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夢と挫折の平成時代/次のメガトレンドに向けて

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失敗? 次の時代への準備?

前回、平成の総括ということで、3つの失敗(政治、経済、思想)について書いたたのだが*1、私が思った以上に反響があって、様々なご意見を頂戴した。中でも、失敗というより、次の新しいものが出てくる胎動の時代だったのでは、というご意見には、少なくとも経済に関わる問題については、条件付きながら、私も同意する。

本当に新しいものが出て来るためには、既存の枠の中で出来ることは最大限やり尽くして、茫然自失するくらいの方が良いとも言える。その時こそ、従来では考えられなかったようなコンセプトが現れ、状況を根こそぎ変えてしまうようなものが現れる。中途半端に現状の手直しでしのごうとしている間は、本当に新しいものは出てこない。特に日本人にはそういう傾向がある。だから、平成の『失敗』も、既存の枠内で考えられる限り、やるだけやって、やり尽くした状態と見れば、今こそ、予想もしなかったような新しいものが現れる好機とも言える。

ただし、それ(新しいもの)が出現した当初は、従来のものとあまりに違うがゆえに、あやしく、取るに足らず、場合によっては疎まれることにもなるだろう。だから、平成の次の時代をリードするメガトレンドを今のうちに見つけていきたいと思えば、そのような、『あやしく、取るに足らず、疎まれさえするもの』を忌避せず、客観的に評価する公平な態度が必須となる。

ちなみに、平成は失敗の時期と言っては見たものの、楽しくなかったのかといわれれば、そんなことはない。むしろ、非常に楽しい時代だった。私の前回のブログ記事にも、『失敗?結構楽しかったけど』という感想をいただいたが、実のところ他ならぬ私自身、そう思っている。特に2000年以降、IT業界の片隅に在籍して、仕事でも、プライベートで書いてきたこのブログの周辺でも、実にエキサイティングで楽しい経験をさせていただいたと思っている。

インターネットの本格普及はまさに平成が始まってからのことになるが、この時代は、インターネット関連で次々に目新しいものが登場し、従来は一個人ではできなかったことが次々に出来るようになったり、古い仕組みを破壊して、新しいビジネスを立ち上げたり、社会改革を夢想したりすることができた。

旧来の仕組みやモラルを守旧する側にとっては、ただの破壊にしか見えなかったかもしれないが、その枠から解き放たれて、新しいものを求める者にとっては、夢に熱狂することができる時代だった。しかも、この環境で、それまで抑圧されて来たオタク的な趣向がインターネットの助けも借りて、爆発的に拡大して、その巨大なパワーを見せつけることになった。

だが、残念ながら、あれほどはち切れんばかりに膨らんだ夢も、平成末期を迎える今となっては大方覚めて、熱狂もおさまってしまった感がある。祭りの後の寂しさとでも言うのだろうか、今では、妙な寂寥感と諦念が漂っている。

IT業界の周辺での夢と挫折

この点については、様々なご意見があるように思うが、あくまで私の立場から見て来た、IT業界の周辺での夢と挫折について、今回も3つあげて説明しておこうと思う。

1. インターネットの夢と失望

2. SNSの夢と失望

3.オタク文化の膨張と衰退

1. インターネットの夢と失望

インターネットについて言えば、当初の予想をはるかに超えてあらゆるものを変えてしまったと言っていいだろう。最早、誰にとっても無くてはならない必須のインフラになった。ただ、それでも、インターネットに賭ける夢や理想はもっとずっと高いところにあった。これについては、次の記事が参考になる。

MIT Tech Review: インターネットのあの美しき理想はどこへ消えたのか?

人によって若干解釈やニュアンスが異なるかもしれないが、この記事の次の部分で述べてあるようなコンセプトに賛同して、インターネットによる政治や腐敗した大企業の浄化に願いを託した人は大変多かった。

「本来インターネットは民主的なものだ。インターネットによって個人や自己組織化する共同体が力を持ち、瀕死の状態にある支配体制に対抗できるようになる」と楽観主義者は主張した。

その夢が最も膨らんだ時期の一つは、いわゆる『アラブの春』の頃と言っていいだろう。インターネットが政権の打倒を目論む人民を連帯させるためのツールとして利用されることで、独裁的な政権が次々に倒れて民主化していく、そのような期待がいやが上にも盛り上がった。

だが、実際には、独裁政権が倒れても、直ちに民主化するわけではなく(そのように考えること自体がナイーブというしかないが)、逆に政権側も、インターネットの威力を十分に理解して、ほどなく、国民の管理やテロリストを発見するツールとして活用し始めた。

