- 2018年09月28日 14:35
氾濫する子育て情報、混乱する親が押さえるべき一番のポイント - 小川大介
1/2失敗したくないと強く思う人ほど情報に振り回される
こんにちは、小川大介です。
自分自身も一人の男の子の親として、子育てに向き合いながら人の成長にいかに関わるかを学ぶ毎日を過ごしています。
学べば学ぶほどに知りたいことが見つかっていくもので、書店に立ち寄ると脳科学や心理学、コミュニケーションに関する本に手が伸びてしまい、また「積ん読」が増えてしまう今日この頃。ネットでも気になる記事が次々と目に入るものですから、つい読みふけってしまうということがよくあります。
ところで、インターネットの普及で、知りたい時にすぐに調べられるようになり便利になった反面、たくさんの情報が溢れ、それに振り回されてしまう人が少なくないようです。特に今、子育て中の親御さんで、わが子のことは自分でなんとかしなければと思い込み、身近な人に相談するよりもネットの情報に頼る人が増えているようです。
しかし、誰でも気軽にアクセスでき、発信できる今、一つの問題に対してもたくさんの答えを目にするようになりました。昔は子育てで何か分からないことがあれば、分かる人に聞いて教えてもらうだけで済みました。
でも、今は誰でも自分の子育てについて発信できる時代です。ある人はこう言っているけれど、別の人はこう言っている。正反対の答えがあちこちあって、「何を信じていいのか分からない」となりがちです。
例えば、お子さんが算数の図形が苦手だったとします。勉強熱心な親御さんが何かよい解決策はないかとネットで調べてみると、ある人は線を描いて解くといいと言い、ある人は親が横で描いてあげるといいと言い、またある人はまず答えを見て、それから考えさせるといいと言い、またある人はまずは10分考えさせてみると言い、みんな言っていることがバラバラです。
では、どれが正解なのでしょう?
答えは、いずれも正解で、いずれも違います。なぜなら、お子さんの現状によって取るべき対策が異なるからです。
今あなたのお子さんが勉強に対して自信をなくしていたとします。それなのに、「とにかく10分考えてみなさい!」と言われたらどうでしょう? 考えても、考えても答えを出すことができず、ますます自信をなくしてしまうのではないでしょうか。
そういう場合、この方法はベストとは言えませんね。それよりも、先に答えを見せて解法を納得した上で、自分で解いてみるというやり方のほうが自信につながるでしょう。このように、何か対策をとる時は、その子の性格、現状のレベル、使える時間、体力などを考慮した上で、何がベストか、またはベターなのかを見極める必要があります。
この人はこう言っている。でも、うちの子はどうだろう? そうやって、お子さんを基準に考えてみるのです。
でも、この視点を忘れると、一つやってうまくいかなければ、すぐまた別のやり方に飛びつくという具合に、あれもこれもやろうとする間違いに陥ってしまいます。まじめな人ほど、子育てで失敗したくないという思いが強く、その傾向があるように思います。
すると、子どもは混乱するばかりか、結局、何一つ努力した証が手に入らないということにもなりかねません。自分の努力の証がなければやる気も出ませんし、親の思いのままに振り回されれば、やがては親の言うままに行動するクセがついてしまいます。
それでは、子どもの自主性は育っていきません。
これ、部下を持つ方の悩みベスト10に常に登場する、「指示待ち族」問題そのものです。
その“困っている”は、誰が困っているのか?
では、たくさんの情報の中から、何を基準にベストな方法を見つけていけばよいのでしょうか?
それには、次の3つの質問がお役に立ちます。
(1)自分は今、何に困っているのだろう?
(2)子どもは今、何に困っているのだろう?
(3)今すぐ叶えたい目標は何だろう?
詳しく説明していきましょう。
【自分は今、何に困っているのだろう?】
私は長年、中学受験専門の指導者として、受験生の親子とたくさんの面談をしてきました。そこで数多く出会ってきたのが、親が「自分の問題」と「子どもの問題」をごっちゃにしているケースです。
100満点中50点しかとれなかったテストを持参し、「こんな成績をとっていたら、普通なら焦るはずなのに、まったくやる気を見せません。どうしたらいいのでしょう?」と相談にくる親御さんがいます。
この相談は一見、お子さんの相談に見えますが、実は困っているのは親御さんなんですね。
「普通なら焦るはずなのに」
「やる気を見せません」
「どうしたらいのでしょう?」
全部、親の自分が決めたこと、親の自分が困っていることです。
でも、この親御さんは困っているのは自分だ、ということにはお気づきではありません。
何か問題を解決するには、大前提として、目標や目的がはっきりしていることが必要です。
そこが曖昧になっていると、そもそも何が問題なのかも分かりません。
何を目指していて、現状がどうだから、「問題だ」と言えるのかが決まるからです。
何が誰にとって問題なのかがあやふやなら、もちろん、正しい解決策も見つけることはできません。
ですから、まず「自分が困っていること」と「子どもが困っていること」を分けて考える必要があるのです。
親御さんの「困った」の多くは、次の3つが考えられます。
1,何をどうしていいのか分からない
2,自分ならこうするのにできない子どもを見てイライラする
3,やるべきことは見えているのに、時間的に余裕がなくてできない。やるべきことの優先順位が選べない。
まずは「今、自分は何に困っているのだろう?」と考えてみます。「困っている」の裏には「こうして欲しい」「こうなって欲しい」という自分の思いがあるはずです。それが何かを明確にします。
【子どもは何に困っているのだろう?】
次に「お子さんが今何に困っているか」を見ていきます。分かりやすく中学受験の勉強を例にとって考えてみると、「子どもの困った」は、大きく3つに分けることができます。
1,できる・できない(学力レベル・時間的な問題など)
2,自信がない・できる気がしない(自信喪失)
3,やる気が起きない(a,他にやりたいことがある b,やり方が分からない)
先のテストの結果についての悩みであれば、お子さんの成績が伸びない原因は何かを考えてみます。
単純に学力レベルが達していないから得点につながらないのか、成績不振が続き、自信をなくしてしまっているのか、それとも受験勉強以外にやりたいことがあって、気持ちが乗っていないからかなど、お子さんの立場に立って考えてみます。
ここまでくると、親御さん自身の「困っていること」と「お子さんが困っていること」のそれぞれがはっきりしてきます。
さて、その「困った」は同じでしょうか?
私の経験では、違うことの方が多いように思います。
「こんな成績をとっていたら、普通なら焦るはずなのに、まったくやる気を見せません。どうしたらいいのでしょう?」と言っているのは親御さんで、それは親御さんの「困っていること」なんですね。
お子さんの「困っていること」ではありません。
親の自分が困っていることとうちの子が困っていることは、実は違うのではないかと気づけることが、悩み解決の第一歩として大切なのです。
「こんな成績をとっていたら、普通なら焦るはずなのに」といった「こうなるはずなのに」という考えは、親の思いの一方的な押しつけに過ぎません。お子さんが「困っていること」はお子さん自身が決めることで、そこに着目しなければ、根本的な解決はできないのです。
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