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「最悪」の英語教育改革が始まろうとしている

市場原理の導入や民間委託も、大概にしておいた方がいい。

2020年度から大学の英語入試の方式が大幅に変更になるそうだ。しかもその内容が、英検やTOEFLなどの民間の検定試験をセンター試験の代わりに利用するというものだという。

文科省の説明では「読む・聞く・書く・話す」の4つの技能の重視を謳う高校学習指導要領に則り、その4技能を測ることが新しい制度の目的だということだ。

ところが、それを提言した有識者会議の議事録などをよく読んでみると、早い話が「日本人は英語が話せないのが問題だ→その元凶は学校の英語教育にある→だから英語教育を変えなければならない→そのためには入試制度を変えることが一番効果的だ」という、一見もっともらしいが、実は至って短絡的な理由がその背景にあるようなのだ。

確かに日本では中学1年から高校卒業まで最低でも6年間、週4時間程度、英語を勉強している。2011年からは小学校5年生から英語の授業が始まっているし、大学でも英語が必須のところは多い。にもかかわらず、日本人は得てして英語を不得意と感じている人が多い。特に英会話については、5年も10年も勉強したのに「ペラペラ」になれていないのはおかしいと感じている人が多いのも事実だろう。

英語教育の関係者は、そのような疑問や不満を真摯に受け止める必要があるだろう。しかし、だからといって英検やTOEFLやTOEICを入試に導入することで、問題が解決するのだろうか。

入試への民間試験の導入に強く反対している英文学が専門の阿部公彦東京大学大学院教授は、そもそも日本人が他の国の人と比べて英語ができないという仮説に疑問を呈する必要があると指摘する。

確かに日本人はパーティなどで話題の中に入っていくのが不得手だ。欧米文化圏では多少文法的に怪しくても、自分から進んで話をする国の人の方が早く友人もできるだろうし、現地の文化により早く馴染めるという面があるのも事実だろう。外国人から英語で話しかけられた時、まともに受け答えができず、気まずい思いをした経験がある日本人も多いに違いない。

しかし、日本人が英会話を苦手とする理由は、単に英語のスピーキング訓練が足りていないからだけなのだろうか。阿部氏は日本語特有の論理構成の思考が英語とは異なるために、英語のテンポで会話に入って行きにくいことなど、日本人が英語を不得手とする理由については、単に「もっとスピーキングの勉強をしましょう」というよりも、もう少し精緻な検証と議論が必要なのではないかと指摘する。

そもそもわれわれが英語を勉強してきたのは、パーティでうまく立ち回るとか、道を聞かれた時にうまく答えるためだったのかどうかも、考えてみる必要がある。

学校教育で基礎的な英語力をつけているからこそ、将来、専門分野に進んだ時に、教材や論文を理解するための素地ができているという面もあるだろう。それに、そもそも話すべきネタを持っていなければ、英語ができようができなかろうが、そもそも会話の輪の中に入っていくことはできないのも事実だ。

今回の民間テストの入試への導入は、それを提言した有識者会議に当の検定試験を実施している団体の幹部や、英語教育への参入を画策する経営者などが大勢含まれており、利益相反の謗りも免れない。

現在、日本の語学教育の市場規模は年間8000億円超。そのうち英語教育が3000億円超を占めるが、これまでは英会話が主流だったのに対し、今年あたりから4年後の入試改革を視野に入れた検定試験の受験対策を提供する学校の市場規模が急拡大しているという。

もともと英会話市場自体が、「ペラペラ神話」を強調することで成り立っていた面が多分にある。「この学校に通えば、この教材を買えば、英語がペラペラになりますよ」という、いつものやつだ。ちょっとダイエット市場にも似ているところがある。ところが、遂にそれが入試にまで浸食してきてしまった。

いざ入試に採用されるとなれば、それは事実上、強制の意味を持ってくる。意味じくも文科省が強調するように、入試が変われば、高校の英語教育もそれを視野に入れたものに変わってくるのは必然だ。受験対策主導の英語教育になってしまっては、スピーキング力も含め、日本人の英語力が上がってくるとは到底思えない。

既に阿部氏が所属する東京大学では、民間の英語検定を入試の一部に採用する制度の導入に反対する意見が出始めている。改革の中身はその経緯が周知されるにつれ、今後、新制度拒否の流れが拡がる可能性も十分にある。

この改革は始まる前から失敗することが目に見えていると断ずる阿部氏と、日本人は英語ができないという「ペラペラ神話」の根拠や英語教育のあり方について、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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