いわばその頂点にいるとも言えるのが、現在の中国で、経済的に豊かになっても民主化せず、それどころか、共産政権はインターネットや監視カメラ、人工知能等のテクノロジーを駆使して、従来の人力では実現不可能だった個人の監視と管理を徹底しつつあり、あまつさえ、個人情報を制限なく使えることを経済的にも最大限生かして、産業政策でも世界をリードしようとし始めている。

2016年の米国大統領選挙では、トランプ陣営が起用した、データマイニングとデータ分析を手法とする選挙コンサルティング会社である『ゲンブリッジ・アナリティカ』のフェイスブックデータの不正利用や、巧妙な世論操作ともいえる手法等が明らかになったり、大量のフェイクニュースが吐き出され、ロシアの介入が疑われる等、インターネット選挙のネガや問題点が噴出する。

日本でも、インターネットが政治改革に利用できることが盛ん論じられたものだが、今ではすっかりその熱は冷めてしまった。インターネットは、今ではそれ自体は当たり前に存在するものだし、無くてはならないものだが、特に夢を実現するツールとの評価は影を潜めて、今の局面では、同じ意見の持ち主どうしを同じ蛸壺に押し込み、人々の分断を促進するツールとなっている等、どちらかというとネガティブなニュアンスで語られるようになってしまっている。

2. SNSの夢と失望

これは1とほとんど重なっていると言ってもいいのだが、特に、ウェブ2.0 *2と命名された動向は、日本でも独特の発展を見せ、夢と熱狂が日本列島を揺さぶったことは記憶に新しい。よって、あえて、分けて述べておく意味はあると考える。

これも、参考となる記事がちょうど手元にあるので、参照させていただく。

『ウェブはバカと暇人のもの~現場からのネット敗北宣言』*3でその名を知られる中川淳一郎氏のブログ記事だ。

ブログやSNSは“ネットの空気”をどう変えたのか? 平成最後の夏、「ネット老人会」中川淳一郎が振り返る (1/3) - ねとらぼ

この記事にもある通り、2000年代には、個人が簡単に意見を表明し、意見交換を行うことができて、しかも、場合よっては非常に大きな知名度を得てサポーターを広げることができるとの期待が盛り上がった。最初に、ブログ、そして、mixi、twitter、Facebookと登場するたび個人の発信のハードルは下がっていった。

従来はマスメディアしかなかったところに、個人でも一企業でも容易に情報を発信できるようになり、マスメディア批判も盛んになった。特に東日本大震災では、メディアが政府広報のような役割しか果たしていない、生活に本当に必要な情報がない、等の批判が強まったこともあって、twitter等のSNSが新たな市民メディアとしての地位を確立することが期待されていた。

また、SNSを利用することによって、一個人や一企業が、非常に多くの人を動員できるパワーを持てる可能性があり、それは政治にも、ビジネスにも応用可能であることから、個人がビジネスを立ちあげたり、大きな組織を相手取って幅広い活動ができるとの夢は大いに膨らんだ。

だが、上記の記事にもあるとおり、今ではこれらのツールはすっかり当たり前になった代わりに、人気を得るのは、すでにリアル世界でも人気のある芸能人や有名人ばかりになり、テレビや新聞を含む大メディアでも、ネットメディアを補完的な役割としてシステムに組み込み、これもまた当たり前となった。逆に、個人をエンパワーするツールという認識は後退し、むしろ、個人が迂闊に利用すると、炎上したり、思わぬトラブルに巻き込まれる危険なツールという扱いになってしまった。

3. オタク文化の膨張と衰退

『オタク』を定義することは、非常な難事であることは承知しているので、今回は人様の定義を借りることにする。思想家の東浩紀氏が著書『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』*4で述べた定義が平成に巨大なプレゼンスを誇ったオタクの定義として最も妥当に思える。

それはひとことで言えば、コミック、アニメ、ゲーム、パーソナルコンピュータ、SF、特撮、フィギュアそのほか、互いに深く結びついた一群のサブカルチャーに耽溺する人々の総称である。

平成が始まった頃は、ちょうど連続幼女誘拐殺人事件の最中ということもあり、典型的なオタクだった犯人の宮﨑勤の影響で、強いオタクバッシングが吹き荒れていた。オタクが急速に名誉回復を果たし、逆に、爆発的にその存在を誇示し始めたのは、1995年に登場した、『新世紀エヴァンゲリオン』*5あたりからだと思う。『エヴァ』放映直後の1996年5月には、『エヴァ』にも関わった評論家の岡田斗司夫氏は、『オタクは日本文化の正統継承者である』と主張していたというが、これは今思えば非常に意味深な発言で、オタクが耽溺するサブカルチャーが興隆して、日本文化の中心に鎮座することも見据えていたとも言える。実際、この後、サブカルチャーも、それに耽溺するオタクも猛烈な勢いでプレゼンスを拡大していく。

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