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大前研一氏 老朽化に負けない東京「先進的メガシティ」構想

東京は老朽化をどうしのげばよいのか

 日本の道路や橋、トンネルなどのインフラは、今から約50年前の高度経済成長期につくられたものが多いため、そろそろ耐用年数を迎えようとしている。社会インフラだけでなく、マンションの老朽化も深刻な問題だ。経営コンサルタントの大前研一氏が、倒壊する危険もある老朽マンションの問題を解決するプランを提案する。

 * * *
 イタリア・ジェノバで今夏、建設から50年以上経た高速道路の高架橋が突然崩落し、43人が死亡する事故が起きたが、これは“対岸の火事”ではない。

 2007年に高速道路の橋が崩落して多数の死傷者が出たアメリカでも、橋や道路の多くは建設後70~80年経過して老朽化している。しかし、修繕や造り直しは遅々として進んでいないため、トランプ大統領は1月の一般教書演説で今後10年間に1兆5000億ドル(約163兆円)規模のインフラ投資を求めた。

 日本も同様だ。2012年の中央高速道路・笹子トンネル天井板落下事故は記憶に新しいが、高度経済成長期以降に整備された道路や橋、トンネル、下水道などの大半が、今後15年で耐用年数の目安とされる「建設50年」を超える。

 これに危機感を募らせた国土交通省は2014年に「インフラ長寿命化計画」を策定し、戦略的な維持管理・更新を進めようとしているが、予算や技術者の不足でなかなか進捗していないのが現状だ。

 そもそもインフラは我々の健康診断や人間ドックと同じように定期的なメンテナンスが必要だが、今のところそれに相当する調査方法は極めて原始的である。たとえば、ビルやマンションの外壁タイルなどは剥がれて落下する危険がないように竣工後10年を経過したら点検しなければならない。

 しかし、その方法は足場やゴンドラを設置し、作業員がハンマーや棒で叩いて音で判断する「打診調査」が今なお主流である。橋やトンネルをはじめとする公共インフラの調査方法も大差はないが、今後は渦電流やX線などの従来とは異なる検査技術を組み合わせてデータを集め、AIやロボットを利用して簡単に調査・点検できる技術開発に予算を大々的に投入していくべきである。

 いずれにしても、これから日本はインフラの老朽化対策に莫大なお金が必要となるわけで、これは「国策」として取り組んでいかねばならない。しかし、巨額の債務を抱える国が、この上さらに老朽化対策に予算を振り向けるのは難しい。

 そんな状況の中で、こと東京に関しては、やり方次第でこの危機を乗り越えられると私は考えている。

 東京都の「マンション実態調査」(2011年)によると、都内には分譲マンションが約5万3000棟あり、そのうち2割強にあたる約1万2000棟が震度6強や7の大地震に見舞われると倒壊する危険性が高い「旧耐震基準」で建てられた物件だという。

 この老朽マンション対策として、都は「玉突き建て替え」制度を2019年度にも創設すると報じられた(『日本経済新聞』8月19日付)。これは、不動産会社が老朽マンションを買い取れば別の場所に建てるマンションの容積率を上乗せし、買い取った物件の跡地にマンションを建設する場合も別の老朽物件を買えば容積率を積み増す―というものだ。

 だが、そうした役人の裁量次第で容積率や建蔽率が左右されるというのは明らかに間違っている。そういう子供だましはやめ、建築基準法を根本的に見直して、全国一律からローカルなものにすべきである。

 つまり、老朽マンションは安全性だけが問題なのだから、役人が鉛筆をなめながら決めるべきものではないのだ。建築や土木の専門家が、その地域や地盤で確実に安全性が担保できる容積率や建蔽率を計算上決めていくやり方が望ましい。

※週刊ポスト2018年10月5日号

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