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監査報告書の長文化導入と同時に四半期報告制度を廃止すべきでは

日経朝刊のトップに「監査不信 ふたたび」と題する記事が掲載された日曜日(9月23日)、東京新聞朝刊経済面に「決算『四半期』→『半期』 米で検討 企業歓迎 透明性後退も」と題する特集記事が掲載されました。

トランプ大統領が米国企業の決算について四半期から半期に見直すことを表明し、すでにSECが検討に入ったことはご承知かと思いますが、日本も対応を迫られる可能性が出てきた、ということを報じています。

具体的には、金融庁WGが「現時点では四半期開示について見直すことはしない」としながらも「海外動向などを注視し、必要に応じてその在り方を検討する」とまとめたことから、日本でも見直しの機運が高まりつつある、という趣旨の記事でした。

米国大統領の提案に日本商工会議所も、経団連も共感を示していて、八田進二先生も(コメントの解釈として)一定の理解を示しておられます。

米国では1970年から四半期開示が義務化されましたので、1999年に東証マザーズで義務化された日本よりも30年も長い歴史があります。証券市場に深く根付いた制度なので(あまり報じられていませんが)廃止反対論も多いのではないでしょうか。

また、日経新聞の社説では、先日「四半期開示制度は必要」とのことでしたし、日曜日の「監査不信」の特集記事でも「四半期開示の廃止は、さらに大きな会計不正を生むおそれがある」と締めくくっていたので、日本でも四半期開示制度を廃止することについては投資家サイドを中心に、根強い反対意見があると思います。いっぽうでは四半期開示に要する「膨大な時間と費用」について、企業側からの廃止提案も出ています。

ところで(ここからは私の勝手な意見ですが)、日本では2021年3月期から60年ぶりの改革となる「監査報告書の長文化(透明化)」が施行されます。

5年前に導入された「監査における不正リスク対応基準」と同様、企業と会計監査人との協働によって監査の信頼性を高める制度が導入されるわけですが、資本主義の負担をどう分配するか・・・という点については、企業と監査法人との「解を模索する努力」は、これまでもやってきたわけでして、今後もさらに続くはずです(単に、世間の方々が、監査制度にあまり関心を抱いていないだけかと)。

現に、トラブル案件を通じて、中小の監査法人の監査実務を近くでみている者としては、監査における不正リスク対応基準が実務に及ぼす影響はかなり大きい、と実感します。

やや「認知バイアス」(代表制ヒューリスティックス)気味な話かもしれませんが、私の周囲を見回しても、これまで遠慮して企業側にモノが言えなかった会計監査人が、会計士協会の報告書や実務指針、金商法193条の3を根拠に、会社側に厳しい意見を述べる場面は確実に増えています(3年ほど前に、当ブログでご紹介したように、オモテに出てしまった事例もあります)。このあたりは、普段から監査法人に検査に入っている金融庁が一番認識しているのではないかと思います。

監査報告書の改革に不正会計の予防効果があるかどうかは未知数ではありますが、せっかく導入するのですから、この際、同時期に四半期報告制度は廃止してはいかがでしょうか。監査法人には限られた資源しかありません。

これから始まる監査報告書改革には物的・人的資源が必要なので、四半期報告書制度を廃止することによる資源を、企業も監査法人も、そちらに振り向けることには、それなりの合理性があると思います。

四半期報告制度が(かならずしも不正防止という趣旨とは直結しない)重要なインフラであることを承知のうえで、監査に要する資源には限りがあるという現実を見据えながら、あえて提言してみたいところです。

監査制度は資本主義社会に不可欠な制度であり、監査人と企業とが共同でこれを担っていくべきものです。監査不信を本気で払しょくするのであれば、証券市場に関わる人たち全てが「何かを始めること」よりも「何かを終える」勇気や覚悟を持つべきだと思います。

会計不正を防止する覚悟、そしてなによりも政府の推進している企業統治改革を実施する覚悟(「中長期における企業価値向上への経営戦略」への建設的な対話)があるのなら、多少の混乱を承知のうえで「何かを捨てること」から始めるべきです。

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