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人工胎盤や人工子宮、生殖技術は人間を「消滅」させるのか - 塚越健司 (拓殖大学非常勤講師)

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 前回はAmazonの顔認識ソフトからアルゴリズムの偏見、そして情報銀行について議論した。アルゴリズムによって、現実の自分とネットワーク上の自分が乖離するという現象は、今後ますます増えていくだろう。簡単な解決法が存在しないが故に、その動向に注意する必要がある。

 今回は人工胎盤や人工子宮といった、近未来の生殖に関わる技術について論じたい。昨今の技術発展にはめまぐるしいものがあるが、スマホのように、その利便性から急速に普及するものもあれば、技術的には可能であっても受け入れがたいものもある。技術が受け入れられる過程では、なし崩し的に普及するのではなく、慎重に議論を重ねなければならないものもある。今回は小説を読み解きながら、生殖技術について考えたい。

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3Dプリンターで作成する「人工胎盤」

 3Dプリンター技術の発展は、金属を空中にプリントしたり、薬品のプリントも可能とする。そんな中ウィーン工科大学の研究者達は、3Dナノプリンターと生体高分子で「人工胎盤」を再現したと報告した

 胎盤は母体と胎児をつなぎ、へその緒を通して酸素や栄養、さらに二酸化炭素や老廃物のやりとりを行う重要な器官だ。母体が疾病を抱えていた場合、それが物質のやりとりの中で胎児にどのような影響を与えるかは非常に重要であるが、これまで胎児と母体の物質のやりとりを調査することは、胎児の命に関わることから行うことが困難だった。

 そこで研究者達は、特別に開発された3Dナノプリンターを用いて、胎盤と同様の構造をもった生体高分子膜をマイクロ流体チップの中に再現し、これによって本物の胎盤同様の物質のやりとりが確認されたという。この研究によって血圧や血糖値、薬物が胎盤に与える影響を研究できる他、胃や腸といった生体膜を介した物質輸送の分野にも、この技術が応用できるという。人工胎盤によって、これまで以上に胎児や母体の安全が確保されることに期待したい。

 ところで、人工胎盤が広義の生殖に関わる研究だとすれば、これによって生殖技術がまた一歩前進したことになる。昨今はさらに、「人工子宮」の開発も進んでいる。

人工子宮によって生きる羊

 2017年、アメリカで行われた人工子宮の実験が発表されると、その特殊な画像と共に実験は大きな反響を呼んだ。実験は早産によって生まれ、生存確率50%を切り生命の危機に瀕している羊を羊水で満たされたビニール袋に入れて育成するというもの。実験に選ばれた8匹の羊は人工子宮内で4週間生存し、うち1頭は一歳を過ぎて健在だという。公開された画像は、ビニール袋に入れられた時の羊と、4週間を経て大きく、皮膚の色も変わった羊が比較できるものとなっている(気になった読者は画像を確認して欲しい)。

 この人工子宮はあくまで緊急時の医療器具という目的で実験が進められているが、技術的にはまだまだ困難が伴うにせよ、人間に適用したり、また早産以外の目的で用いることは可能なのか、という可能性を期待する声もある。例えば、母体ではなく人工子宮の中で子供を育てる、といったように。

 周知のように、生殖に関わる研究は生命倫理や世論等、様々な観点から議論されなければならない。人工子宮が人間に適応できるような技術が登場するにせよ、それらが実際に活用されるかどうかはわからない。

 とはいえ、だ。遺伝子編集技術「クリスパー」の登場によって遺伝子編集技術が発展する昨今、ヒト胚に対する遺伝子編集も現実味を帯びてきた。子供の運動能力や身体的特徴、寿命を事前に設計するといったいわゆるデザイナーベイビーなどへの懸念から遺伝子編集に慎重だった各国も、2017年2月に米科学アカデミーが人間に対する遺伝子編集の方針を発表したことで風向きが変わってきた。この方針ではデザイナーベイビー等の能力強化は許されないものの、基礎研究に限定する限りでヒト胚に対する遺伝子編集が認められる可能性があるとした。もともと中国ではこの方針発表前から研究を行っており、また前述の米科学アカデミーの発表にはアメリカ以外の各国の専門家も携わっていることから、国際的な動きとして遺伝子編集が加速することが予想される。その後2017年7月には、アメリカでヒトの受精卵を用いた遺伝子改変実験を行ったことが報じられた。

 遺伝子編集技術は今まさにその問題が問われている最中の技術だが、技術発展に伴い、我々の感覚も変化していると言えるだろう。例えば体外受精や代理出産といった不妊治療に関しても、技術が登場した時点では反対の声が多く聞かれたが、現在では(治療の度合いにもよるが)批判を浴びることは相対的に減少しているように思われる。こうした技術が受け入れられた背景には、法や安全性の徹底といった不可欠の要素だけでなく、技術環境が整備される中で、時間の変化とともに世論もまた変化してきた側面を認めないわけにはいかない。

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