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ブロッキング制度はネット賭博にも適用せよ

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そもそもブロッキング法制を論議するにあたって、著作権侵害を全面に立てることは実は非常にスジが悪いんです。各出版社を中心とするブロッキング推進派は「海賊版サイトには、実質的な対抗手段がないのでサイトブロックを実施すべきだ」などと主張しているわけですが、実態として本当に対抗手段がない「わけではありません」。

著作権は1986年に締結されたベルヌ条約(168カ国の加盟)および、1952年に締結された万国著作権条約(100カ国の加盟)によって国際的な保護の枠組みが作られており、世界の大半の国と地域の間で権利の相互保護の関係が構築されています。例えば、あらゆる日系企業の中で「最強の法務」を抱えるとして名高い任天堂などは、海外における著作権侵害に対して国境を越えて堂々と差し止め請求を行っているわけで「対抗手段がない」わけではありません。

【参考】数々のファンメイド・ポケモンゲームを生み出した「Pokemon Essentials」が任天堂の著作権侵害申し立てにより閉鎖へ
https://gigazine.net/news/20180830-nintendo-shut-down-pokemon-essentials/

要は、各出版社を中心とするブロッキング推進派が「実質的な対抗手段がない」などと言っているのは、実は「海外で訴訟を起こすのは面倒臭く、金もかかるのでやりたくない」と主張しているに過ぎず、それこそ海賊版で受けた被害額が3000億円に及ぶのだなどと莫大な損失を主張をするのならば(参照)正々堂々と著作権侵害の申し立てを行なえば良い。その様な存在する対抗手段を採らずして、一足飛びにブロッキング法制を持ち出したり、政府の威光を借りて超法規的に各ISPに対してブロッキングを強要したりするなどというのは、スジ悪以外のナニモノでもないといえるでしょう。

一方で、世界の多くの国や地域においてブロッキング法制の最大の対象となっているオンラインカジノやギャンブルは、実は文字通り「実質的な対抗手段」がありません。我が国の領域内から海外で運営される賭博サイトにアクセスし、ギャンブルを行うことが違法であるということは、私と私の友人の渡邊雅之弁護士が2013年に起案して実現した質問主意書への政府回答によって明確化されました。

【参照】ファイナルアンサー: オンライン賭博は違法である
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8134166.html

ところが、検索サイトで「インターネットカジノ」というキーワードで検索して頂ければ、日本語で提供されるあらゆるネット賭博サイトが未だ大々的、かつ堂々と営業を行なわれていることで解るとおり、未だそのような違法行為の蔓延は一向に止まる気配がありません。その理由は、非常に簡単でネット上に存在する多くの賭博サイトは、フィリピンやヨーロッパ諸国、カリブ諸国など、インターネット賭博を合法としている国や地域において政府公認のライセンスをもって運営している適法事業者だから。彼らが提供している事業そのものは各国、各地域の法律に基づいて適切に行なわれているものなのであって、そこに対して日本側からサービスの差し止め等を求めることは出来ない。即ち、著作権侵害と違って、日本側からその様な各種サイトへのアクセスブロッキングをする以外に、文字通り実質的な対抗手段がないわけです。

また、著作権侵害を根拠としたブロッキング法制は、その対抗措置としての「非対称性」の面でも問題が大きいです。海賊版マンガへの著作権法の適用は、原則的に著作権者に無断でコンテンツをアップロードした側の人間になされるものです。一方でそれを閲覧する側の利用者に関しては、それが違法アップロードされているものであると明確に認知しながら利用する場合に以外には、モラル上の問題はあったとしてもそこには原則的に違法性はありません。

一方で、そこに現在政府が検討しているような全てのインターネットユーザーのネットアクセスにブロッキングをかけることは、本来ユーザー側が憲法上で保護されている筈の「通信の秘密」の侵害を受けることになってしまうワケで、違法行為をやっているワケでもないユーザー側の権利制限を行なうものとなっている。著作権侵害の対抗措置としてはあまりにも非対称すぎる措置であるといましょう。

一方で、インターネット賭博の場合はこれとは全く違う構図となります。先述の通り刑法185条に定められる「賭博の禁止」は、我が国の領域から海外で提供されるインターネット賭博を利用した利用者自身に適用されるもの。即ち、その行為が違法であるにも関わらず自由に海外のインターネット賭博に参加できてしまうという現在のインターネット環境は、刑法犯罪者を国内に蔓延させる一要因となっているともいえます。勿論、だからと言って忽ちインターネットユーザー全員の通信の秘密を侵すことが許されるというワケでは有りませんが、少なくとも対抗手段としてそこに明確な非対称性がみられる著作権侵害に対するブロッキングよりは、制度としてスジが通っているものといえるでしょう。

という事で現在、なぜか知財本部を中心に論議が進められているブロッキング法制論でありますが、もし海外海賊版サイトのブロッキングが許されるのであれば、少なくとも同様の法理で海外から提供されるインターネット賭博サイトに対するブロッキングも実施の対象に含むべき。ましてや、今語られているような著作権法の改正によって小手先で知財のみを対象とした制度を作ることなど許されない。もしそれをやるのであれば、より広い検討を行なった上で電気通信事業法側の改正で対処すべきであると、私の立場からは申し上げて起きたいと思います。

本件に関してはギャンブル側の専門家の立場から、引き続き言及を続けてゆきたいと思います。

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