがわかる。

工業用の電力も同様で、1kw/hあたり0.078米ドル。東京0.12米ドル、プノンペン0.21米ドルよりはるかに安い。大電力を必要とする工場にとっては大きな差となり、これを「売り」にして外資の製造業を誘致する動きもある。日系企業はいまのところ、首都ビエンチャン郊外のビタ・パーク経済特区、南部サワンナケートのサワンセノ経済特区などに少数が進出するに留まっている。しかし今後は、タイやベトナム工場との分業体制が進むと見られ、ラオスの役目も大きくなるかもしれない。発電を軸にしたラオス経済は、この3年間の平均GDP成長率が7%を超えた。まだまだ後発国ながら、山地に刻まれた川筋はこの国の未来でもあるのだ。

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