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死にゆく人と家族を支える「看取り士」の仕事

【諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師】

 あなたは、どんな死に方を望んでいますか。答えがあるようでみつからないが、準備しておきたいそのときに備えるにはどうしておくのがよいのか。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、日本の看取りを変えようとする「看取り士」やホームホスピスの取り組みについて紹介する。

 * * *

   死は、すべての人にとってぶっつけ本番だ。だからこそ、人任せにせず、できるだけ準備しておきたい。特に、自分の意思を書いて、家族やかかりつけ医に示しておくことは大切だ。終末期にどこまで医療を受けたいかを示したリビング・ウィルは、以前からその必要性が求められている。

 一方、もっとメンタルな側面から本人と家族を支えようとする「看取り士」なるものも登場した。一般社団法人「日本看取り士会」会長の柴田久美子さん(66歳)が名乗り始めた肩書だ。

「最後の呼吸を腕のなかで」というスタイルで、「看取り士」が背中から抱きかかえるようにして看取る。家族がいる場合は、家族にその方法をすすめている。

 死にゆく人と看取る人の間の、お互いのぬくもりを介して、言葉ではないコミュニケーションをする。亡くなっていく人の孤独や不安に寄り添うことができるし、遺された人にはグリーフ・ケア(悲しみの支え)にもなるだろう。

「看取り士」は、ヘルパーの資格や看護師免許などのある人が、看取り士会の講座を受講すれば取得できる。利用の希望があれば、現地に飛んで行って、本人と家族の要望を聞き、介護や医療と連携しながら看取っていくという。

「豊かな死」や「自分らしい死に方」に関心が高まるなか、こうした民間のサービスが登場するのは自然の流れなのかもしれない。

 日本は、まもなく「多死時代」を迎える。しかし、日本の「死の質」は、先進国のなかで14位と低い。半数以上が「最期は自宅で迎えたい」と答えているのに対して、実際には8割近くが医療機関で最期を迎えている。

 こうしたなか、最近では、自宅と施設の間のようなホームホスピスも登場している。宮崎にある「宮崎かあさんの家」や、小平市にある「ホームホスピス楪」である。24時間の医療・看護サービスを受けながら、最期を迎えることができる。

 ホームホスピスのいいところは、病院のホスピスのようにがんの末期やHIV患者という限定がないところ。認知症でも、障害があっても、本人が望めば最後の看取りまで行なってくれる。今後はこうした多様な場が増えていくにちがいない。

 どうしたら、日本の看取りのあり方を豊かなものにできるだろうか。柴田さんは柴田さん流に闘い続けている。「看取り士」を取得した人は約350人になった。各地に研修所もでき、活動も広がっているようだ。

 兎にも角にも、この人の怖いもの知らずの生き方は、激しく生きていいんだよと言ってくれているような気がする。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『人間の値打ち』『忖度バカ』。

※週刊ポスト2018年10月5日号

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