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【読書感想】イスラム教の論理

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イスラム教の論理 (新潮新書)
作者: 飯山陽
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2018/02/15
メディア: 新書
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Kindle版もあります。

イスラム教の論理(新潮新書)
作者: 飯山陽
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2018/02/23
メディア: Kindle版
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内容紹介
神の啓示の言葉を集めたコーランによれば、異教徒は抹殺すべき対象である。彼らを奴隷化することも間違っていない。ジハードは最高の倫理的振る舞いである。その意味で、カリフ制を宣言し、シャリア(イスラム法)によって統治し、ジハードに邁進する「イスラム国」は、イスラム教の論理で見れば「正しい」のだ──。

気鋭のイスラム思想研究者が、コーランを典拠に西側の倫理とはかけ離れた「イスラム教の本当の姿」を描き出す。

「イスラム国」は、2017年にイラクのモスルとシリアのラッカという二大拠点を失い、その勢力は弱体化していると伝えられています。
まあ、「世界」が本腰を入れれば、こうなるよな、と僕は思ったのですが、著者は「イスラム国」という地域が失われても、「イスラム国」が主張していたイスラム教の理想が全世界のイスラム教徒をひきつけつづけることには変わりはない、と述べています。

イスラム教徒にとっては国境も国民国家も民主主義もグローバル化も、所詮は「人間の産物」にすぎません。しかしイスラム教はそうではありません。イスラム教徒にとってのイスラム教は、神が人間に恩恵として与えたものです。神の恩恵であるイスラム教が、人間の産物である民主主義に優越するのは、彼らにとっては「当然のこと」です。

私たち人間には「確かな真実」がわからないのに対し、神は全知全能だからです。私たちは未来の世界について想像することしかできません。しかしイスラム教徒にとっては、いつか神の法が世界を統治する日が必ずやってくるというのが確定された未来です。なぜなら彼らは、全知全能の神が世界をそのように創造したと信じているからです。

世界には様々な価値観を持つ人がいます。その中には私たちにとって好ましく、憧れの対象となるような人々もいれば、全く関わりたくないような人々もいます。私たちは一般に、それを「多様性」という言葉で肯定的に受け入れます。しかし世界にはこの「多様性」を否定的に捉え、世界はひとつの価値観に収斂されなければならないと考える人々もいます。

イスラム教という宗教は後者に属します。イスラム教徒ではない人にとってあまり嬉しいことではありませんが、それが事実です。イスラム教徒は従来の国家や地域の枠組みを越えた地球規模の拡大を目指すという意味では確かにグローバル化を志向しますが、それは私たちの考えるグローバル化とは全く異なるものなのです。

私はイスラム法の文献読解とフィールドワークを通して、イスラム教徒自身がイスラム教をどのように認識し論じてきたかについて研究してきました。本書はそれらを踏まえた上で、現代のイスラム教徒にとって世界はどのように見えているか、そしてそれは私たちの世界認識とどのように異なっているかと、具体的な事例から解き明かす試みです。

僕はけっこうイスラム教やキリスト教に関する本を読んだり、日本で生活しているイスラム教徒、あるいは、中東のイスラム教徒のなかで生活している日本人が書いたものに触れたりしてきました。

それらのなかでは、「イスラム教は基本的に平和な宗教であり、異教徒に対しても(とくにキリスト教やユダヤ教については)比較的寛容で、自爆テロを起こすような人々は、過激な狂信者なのだ」と言われていることが多いんですよね。

しかしながら、イスラム教徒が多い国では、「イスラム原理主義者」たちが支持されて政権を握ったり、アンケートでアルカイダのテロを支持する人のほうが多数派だったりしているのも事実です。  

2017年6月、オーストリアのイスラム教指導者たちがイスラム過激派テロに抗議する「反テロ宣言」に書名し、「イスラム教は平和の宗教であり、イスラム過激派やそのテロ活動はイスラム教の教えとはまったく一致しない」と高らかに宣言しました。ヨーロッパのイスラム教指導者たちがこうした宣言を行うのは、初めてのことです。

この宣言は冒頭で、「人を殺した者、地上で悪を働いたという理由もなく人を殺す者は、全人類を殺したのと同じである」というコーラン第5章32節を引用し、「イスラム国」は「我々の平和的宗教であるイスラム教を自身の政治的目的を達成するために悪用している」と非難しました。

しかしこの宣言にあるように、本当に「イスラム国」を初めとするイスラム過激派はイスラム教に反しているのでしょうか。
「イスラム国」の指導者バクダーディーは、2014年7月カリフとして初めて行ったモスルの大モスクでの説教において次のように述べています。

「神は我々に紙の敵と戦うよう、神の道においてジハード(聖戦)をするよう命じられた。それは宗教(イスラム教)を成就させるためである。至高なるお方(神)はこうおっしゃった。『あなたがたには戦いが定められた。だがあなたがたは戦いを嫌う(コーラン第2章216節)』。至高なるお方はこうもおっしゃった。『騒乱がなくなるまで戦え。そして宗教すべてが神のものとなるまで(戦え)(コーラン第8章39節)』」

結論からいうと、この説教内容はイスラム教の教えに反してなどいません。なぜならこの説教が典拠としているのは「神の言葉」とされるコーランであり、コーランの章句に立脚していればそこから導かれる複数の解釈はすべて等しい価値をもつ、というのがイスラム教の教義だからです。どの解釈が最も正しいのか、あるいは間違っているのかを判断、決定する権威者や機関はこの世には存在しません。

人間には本当のことはわからず真実は神だかがご存知、というのがイスラム教の大原則であり、解釈が複数存在する場合にどの解釈を採用するかは個人の選択に委ねられています。

つまり共にコーランに依拠してはいても相反する主張をしている「反テロ宣言」とバクダーディーの説教との勝負は、イスラム教の論理では引き分けとなるのです。「反テロ宣言」で引用されているコーラン章句が否定のできない「神の言葉」であるように、バグダーディーの説教で引用されているそれも「神の言葉」なのです。

しかし一方で私たちは「反テロ宣言」には納得し同意できるものの、バグダーディーの説教には納得も同意もできません。なぜなら前者は私たちの常識に近いため理解可能であり、後者はそれとは隔絶しているため理解不可能であるわけです。

私たちはイスラム教の教義や論理について全く知らないにもかかわらず、私たちの価値観に反しない理解可能なイスラム教徒だけが「正しい」イスラム教だと決めつける傾向にあります。

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