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"安倍首相とご飯食べた自慢"する人の悲哀

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昭和の終わりから平成の初期にかけての「ポストモダン」のブーム。それぞれが自分の好きなことをやればいいという当初の楽観は、いつしか実生活から乖離した「政治の記号化」を招いた。その結果、保守系団体は「安倍首相とご飯を食べた」という自慢に終始している。本当の保守とはなにか。政治学者・藤井達夫氏と近現代史研究者・辻田真佐憲氏の対談をお届けしよう――。

※本稿は、藤井達夫『〈平成〉の正体 なぜこの社会は機能不全に陥ったのか』(イースト新書)の一部を再編集したものです。

■記号から離れるために

【辻田】昭和の晩期から平成の初期にかけて、「大きな物語の終焉」がよくいわれました。ポストモダンのブームが起こり、記号の戯れが肯定的に捉えられていた。「日本人は記号との戯れにもっともよく適応できるんだ」という風にいわれていましたよね。

【藤井】そういう明るい空気で平成は始まったはずでした。大きな物語は人々を拘束し、息苦しさを生み出します。それが終焉し、それぞれが自分の好きなことをやっていい。差異こそはすばらしい、と。

【辻田】記号との戯れを、ファッションでやっているうちはよかった。ところが政治に結びついてしまったのが問題です。政治的な言説は刺激的なので、そこをゲームにしてしまうと危険です。まずは政治と記号が結びついたときのリスクを自覚して、一定の距離を取ることが必要でしょう。右派も左派も記号の応酬から離れた上で、自分たちなりの考え方を実感のこもった形でつくっていかないといけません。

【藤井】そこには難しさがありますよね。ますます実生活と理念やイデオロギーが乖離していく時代です。左翼方面からいえば、ある一部の人々は、一九七〇年代以降、日常の生活の場に戻り、自分たちの生き方を見つめ直すことで、エコロジカルな生活を自らの手で切り開いていきました。そうした人たちは八〇年代のチェルノブイリ原発事故に敏感に反応し、日本でも母親たちを中心に原発の問題が注目されました。こうした流れが源の一つにもなり、2011年以降の脱原発運動という、新しいムーブメントが生まれた。

じゃあ右翼や保守はどうなのか。生活とイデオロギーが乖離させられるような状況が多い中で、どのような可能性があるのでしょうか。

【辻田】福田恆存が、保守とは「横町のそば屋を守ること」といっていますよね。保守は主義じゃなくて態度だと。むしろ生活実感から離れた大きな国家を考えてしまうほうが左翼なのです。

パソコンに向かって保守を熱く語っている人間が、隣家の人間としゃべったことのない状態はおかしい。コミュニティーの重視については右派左派ともに注目されていますが、手と足が届くコミュニティーに参加し、記号とのバランスを取ることが重要だと思います。

■「コミュニティーの復興」という活路

【藤井】保守主義の可能性はそこにありますよね。今はいきなりナショナリズムに飛躍していますが、保守主義はもともと地域や郷土、家族、コミュニティーと結びついたものです。

アメリカの場合、オバマ前大統領はコミュニティー・オーガナイザーの仕事にかつて従事していました。コミュニティー・オーガナイジングは一九三〇年代に生まれた左派の運動です(その創始者であるソウル・アリンスキーは自らをラディカルと呼んでいますが)。資本主義によってコミュニティーが破壊され、犯罪と貧困の巣窟になってしまった。そこでコミュニティーの力で自分たちの問題を解決しようとする動きが生まれました。

このような運動は保守系・右派団体もやっていて、ゼロ年代の終わり頃からティーパーティーが話題になりました。この保守系集団も左派のコミュニティー復興運動の手法を学んでいるのです。

日本でも子ども食堂のような流れがあり、自分たちのコミュニティーを守っていこうとしています。これは右派も左派も共通の課題として掲げられる論点です。

【辻田】派手ではないし、面倒な道ですが、肉体を動かし、直接人と会わなければ、記号の応酬から逃れられないでしょう。

【辻田】今はあまりにも記号化されすぎていて、指導者と国がイコールになっています。先日の米朝首脳会談が象徴的ですが、トランプにアメリカが、金正恩に北朝鮮が象徴されていて、どこでなにを話したのか、どんなものを食べたのかさえ、一挙手一投足が報道されました。

しかしあれは一種のプロパガンダです。ひとりの指導者が国をコントロールすることはできません。実際にはその下に官僚機構があって、利害関係者がいて、さまざまな調整の中で物事は決まっています。それなのに、あたかも個人でなにかを達成したかのように報道されている。本来は複雑なはずのものを、その人のパーソナリティーや面白さに還元している面があります。

記号が暴走しがちな時代だからこそ、コミュニティーのように目の前のもっと複雑なものに触れ合う機会が必要ですし、その下にあるさまざまな利害関係を見る訓練をしておかないといけません。

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