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20世紀文明論(20):生活革命①少子化・・・⑧

 今朝、NHKで故菅野仁さんの『友だち幻想』(2008年)を取り上げていた。本の帯には、「『みんな仲良く』という重圧に苦しんでいる人に」と書いてあり、著者は「無理に仲良くしなくいい」というメッセージを伝えている。

 21世紀になっても、標的にした者を「仲間はずれ」にするといういじめが続いている。

 いじめは、日本の子どもたちに特有なものであり、その特異性を説明する要因として、攻撃性の低下という考え方は有効である。

 いじめが本格的に社会問題化したのが、昭和50年代、10歳代の青少年の攻撃性が低下し始めたのも昭和50年代である。登校拒否もまた間接的な攻撃形態のひとつであり、平和ボケの戦後日本がいじめという病理を生みだしたのである。

 攻撃性の低下に加えて、少年の凶悪犯罪を説明する第二の要因として、テレビやコンピューターの影響をあげたい。これらの機器は、ヴァーチャル・リアリティ(仮想現実)を作り出すが、それと現実との区別がつかない子どもが出てくる。

 いまでは、スマホが広く普及し、仮想現実を生むアプリも多数ある。極端に単純化して説明すると、たとえばテレビやコンピューターやスマホの画面で繰り広げられる戦闘ゲームと本当の戦争を混同する。キーボードなど、指先の操作一つで、画面上の人物を刺し殺すことも撃ち殺すこともできる。しかも、血が流れるわけではないから、殺される相手の苦痛は分からない。

 生身の人間であれば、血も出れば、うめき声もあがるので、その痛みが分かるだろう。たとえば、野山で遊んでいて転んだりすれば、血が流れることの痛みが理解できる。しかし、ヴァーチャル・リアリティでは、そうはいかない。

 1997年に神戸で小学生を殺害した14歳の少年は、犯行声明で、「ボクには1人の人間を2度殺す能力が備わっている」と記した。これこそ、仮想現実の世界に生きる人物の発言である。彼は、自己の空想を膨らませて、その中で自己満足を遂げていったのである。

 NHKが集めた14歳の生の声に、次のような東京都の男子の発言がある。

 「ゲームは現実の世界では味わえないことが体験できて、気分がスカッとする。ゲームって嫌なことがあったときの逃げ場になるんだ。・・(中略)・・今のゲームは、ストーリー展開を選択できるんだ。すると、自分が主人公になった気分で、ストーリーを作っていくことができる。主人公兼小説家になったみたいで、胸がドキドキ、ワクワクする。現実社会では、そんなに興奮することってあまりない。」

 この告白は、子どもたちにとって仮想現実がどんな意味を持っているかを雄弁に語っている。

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