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"東京五輪で好景気"と話す人は経済オンチ

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■数字をもとに仮説を立て検証する人は経済に強い

経済の基礎3【経済の大きなイベントを記憶する】

「経済」をより身近な存在にする方法があります。それは経済的に大きなイベントを契機として、世の中のお金や数字の動きを追うことです。

ここ30年間の経済の出来事の筆頭格が、1986年~89年末頃まで、日本列島が沸いた「バブル」でしょう。東京では、住宅地の地価が数年間で4倍に高騰し、89年暮れには日経平均が最高値3万8915円をつけ、空前のバブルに沸いたのです。

その背景にあったのは政治です。

80年代前半から日本の自動車や家電製品などの輸出が急増し、米国では議会前で日本製ラジカセが斧で叩き壊されるなどのデモンストレーションが行われ、ジャパンバッシングが激しくなっていました。それを受けて、円安是正を行うべく85年9月にニューヨークのプラザホテルで主要5カ国の蔵相、中央銀行総裁会議が開かれ、それまで240円程度だったドル・円レートが、一気に150円程度まで円高となったのです。

円高不況を恐れた日本政府は、金利を低下させるとともに通貨供給量を増やし、その資金が株式市場や土地に向かいバブルが発生したのです。

バブルは所詮バブルですから、それが90年代に入り崩壊。97年、2003年には2度の金融危機を迎えます。

しかし、2000年代初頭からは、米国は低所得者向けの住宅ローンであるサブプライムローンのおかげで、欧州はEUの通貨統合もあり景気が拡大期となりました。そして、米国、EUの両地域と経済的に関係の深い中国がその大きな恩恵を受け年10%程度の高成長となりました。さらに、そのおかげで日本経済も拡大し、先にも述べたように、2002年から2007年にかけて、戦後最長の拡大となったのです。

しかし、サブプライムローンは債務不履行が相次ぎ、2007年8月には「パリバショック」、2008年9月には「リーマンショック」が起こり、その後は世界同時不況やギリシャ危機などがありました。

現在は、そこからようやく立ち直って景気拡大を続けている時期です。しかし、先ほども述べたように、日本は長期的に極めて低成長なのです。

■「東京五輪のおかげで好景気」を信じる人の経済センス

少し先のイベントにも目を向けてみましょう。2020年の東京五輪。この年までは日本の景気は悪くならないという見方がありますが、本当でしょうか。また、訪日客が増加すると予想される中、都内ではホテルの建設ラッシュですが、ホテル事業は儲かるのでしょうか。

iStock.com/beastfromeast

私は景気に関しても、ホテル事業に関しても、楽観的には見ていません。

東京五輪に関しては、五輪のための支出が約2兆円で、毎年の公共事業費(約6兆円)と比べてもそう多くはありません。前回の東京五輪が開かれた1964年の名目国内総生産(GDP)は30兆円程度でした。統計の取り方は少し異なりますが、規模で言えば現在の18分の1でしかありません。その経済環境の中で、新幹線、東名・名神高速道路、首都高速、地下鉄などの建設のために巨額のコストが投入されたのですから、経済的に極めて大きなインパクトになりました。

でも、今回の場合、すでに日本の経済規模は大きくなっている分、東京以外の日本全体にその効果が波及することはないのではないかと私は見ています。

一方、ホテル事業に関しては、訪日客は今後も増加するでしょうが、民泊が増えれば、供給過剰気味の都心のホテルはそれほど活況を呈することはなく、生き残りに四苦八苦する可能性もあると思うのです。

以上は、あくまで私の仮説ですが、大イベントを契機に経済の統計データなどをチェックして、仮説・検証をする習慣を確立すれば、徐々に経済の骨格が見えてくるはずです。

経済の勉強は、世の中の流れを知るだけでなく、とても変数が多いので「思考力」を高める訓練として有用です。皆さんも経済を勉強することにより、経営に直接それを役立たせるとともに、ビジネスパーソンに必要な「思考力」を鍛えてください。

(経営コンサルタント 小宮 一慶 写真=iStock.com)

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