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不正防止に向けた情報共有の巧拙は「情報受領者」で決まる

本日は、日弁連のある委員会に招かれまして、内部通報制度に携わる弁護士からのヒアリングということで外部窓口業務や内部窓口支援の様子などをお話いたしました。

本日のご質問にもありましたが、従業員の方々に、どうすれば内部通報を促すことができるのか(内部通報のハードルを低くすることができるのか)…という点は、本当にむずかしい課題ではあります。スルガ銀行の第三者委員会報告書でも、これだけ多くの不正行為が校内で頻発していたにもかかわらず、なぜ行員は内部通報をしようとしなかったのか、という点に関心が向けられていました。

産地偽装等、企業にとっての重大な不正が発生しても、内部通報制度が機能して早期に発見できた事例も経験しましたが、個社名を挙げてご紹介することは、さすがにできません。ただ、一般論として言えることは、内部通報制度の運用の「権限と責任」が明確になっている企業については、とても通報件数が多いという傾向があります。

つまり、通報があった場合に、誰が責任をもって対応義務を負うのか(誰が具体的に対応するのか、という問題ではありません)、その責任者は、不正を止める権限を実際に行使できる立場にあるのか、通報者が不利益処分を受けないための人事権が行使できるのか、という点が内部通報制度上明確になっている企業のケースです。

よく企業不祥事は発生しますと、再発防止策として「不都合な事実についても情報を共有できる体制作り」が提案されます。そうしますと、具体的には一般社員が研修等において「不都合な事実でも正直に報告せよ」と言われ、一般社員に情報共有の内部統制が敷かれます。

しかし、これでは何ら問題解決にはならないと思います。むしろ情報共有の責任は中間管理職の姿勢にあります。製造や営業、研究開発や安全(品質)等、企業業績に関わる報告は、誰が言わずとも下から上に上がります。しかしコンプライアンスやCSRなど、「今日も一日、何も起きなかった」「それはすばらしい!」とは評価されない事項については、そもそも中間管理職に明確な責任と権限が付与されていなければ報告事項としての優先順位はかなり下がってしまいます。

「売上や利益の向上につながらない部署だけど、今度のコンプライアンス・CSR担当役員は創業家出身の○○さんらしいよ」「あの〇〇さんが内部通報も担当して、全件報告を受けるらしいよ」といった制度改革だけで、中間管理職の方々の内部通報制度に関する権限と責任が明確となり、一般社員がコンプライアンス研修を受けずとも通報件数が飛躍的に伸びたことがありました。

つまり不正リスク管理の一環としての情報共有は、情報を伝達する社員への働きかけも大切ではありますが、情報を受領する側への働きかけのほうが即効性があると考えます。

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