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流動性相場の行方はミニバブルの破裂?

ずっと取りかかっていた仕事がやっとヤマを越えた。欧州債務危機が泥沼化している中で、なかなかブログを更新できなかったが、これからは少しずつ以前のペースに持っていきたいと考えている。ただ、あらかじめお断りしておくが、このブログは、あくまでも長年この仕事をしてきた私が、その時々のニュースで感じたことを一方的に書いているにすぎない。サブプライムローン危機を契機に、未曽有の経済危機に陥った世界経済に対して、すこしでも一般の投資家や読者が参考にしていただければと考えて書いているものにすぎない。

というわけで、最近の日本を含めた動きは潮目がやや変わってきたのかな、という印象を受ける人も多いのではないだろうか。日米共に株式市場は好調だし、ドル高円安も進んできた。その原因は、米国経済のファンダメンタルズの好転であったり、日銀のインフレターゲット1%を含めた金融緩和政策なのだが、手放しでこれらの変化だけで、いま世界経済が抱えている様々な問題を解決できると考えている人は少ないはずだ。

現在の金融マーケットの活況は、いわば「流動性相場」と言われるものだが、ECB、FRBそして日本銀行が市中に資金を大量に供給して、その余った資金が株式市場や商品市場に流れ込んで株高が進行している。ヘッジファンドなどのリスクマネーは、リスクオンに切り替えており、日経225先物の「コールオプション」も9000円の建玉が約7万枚まで膨らんでいる状態だ。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE81K2PT20120208

しかし、過剰流動性の行く末は極めて単純だ。リーマンショック直後の経済危機から立ち直るために、米国政府やFRBが実施した経済政策が、その後、流動性相場を引き起こして原油価格が急騰し、金価格が暴騰したことは記憶に新しい。結局、その流動性相場は金融政策の終焉とともに、再び株式市場や原油価格は下落。結局、米国政府はQE2(量的緩和政策第2弾)をやらざるを得なくなる。

流動性相場は、ミニバブルを簡単に作り出すが、しぼんでしまうのも早い、ということだ。問題は、日本のインフレを心配している日本銀行が、この段階でなぜインフレターゲットを実施したのかだ。インフレターゲットの必要性は、すでに90年代から指摘されていのに、ずっと実施してこなかったことには理由がある。莫大な発行残高となっている日本国債のせいだ。2012年度予算案を見てみると、新規財源債(44.2兆円)を含めて、実に174.2兆円の国債を発行しなければならない。借換債だけでも112.3兆円もある。
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2012/seifuan24/yosan005.pdf

インフレターゲットで1%物価を上昇させれば、とうぜん金利も上昇することになる。仮に金利も1%上昇するとすれば、単純計算して12年度に発行する国債の金利だけで、1兆7420億円の金利負担が増える勘定になる。現在の日本経済は、金利高を伴う景気回復など出来ないぎりぎりの状態だ。

にもかかわらず日銀が量的緩和に踏み切り、さらに米国もFRBが金融緩和の延長を表明し、QE3の可能性までほのめかした。そして、昨日は安住財務大臣が中国の副首相と協議して、金融緩和制度強化について話し合った。これら一連の動きが、これから起こるであろう欧州債務危機への準備であることは間違いないだろう。株式市場が上昇した、ギリシャ危機解決のめどが立ちそうだ、というニュースだけで判断しては危険だということだ。ギリシャが片付いても、欧州には問題が山積だ。中国の不動産バブル崩壊の心配もある。

考えてみれば、サブプライムローン問題が発生した時に、10人以上の現場の人間にインタビューしたのを覚えている。残念ながら、ほとんどのプロと呼ばれる人たちは、その後起きた経済危機を予想できる人はいなかった。大学教授やエコノミストと言われる人たちもほぼ全滅だった。唯一、経済危機を予想できたのは極めてごくわずかのエコノミスト、もしくはヘッジファンドの関係者ぐらいだった。

しかも、おかしいのはそこで間違えた専門家を、メディアが一切、検証をしていないということだ。私の記憶が正しければ、当時、サブプライムローン問題から始まる経済危機の原因をキチンと説明できたのは、極端な悲観論者を除いて一部のエコノミスト、そして米国の元投資銀行関係者、ヘッジファンド関係者だけだったと思う。いま、何が起きているのかをきちんと理解しなければ、再び経済危機が訪れたときに、また我々は貴重な資産を失ってしまう。

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