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「除染がうまく行くとは思えない」飯舘村の酪農家が怒りの訴え

都内で記者会見をする長谷川健一氏

 高濃度の放射線汚染で、全住民が村外へと避難している福島県飯舘村。当地に住んでいた酪農家、長谷川健一氏(58)が2月20日、自由報道協会主催の記者会見を行った。長谷川氏は飯舘村前田地区の区長で、地域の取りまとめ役。原発事故直後に購入したビデオカメラで村の様子を克明に記録し、全国で講演活動をしている。20日に宝島社から単行本「原発に「ふるさと」を奪われて 福島県飯舘村・酪農家の叫び」を上梓したことを受けて、被災当事者の視点から政府・行政の取り組み方を激しく批判した。【写真・文:安藤健二(BLOGOS編集部)】

安全と安心は違う


 長谷川氏は悲痛な表情で、飯舘村で進められつつある除染作業(放射性物質を地表などから取り除くこと)について、以下のように批判した。

「政府は住環境を2年、農地を5年、山林を20年で除染をすると言っています。山林は里山しかやらない。住居の近くだけなんです。そうした場合にどうでしょう。放射性物質は浮遊しているんです。飯舘村の75%は山なんです。いくら住環境や農地を除染してもまた流れてくるんじゃないかという気がするんです。でも、今、村ではまっしぐらに除染という方向に進んでいます。私はそれに対して、『それじゃダメだ!村民の声を聞こうじゃないか』と訴えています。飯舘村だけが村民アンケートを取っていないんです。除染するなら村民の声を受け止めた上で、やらなきゃダメだと言ってるんですが、聞き入れられないんです。

もちろん除染するというのは本来は当たり前のことなんです。私だって、もといた土地に戻りたい。だけども、最悪のシナリオだって想定しなきゃいけない。そうしたら村を離れるというシミュレーションを今からしとかなきゃダメなんだろうと思います。

もし、4~5年かけて除染した後に『これではダメだった』となったときに、その4年なり5年の月日はどうなるのか。

国でも村でも除染、除染の一辺倒で進んでいます。私は除染なんてうまく行くとは思ってはいません!飯舘村の放射線量が10マイクロシーベルトより下がったら、国が『帰っていいよ』って言うかもしれない。でも、私より上の年代は戻るかもしれないけど、私より下の年代を戻そうとは思わない。若い人達が子作りや子育てできるような環境じゃない。

もし、私が戻ったとしても何も農作物は作れませんよ。国は『安全だ』と言っても、放射性物質がゼロになるまで安心はできない。安全と安心は違うと思うんです。我々農家は安心な物を消費者に届ける義務がある。それができないんです。そうなると、飯舘村では農家は無理なんだろうなと。私たちが村に戻ったときに、村が終わりになるのかな、とそういう思いがするんです。

ですから、(山形県の牧場に勤めている)息子が『山形で(自分の)牧場をやりたい』という話にもしなったら、私は止める気はありません。私だって息子と供に、孫と遊びながらこれからの生活をしていきたいと思う。そうなれば、村を捨てて息子らのところに寄ってくのかなという気もするんです。飯舘村の人もいろいろな考えがありますけども、アンケートを取らないから正確な結果としては分りませんが、(私の印象として)『帰れねえべな』と思っている人は多いのが、今の飯舘村の現状です。

彼は旅立っちゃった


相馬市の男性が生前に壁に残した書置き
原発事故から3ヵ月後の2011年6月、隣接する相馬市で酪農を営む50代の男性が、「原発さえなければ」などと書き置きを残し、首をつった状態で死亡していたことに触れる場面もあった。長谷川氏はこう振り返った。

「彼は私の友人です。一番恐れていたことが起きたわけです。『原発さえなければ』という書き置きを残して彼は旅立っちゃった。『原発さえなければと思います。残った酪農家は原発にまけないで頑張ってください。先立つ不幸を。仕事をする気力をなくしました』。このような書置きでした。彼には5歳と7歳の息子がいました。その中で、私も彼に何もしてあげられなかったと、無念な思いが今もあります。

訃報を知ったときは、彼の家に吹っ飛んでいったんですね。『まさか嘘だろ』って思っていましたが、彼が布団に横たわっていた。それでも信じられずに、顔にかったシーツをはぐとやっぱり彼だったと。『馬鹿野郎!』って叫んだんだけど、彼は帰ってこない。

彼にもいろいろな事情があったにせよ、その事情のもとを辿れば発端は原発なんですよね。『原発さえなければ』という言葉が頂点なんですよ。『原発さえなければ何とかやりくりしてやれたんだ』という思いが、非常に入ってるなと。そんな感じがするんですけどね。

私も飯舘村の酪農家を守ることで精一杯で(相馬市の)彼のところまでいけなかったのも残念に思っています」

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