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災害時ボランティアと”管理しない”管理

1. 震災ボランティアと報道

今年の夏は、豪雨、台風、地震と災害続きだった。テレビ報道に注目すると、最初は被災の状況を報道しているが、少し時間を経つとボランティア受付状況が報道される。最初は県内在住の希望者、次に県外のボランティア希望者と、受付状況が少しずつ変化しているのがわかる。

北海道地震のボランティアについて、次のような記事がアップされていた。

「北海道地震の震源地に近い厚真(あつま)、安平(あびら)、むかわの3町には、22~24日の3連休に延べ2000人超の災害ボランティアが集まった。被災地では息の長い支援が求められているが、作業の割り振りなどがうまくいかずに参加の申し出を断った事例もあるなど、課題も浮上している。

最大震度7を観測した厚真町では24日、道内外から218人のボランティアが参加。町営パークゴルフ場に設けられた災害ごみの収集場では、約30人が、被災住宅から搬出された家財道具を黙々と仕分けていた。参加5日目の室蘭市の福祉施設職員の男性(46)は「被災者のため、これからも参加したい」と話した。

被災者からの依頼を精査し、ボランティアを適所に割り当てる災害ボランティアセンターは各町の社会福祉協議会が設置、運営しているが、調整作業は簡単ではない。厚真町で参加した室蘭市の会社員の男性(38)は「仕事が割り振られるまで1時間以上待った」と話す。」(読売新聞 9月25日)

2. 平常時と異なる非常時のボランティア・マッチング

災害ボランティアと仕事のマッチングに時間を要したり、うまく割り当てができず、志願して来た人に仕事の機会を提供できなかったケースは、北海道のこの例に限ったことではない。

被災地の状況は時々刻々と変化するため、支援ニーズの変化も激しい。同時に、ボランティア志願者の多くは、運営者にとって初めての人々だ。つまり、支援を欲する側も支援したい側も、変化しており、そのスピードも速い。こうした状況下で、両者をマッチングするのは容易なことではない。

平常時のボランティアは、事前登録制によるマッチングが行われている。つまり、支援を必要とする団体は予め、地域の社会福祉協議会やボランティアセンター(以下、センター)に登録する。ボランティア希望者も希望する地域や活動などを記し、同じく上記に登録する。センターは両者の登録データをつきあわせて、両者の条件が一致するものを選出しマッチングする。

ところが、災害時にはこの事前登録システムは機能しない。しかも支援ニーズもボランティア志願者も時々刻々と変化してゆく。一体、どのような管理方法であればマッチングはうまく機能するのだろうか。

3. ”管理しない”マッチング方法

災害ボランティアのマッチング問題を見事に解決した事例がある。1995年の阪神・淡路大震災の時だ。現場でその様子を見たが、20年以上経た今も、鮮明にその様子が浮かんでくる。

阪神・淡路大震災では、1カ月で1万人のボランティア希望者が全国から集まってきた。「日本人にはボランティア精神がない」などと言われていた時代の中で、こぞってメディアが報じ、「ボランティア元年」という言葉が生まれたほどだ。

しかし、現場は大混乱に陥っていた。多くのボランティア希望者は、神戸市役所に向かったが、何時間待ってもボランティアの仕事がもらえない様子が伝えられた。しかし、神戸市役所も被災しており、市民の安否や公共インフラの復旧の仕事で、ボランティアまで手が回らなかったのは容易に想像がつく。

他方で、国際協力NGOや市民団体、経団連が集まり「応援する市民の会」(以下、会)を被災地で発足した。ボランティアの運営に慣れているはずの彼らも、最初はパニック状態だったという。ボランティアの仕事を求めて毎朝700人もの人々が事務所の前に並んだからだ。また、全国の企業から送られてきた物資も山積みで、にわか仕立ての倉庫には菓子の箱が積まれていた。

会の事務局は困り果ててミーティングを開いた。なかなか良いアイディアが出てこない中で、一人がポストイットを眺めていた。そして「そうだ!」と叫んだ。ポストイットを使ってボランティアの仕事を割り振ろうというのだ。彼はこう続けた。「管理しようと思ったからいけないんだ。管理しなければ良いのだ」と。

彼が提案した仕組みは次のようなものだ。まず、夕方に被災地の現場に行って、どのようなニーズがあるのか御用聞きをする。がれきをかたずけて欲しい、アルバムを探してほしい。給水車からの水を運んで欲しいなどだ。そして、この情報をもとに、どの仕事に何名ほどの人が必要かを見積もってゆく。そして、模造紙に活動の内容、場所、必要とされる人数を書き出していくのである。翌朝、長蛇を作るボランティア希望者に、ポストイットを渡し、自分の名前、性別、連絡先を記してもらう。そして、模造紙に張り出された活動を見て、どの活動に参加するかを決めて、名前を記したポストイットを貼るのだ。必要とされる人数分のポストイットが張られていれば、そこは満員。次の張り紙を探すことになる。夕方、ボランティア活動が終わると事務所に戻り、自分のポストイットを剥がして、事務局に返す。事務局は戻ってきたポストイットをもとに、ボランティアの安否を確認する。

この仕組みは、まさに”管理しない”管理方法である。どのような活動をするのかは、ボランティア自身が決める。模造紙は支援ニーズ情報を提供し、ポストイットは定員管理と安否確認の役割を果たしてくれている。つまり、模造紙とポストイットがマッチングの媒介役を果たすことによって、ボランティア希望者が自発的にマッチングする仕組みが生まれたのだ。

この仕組みのお陰で、相当数のボランティアのマッチングを可能にし、しかも事故は1件も起こらなかったという。

災害など非常時には、平常時の仕組みでは対応しえない事態が生じることが多い。しかし、その困難を乗り越え、課題を解決しようとする中から、イノベーションともいえるような工夫や知恵が生まれてくる。今年の災害対応でも、きっと小さなイノベーションが生まれているいるに違いない。

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