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「毎日死にたい」「助けて欲しい」深刻な相談も、広がりみせる『退職代行サービス』


 2010年の落ち込み以降、年々増加傾向にある転職者数。厚生労働省の「個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、退職に関する相談件数も増え続け、2016年度には解雇相談件数を上回った。背景には、人手不足などの理由から会社側に「辞めさせてもらえない」という“引き留め”があるという。

 そんな中、いまネットで話題になっているのが「退職代行サービス」。『けやきヒルズ』(AbemaTV)では、その実態に迫った。

■サービス立ち上げから1年で依頼件数は月300件超に

 LINEに次々と寄せられる退職を望む人たちからのメッセージ。中には、「毎日死にたい」「もう、精神的に苦しいです」「本当に行きたくないです。助けて欲しいです…」という切羽詰まった内容も。


 都内にあるシェアオフィス「HAPON新宿」でそれらのメッセージを受けているのは、センシエス合同会社が運営する退職代行サービス「EXIT」。「EXIT」は会社を辞めたいという利用者の相談をLINEやメールなどで受け、本人に変わって退職に必要な連絡を会社側に行うというものだ。

 「もしもしお世話になっております。私センシエス合同会社の●●と申しますが、人事の責任の方におつなぎいただけますか?本日お電話させていただいたのが、そちらでお勤めの●●さまのご退職の件なんですね。弊社は『退職したいけどもそういった意思を会社に伝えられない』『会社と連絡を取りづらい』といった方の代わりにお電話するサポート業務を行っておりまして、今回インターネットを通じてそちらにお勤めの●●さまからご依頼いただきまして、お電話させていただいています。一度、弊社の方にご連絡をいただければと●●さまにお伝えしますので」(退職代行の連絡)


 6分後、会社に退職の意思が伝わり、あとは本人から退職届を郵送するだけだという。連絡はこの会社がすべて引き受けているが、共同代表の新野俊幸さんは「私自身3社経験しているが、退職する時にものすごいエネルギーを使った。退職をもっと気軽にできるような社会にしたいというところで(退職代行サービスを)立ち上げた」と経緯を話す。同じく、共同代表の岡崎雄一郎さんは「始める時は単純にちょっとした気軽な代行サービスぐらいのつもりだったが、寄せられてくる相談内容が『助けてください』『死にたい』と本当に深刻で、思っていた以上にニーズが深いものだった」と思わぬ需要に驚いたという。

 サービスを立ち上げたのは2017年の春。ネットで話題になり、メディアにも取り上げられ、わずか1年で依頼件数は月300件を超える爆発的な広がりを見せている。街の人にサービスの是非を聞いてみると、「いいんじゃないですかね。なかなかそういうことを言い出せない人もいるだろうから」「いざ自分が辞めるってなったら使ってみたい」「一番大事なところじゃないですか。最初と最後をきっちり(するのは)」と賛否両論の声が上がる。


 こういった批判的な意見に新野さんは「気持ちはわからなくもない」としつつ、「そもそも本人が退職の意思を言えないような空気感にしてしまっているというのは、間違いなく会社側にもある程度問題があると思っている」と指摘する。

■「一切会社に行かないで辞められたんだって嬉しかった」

 実際に退職代行サービスを利用した23歳の男性。当時大手ファミリーレストランの正社員として働いており、忙しい時は、休みは週1度、睡眠時間は2~3時間程度だったという。


 「とにかく厳しいシフトばかりで休みも全然なくて、プライベートな時間とかも全然なかったので、生きている意味っていうのが分からなくなってきちゃって…。うつ病になって精神科に通ったりしました。会社は辞めたいと言って辞められるような雰囲気ではなくて、僕からは(退職を)とても言い出せなかった」(利用者の男性)

 退職を決意したものの、目にしたのは辞意を示したが会社の引き留めに遭い辞められない同僚の姿。悩んでいたところ、この退職代行サービスにたどり着いた。男性は「(連絡当日の午前)9時50分くらいに料金を振り込んだんですよ。そうしたら、18時にはもう退職が決定していたっていう感じです。正直『本当に辞められちゃった』みたいな。本当に一切(会社に)行かないで辞められたんだって嬉しかったですね」と振り返る。


 さらに、この退職代行の過程をTwitterで実況したところ、まとめサイトのビューワー数が39万を突破。「ちょっとくさい言い方ですけど、やっぱり希望じゃないですか。自分だけじゃどうしようもできないことを、お金という報酬を支払うことで誰かが変わりに辛いことをやってくれるのはすごくいいサービスだと思います」と話した。

 転職者が増え続けるいま、新野さんは退職をネガティブに捉えないで欲しいと訴える。


 「退職をポジティブなものにしたい。かつ気兼ねなく辞められるような社会になればいい。極論ワンタップで退職できるような、それぐらい気軽でいいんじゃないかと」

 これまで900件以上の退職を代行したが、一度もトラブルになったケースはないという。会社は急拡大しスタッフも増やしたが、気軽な退職を推進するための福利厚生として「即日退職OK」を実践している。

■退職代行サービス利用時の注意点は

 日本版ハフポスト編集長の竹下隆一郎氏は、退職代行サービスを通しての連絡について「会社の悪い点を知ったり、こうやって会社を変えた方がいいなと気づくきっかけにもなったりするので、直接辞める理由を聞きたい」と部下を持つ立場からコメント。一方で、「このサービスを使う時点でそれ以上に問題は根深い。不当な会社が多いためにこういうサービスが生まれるのは、日本社会の残念な一面も示しているような気がする」と指摘する。


 また、「退職=裏切り」のようなイメージは日本に根付いてきた終身雇用が背景にあるとし、「人材はぐるぐる回るものなんだ、という共通認識があればいいなと思う。私も退職した人といまだに連絡を取るし、退職した後につながりがあると新しい仕事が生まれたり、新たな視点を得たりすることができる。組織がアクティブにダイナミックに動いていく社会になってほしい」と述べた。


 一方で注意が必要なのは、退職代行サービスは会社側に退職の意向を伝えるのみで交渉などは一切行わない点。島田さくら弁護士は「費用をもらって権利義務に関わるアドバイスや交渉ができるのは弁護士等の専門家のみ」だとし、要望どおりに退職できない、法律を持ち出して反論された際は、労働基準監督署や弁護士等の専門家に相談することを勧めた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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