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AIJ投資顧問の投資戦略

今回のAIJ投資顧問の件で、企業年金側にも責任があるという批判が聞かれるのですが‥確かに、会社の従業員の大事な年金の原資を預かる身であることを思えば、責任があるのはそのとおりです。しかし、当局の責任を放っておいて彼らを責めるのは少しばかり酷ではないのでしょうか。

だって、運用で失敗したなんて話は、大企業、大銀行、否、国にだってあるからです。それに、投資顧問会社に対しては、金融庁にちゃんと監督の責任がある訳ですから。また、だからこそ急に投資一任会社263社の一斉検査をやることにしたのです。

ところで、このブログを読んで下さっている方のなかには、為替の先物予約は、投機などでは断じてないと憤慨する人もいるのですが‥そして、私も言いたいことはよく分かるのですが、しかし、改めて冷静に考えれば、幾ら円高リスクを回避するためとはいえ、将来円が強くなることに賭けた事実は否定できないのです。

でも、私がそれを何回繰り返しても、恐らく理解できないでしょう。では、ある例を示しましょう。例えば、今から数十年前のこと、鶴のマークで有名な日本の航空会社が、海外で社債を発行していたことがありました。そして、その借金はドル建てであったために円建てベースでの元利払い総額が確定できず、そしてまた将来円がそれほど強くならなかったときに備えて、予めドル建ての債務を円建ての債務の交換したとしましょう。これを専門的に言えば、通貨スワップと言います。そして、この場合、円がスワップレートよりも安くなることに賭けているのです。

つまり、その会社はある金融機関からの申し出に応じて、通貨スワップを行うことにしたのです。例えば、その時点で1ドル=250円であったのに、7年後には1ドル=180円でそれぞれの通貨を交換しましょう、と。交換額は、社債に元本に合わせることにするのです。

まあ当時、円が将来的に強くなるとは予想されていたとしても、まさか1ドルが180円の水準にまで円高になるとは考えなかったその会社は、この申し出がとても魅力的に思えてスワップ契約を結んだのです。

しかし、実際社債の元本を償還する7年後になってみると、1ドルは180円どころか、150円より高くなっていた、と。

つまり、この会社が為替リスクを回避しようとしたのは事実であり、実際、為替リスクを回避したとも言える訳ですが、同時に、スワップ契約を結ばなければ、元本の償還は、円建てベースでみて大変に少なくなっていたのですから、結果として為替リスクを被っているのです。

この話、当時は新聞で大きく取り上げられたものでした。

それに、かつては大蔵省に負けないほどのプライドを持っていた日本興業銀行様も、どこかの女将に騙されてしまったではないですか?

さらに言えば、国の機関である○○事業団だって、株式投資をして大損を被り‥

で、今回のAIJの事件に関して、各企業の担当者は厳しく責められているのです。まあ、少しは責任を感じてもらわないといけないのでしょうが‥

でももう少し言えば、世間の人は知らないでしょうが‥全国の数多い、信用金庫や信用組合のなかには、証券会社のセールストークに乗せられて、大変リスキーな商品に手を出し、大損をこいている例があるのです。知らないでしょう?

つまり、本当のプロである信用金庫などでも騙されるのですから、建設会社や運送会社の年金担当者が騙されたとしても、余り責められないのではないか、と。

だいたい、彼らもそのポジションにふさわしいように研修を受けた訳でもないし‥そもそも専門知識がないから、だから専門家である投資顧問業者に頼ろうとした訳ですから。

で、専門家の投資顧問業者のいう事を信じたら、「話が旨すぎるだろう」だなんて。

それに投資顧問業者と言っても、立派な信託銀行を介して運用を実行しているようでもあり‥それに、投資顧問業者には金融庁の幹部が講話をしたり‥或いは、OBの方も再就職されている訳で‥

まあ、言い訳を探せば幾らでもある訳です。それに、今回AIJに運用を委託したことが判明してる企業の年金運用の状況をみると、何も全額をこの会社に任せているのではないのです。少ないところでは、数パーセント程度。

全ての卵を同じかごに入れるな。
Don't put all your eggs in one basket.

同じバスケットに全ての卵を入れておくと、万が一の時に全部割れてしまう恐れがあるので、危険を分散しましょうという投資の教えなのですが、まあ、この教えは最低限守っていたと言えるのです。

不幸中の幸い!

いずれにしても、何故AIJは大金を失ってしまったのか?そして、大金を失ったことに対し責任があるのか?

私は、AIJが正直に言っていたら、それほどの責任はなかったと思うのです。私の会社は、オプション取引を主体にした相当にリスクの高い運用を心掛けます、と。そして、調子がいいときにはガンガン儲かりますが、運が悪いと大損なんてこともあります、と。

しかし、そこの点でこの会社は虚偽の事実を報じた節があるのです。10年間で250%の運用実績を示しているなんて。

では、改めて、この会社は、どんな運用方針で臨んでいたのか?

ウォールストリートは、次のように報じているのです。社長の言葉です。

Our profits will not depend on rises or falls in the market.

We will achieve our goal through a strategy that employs highly sophisticated financial technology, selling high and buying low.

ほう、そんなことを言っていたのか、と。

で、日本証券投資顧問業協会のサイトには投資運用会社要覧というのがあり、そこには、この会社の運用戦略が書かれているのです。

「投資哲学

先進国株式市場は、成熟化が進んだ結果、これまでのような高い成長性が期待しにくくなっており、また世界経済のグローバル化の進展により各国経済の同調性が高まり、従来型分散投資によるリスク軽減効果も著しく低減しています。

当社は、国内外の株式や債券など伝統的資産に替わる「オルタナティブ運用」に特化することにより、市場の方向性に左右されない「絶対収益」の「安定確保」を目指します。

運用戦略

「絶対収益の追及」と「安定的収益の確保」というふたつの命題を、「派生商品による運用」戦略等により実現します。

日経225オプション売り戦略を中心に、株式や債券等の派生商品による運用(市場価格と理論価格との乖離を利用した様々な裁定取引など)で毎月少しずつ収益を確保していきます。リスク管理については、独自に開発した「MI指数」などを駆使して、多元的な管理を徹底して行います。」

イマイチ分かりにくい面もあるのですが、要するに伝統的運用手法である、国債への投資や株式への投資は行わないと言っているのです。では、その代り何をするのか?

で、言っているのは、「オルタナティブの運用です」と。

大体このようなカタカナ用語を使われると、地方の素朴な担当者たちは、質問ができなくなってしまうのです。でも、なんとなく洗練されていそうで格好いい、と。

でも、オプション取引をするということは、先に挙げた鶴のマークの会社がやったことと同じですから、得をすることもあれば損をすることもある、と。まあ、還元率が100%近い宝くじを買ったと思えばいいでしょう。全体でみれば、誰も損得なしだが、個々のケースでみれば、大損をする人や得をする人が出てくる、と。

でも、この会社は、それを正直にいうようなことをしなかったばかりか「絶対収益」などという言葉まで用い‥でも、まだ、そこまでなら罪は軽いかもしれません。

この会社がやったことは、海外の私募投信で運用して、運用の実態をブラックボックスに入れてしまったことなのです。つまり、私募投信で、透明性が確保できないから、幾らでも虚偽の運用実績を主張できる、と。

いずれにしても、年金の運用は安全第一であるので、本来はリスクの高い運用は回避すべきであるのです。

急に263社の投資運用会社の一斉検査が行われることになりましたが、この機会に企業の年金担当者も考え直した方がいいでしょう。

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