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環境に翻弄され罪を繰り返す…少年院退院後の子どもを支援する「再犯防止」活動の実態

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二度、三度と、犯罪に手を染めてしまう子どもたちがいる。

法務省が発表した犯罪白書(平成29年版)によると、日本の少年による犯罪認知件数は年々減少している。ところが平成10年以降、増加傾向にあるのが再犯者率だ。28年、少年の再犯者率は37.1%にも昇っている。また成人の犯罪においても認知件数、再犯率ともに同じ傾向がみられるという。

日本財団による「日本財団職親プロジェクト」は2013年、こういった現状の改善を目的にスタートした取り組みだ。刑務所出所者・少年院出院者に、雇用の機会と学び直しを提供、社会復帰を通じた再犯防止を後押しする。

果たして、子どもたちはどうして犯罪に手を染めてしまうのか。また、彼らが必要としている支援とはどういったものなのか。日本財団職親プロジェクトの運営を通じ多くの出院者達に接してきた廣瀬正典さんにお話を伺った。

日本財団・廣瀬正典氏

子どもを地元に返すことで、再犯につながる?

そもそも日本財団職親プロジェクトとは、刑務所出所者・少年院出院者に対し、全国112の連携企業協力のもと、積極的に雇用を提供することで再犯防止を目指すプロジェクトだ。

法務省のデータによると、出所・出院後、仕事を持っていない人は、仕事を持っている人に比べて3倍再犯しやすいことがわかっている。仕事と住む場所を確保することで生活が安定し、再犯を防ぐことに繋がる。これに加えて、さらに重要なことがあると廣瀬さんは語る。

「日本財団職親プロジェクトでは、出所・出院した対象者を地元に帰さないんです。というのも、特に少年犯罪においては全体の23.0%(平成28年度)が少年同士の共犯によるものと言われています。悪い仲間に誘われ、断りきれずに犯罪に手を染めてしまったというケースが決して少なくありません。そういった場合、せっかく出院して地元に帰っても“よく帰ってきたな”と、もとの悪い仲間たちが待ち構えていることがあります。特に、コミュニティの中で有益な存在だとみなされていれば、離れようとしてもしつこく追いかけてこられる場合もあります。私が実際に聞いたものとしては、地方の出身の子どものケースで、出院後、東京の会社に就職しました。ところがある日、仕事を終えて会社を出ると、地元の先輩に待ち伏せされていたんです」

再犯を防ぐためには何より、悪い繋がりを断つことが重要だという。

では地元を離れた出所者・出院者は、縁のない土地で一体、どのように新しい生活の基盤を築いていくのか。鍵をにぎるのが「職親」の存在だ。

プロジェクトの対象者はまず、刑務所・少年院の中で企業担当者との面談を行う。ここでマッチングがうまくいけば、企業側が身元引受人となり、職場の周辺に新しい住まいを用意する。対象者は出所・出院するとその足で、用意された新しい家に向かうことになるのだという。

その後も企業側は、日用品購入に必要な資金を貸したり、ときには仕事終わりに食事に連れ出して話を聞いたり。単に雇用を提供するだけではなく、新しい生活に伴う衣・食・住、さまざま手助けを、さながら親のような立場で担う。提携企業を「職親」と呼ぶ理由はここにある。

BLOGOS編集部

出院後の教育を行う「中間支援施設」とは

日本財団は2015年、出所・出院後に教育を受けられる場として、全国に3箇所の中間支援施設を開設した。この背景にあるのは、廣瀬さんらが手探りでプロジェクトを開始した2013年、対象者が、せっかく就いた仕事を半年も経たずして辞めてしまうケースが相次いだことが挙げられる。

あらためて離職の理由を探ったところ、問題は仕事ができるかどうかではなく、同僚とのコミュニケーションや金銭感覚、忍耐力不足など、もっぱら仕事以外の部分にあることが分かった。ならば、それらを改善できるような、個々の課題に応じた教育を提供していくべきではないか。中間支援施設は、このニーズに応えるものだという。

「中間支援施設は、職場定着を目的に、基礎学習、生活指導、カウンセリング等を提供し、社会人としての基礎を構築する場所です。少年院を出院した子どもの中には、掛け算や割り算など、基本的な学習が身についていない子もおり、基礎学習として国語、数学、英語を教えています。ただ、学校で教わる教科教育と少し違うのは、いずれの科目でも実践的な学びが加わる点です。たとえば英語であれば、単に単語や会話だけを学ぶのでなく、意思疎通の難しい人とどうコミュニケーションを取るかという学びに繋げます。また数学の学習では、携帯電話の通話料を実際に計算してみたり、グラフにしたりするんです」

そもそも少年院と刑務所で、その位置づけが根本的に異なるということは、あまり知られていない。刑務所は懲罰のための施設であるのに対し、少年院は矯正教育を受けさせるための施設とされている。刑務所では就労支援が中心に行われるのに対し、少年院の中では教科教育や、対人行動能力向上のためのソーシャル・スキル・トレーニング(SST)といったさまざまな教育が行われている。また昨今、希望者は少年院の中で高卒認定試験を受けることもできるという。

