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防災に思う「常態化する想定外」

基準、マニュアルの見直し急務
求められる柔軟な対応、判断力

災害大国・日本は今年、大阪北部地震、西日本豪雨に代表される「50年に一度の大雨」(気象庁)、「生命に危険を及ぼすレベルの猛暑」(同)が相次ぎ、完全な異常気象サイクルに入ったかに見える。相次いで上陸する台風の発生数も、過去、最高だった1967年の39個を上回る勢いだ。災害の多発、巨大化に対する備えはどこまで可能なのかー。

「想定外」や「50年に一度」が常態化すれば、「何時でも起き得る災害」となり想定外ではなくなる。となると「想定外」、「50年に一度」を前提にした災害対策やマニュアルは最早、通用せず見直しが必要となる。ただし、どのようなマニュアルを作ろうと、不測の事態は必ず起きる。行政など担当者には、事態に柔軟に対応する咄嗟の判断力、決断力が一層求められることになる。

土砂災害に見舞われた広島県・坂町の被災地=日本財団災害対策チーム・黒澤司アドバイザー撮影

西日本豪雨災害でも理解しにくい対応が目に付いた。例えば行方不明者の氏名公表。報道によれば、岡山県は公表、広島県は県警の身元確認情報を基に死者名は公表したものの不明者は見送り、愛媛県は「個人情報保護」などを理由に死傷者、不明者とも公表を見送った。情報提供元の各市町の了解を得ていない、あるいは個人情報の保護が非公表の理由のようだが、多くの自治体の個人情報保護条例には緊急時の情報提供を認める規定もある。

家屋の中まで土石で埋まった=同

現に、氏名公表が迅速な救助につながった、公表を受けて生存情報が寄せられ残る不明者の救助作業が効率的にできた、といった事例も報道されている。一刻を争う緊急事態の中で、人命救助と個人情報の保護を同列に論ずるのはどうみても的確な対応とは思えない。酷な言い方になるが、想定をはるかに上回る豪雨にマニュアルをどう適用すべきか、判断に迷ったということではないか。

次いで肱(ひじ)川の氾濫で、愛媛県西予市などで人命を含む甚大な被害が出たダムの放流。想定外の豪雨で上流にある野村ダムと鹿野川ダムの放流に踏み切った結果、肱川の氾濫につながった。ダムは基本的に河川の水量を調節する機能を持つが、容量を超えて満水となれば決壊の恐れも出るため放流措置がとられる。国土交通省四国地方整備局が「対応に問題はなかった」としているのも、このためだ。

今後、第3者委員会を設け、住民への周知方法、ダムの操作方法が適切だったか、考察されるようだが、放水量が安全基準の6倍にも達するような事態は想定されていなかった気がする。国内のダムの多くが年月を経て土砂が堆積し浚渫をしないと本来の水量調節機能を持たない、と指摘される点も含めて多角的な見直し・再検討が必要となる。

このほか被災者の生活再建に欠かせない罹災証明。豪雨災害での被害は浸水被害と土砂被害に大別される。西日本豪雨災害で見れば、倉敷市真備地区は河川氾濫や堤防決壊に伴う浸水被害、広島県・坂町などは急傾斜地の土石流被害が中心だった。

罹災証明はどちらも水害として同じ物差しで判定されるが、土砂被害は家屋も土地も失われ浸水被害に比べ生活再建がより難しい。国土交通省によると国土の七割を山岳地帯が占めるわが国には、全国で約六十六万ヵ所に上る「土砂災害警戒区域」があり、50年に一度の雨が降れば土砂被害は増える。一律の扱いは見直す必要があろう。

以上、素人目に見ただけでも、異常気象時代の大災害や酷暑に備えるには誰もが、これまでの常識を捨て、発想を変え、対策・備えを強化する必要がある。専門家が見れば、さらに多くの問題点があるはずだ。

異常気象原因は諸説あるが、WMO(世界気象機関)は地球温暖化との関係を指摘している。個人としては海面温度の上昇や海の酸性化を見るまでもなく、人類の社会活動に伴って排出される二酸化炭素(CO2)が大きく影響しているのは間違いないと考える。その意味で異常気象に抜本的に備えるにはCO2の排出削減が何より急務である。

ちなみにトランプ米大統領は昨年6月に地球温暖化対策の推進を目指す国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明したのに続き、先ごろ火力発電所からのCO2排出量を規制するグリーン・パワー・プランを撤廃する方針を打ち出した。パリ協定からの離脱手続きが、次の大統領選が行われる2020年11月までかかるのが原因と言われるが、温暖化に伴う地球の危機は陸も海も“待ったなし”である。この一点においてトランプ大統領を支持しない。

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