「少年院での教育はとてもよく考えられていると思いますが、施設としての特性から、学校などの一般的な教育機関とは大きく異なる点があります。たとえば私語です。入院者同士の私語は、少年院では一切禁止されています。出院後に横の繋がりができてしまうと、再犯に繋がりかねないためです。また教官も、一人で大勢の子どもをみます。そういった事情から、どうしても少年院の中の教育だけでは十分な教育がなされない場合も出てきます。私達のプロジェクトではこの点を補っていくことを目的としています」

BLOGOS編集部

大人の顔色を伺う子どもたち

5年にわたり少年院の子どもたちに接してきた廣瀬さんは、彼らの印象についてこう語る。

「子どもたちと話をすると、大人の顔色を伺うことに長けている子どもが多いように感じます。一体なぜかと、彼らの育った環境に目を向けてみると、虐待を受けていたり、親がほとんど家にいなかったり、家にはいても、教育やしつけがなされていなかったり、機能不全の家庭で育っているケースが決して少なくありません。職親プロジェクトの対象者から聞いた話でも、本心を隠しながら、叱られないような態度を取ろうとしてきた子も複数おりました。また振り込め詐欺の受け子のように、子どもが大人の犯罪の一端を担がされている場合もあります。上手に大人の顔色を伺うというのはある面で、そんな子どもたちがやむを得ず身につけてきた、生き延びるための知恵なのかもしれません」

ところが、相手の顔色を伺い、期待通りの返答をしようと思うあまり、瞬間的に発せられた言葉が、必ずしも本音や真実でない場合がある。こういったことが、結果として後々のトラブルにも繋がりやすい。

「さきほどもお話したように、企業の方は、対象者の雇用に際し、時間的にも経済的にも、かなりの負担を負っています。それもひとえに、なんとかその子の力になってあげたい、更生させてあげたいと願ってのことなんですが、残念ながらそんな企業の方に対して、嘘をついたり、約束を破ったりというような行為が子どもの方にみられることもよくあります。期待し、信じてくださっていただけに、企業の方の落胆も大きいです」

企業側と対象者とが、長く強固な信頼関係を築いていくことは、離職を防ぎ、ひいては再犯を防ぐことに繋がる。そのため、日本財団職親プロジェクトでは職親と対象者間に起きるトラブルへの対応にも力を入れている。そのうちの一つが、提携企業向けに隔月で開催される連絡会議だ。ここでは出所者・出院者を受け入れた提携企業が集まり、それぞれの抱える課題や、課題をどのように解決したかといったノウハウが共有されるという。

さらに、先述した中間支援施設も重要な役割を担っている。

BLOGOS編集部

「ある子どもは、給料日を待たずにいつもお金を使い切ってしまい、雇用主の方に何度も給料の前借りをしていました。そこで中間支援施設の方で、なぜお金を使い切ってしまうのか聞いてみたんです。すると、後輩にどんどん奢っていたからだということが分かりました。原因がわかれば、次はそれに対してどうすれば良いのか、自分で考えて答えを出すように導きます。こういった対応を通じて、その子のお金の問題は徐々に改善されていきました」

中間支援施設での教育には、“支援”と“指導”という2つの軸を設けているという。対象者が、まずは課題を解決したいという気持ちに寄り添うように“支援”し、次に、解決するためにはどのようにしたら良いか。教えられるのでなく、本人が考え、答えを出せるように“指導”する。答えを教わるのでなく、答えを自分の中に見つける訓練を積むことで、子ども自身がその後も長く活用できる、生きる力を育んでいく。

企業の側が根気強く対応すること、また本人が自分の課題を主体的に解決しようと取り組んでいくことで、信頼関係は確実に深まっていくという。実際に、中間支援施設での教育やカウンセリングを継続的に提供した結果、出所者・出院者の定着率(※6ヶ間仕事を辞めずに続けた人の割合)は、当初の30%台から70%台へと、大きく上昇したという。

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家庭、学校…犯罪に紐付く、さまざまな社会課題

日本財団職親プロジェクトでは、今日にいたるまでの5年間で154人の対象者(※青年・少年含む)が職親企業に就職してきた。現在は職場定着を通じた再犯防止に向けて、矯正施設内での新たな取り組みを官民合同で実施している。今後も、刑務所・少年院の中で行う教育プログラムの拡充や、中間支援施設でのケアプログラムの拡充など、さまざまな展開が予定されているという。

最後に、犯罪が決して身近にはない社会の多くの大人たちに向けて、廣瀬さんが伝えたいことを聞いた。

「私が出会ったある少年は、窃盗の罪で少年院にいました。よくよく話を聞くと、両親ともに亡くなっていて、祖母のもとで育てられていました。そこで満足に食事を提供されず、空腹に耐えかねてパンと牛乳を盗んだそうです。窃盗は犯罪ですから、決して許されることではありません。ですが彼にもし、十分な食事が与えられていたら、またきちんと養育してくれる大人が側についていたら、彼は犯罪に手を染めていたでしょうか。一つの犯罪の裏には、家庭の問題や学校の問題、また反社会的勢力の問題など、さまざまな社会課題が紐付いています。“犯罪者”と聞くと、多くの方は自動的に怖い人を連想すると思いますが、ぜひもう一歩踏み込んで、なぜその人が犯罪を犯してしまったのかということに思いを馳せていただけたらと思います」

[ PR企画 / 日本財団 ]

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