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米中貿易戦争に関する日本人の誤解

先月アメリカを訪れていた中国の貿易問題を扱う代表団は「手ぶら」で帰国しました。

その間、トランプ政権はメキシコとの貿易協定に合意し、「不可能!」とさえ言われた北米自由貿易協定(NAFTA)の破棄、ないしは大幅な改変を着々と進めています。

そもそもNAFTAとかTPPなどの貿易協定は通商問題を大統領の「きまぐれ」から守るために締結されるものであり、政権交代などのショックに対しても耐性を持たせることでビジネスの当事者たちが安心して商取引を続けられる基盤を提供するという意図で行われるのです。

そのNAFTAに激しく揺さぶりをかけているトランプ大統領の手腕は、甘く見るべきではない気がします。

日本の人たちは(どうせトランプなんてすぐ消えるさ)と思い込んでいるフシがあります。それは、そうなのかもしれません。

しかし少なくともドナルド・トランプ本人は「当然、2期8年大統領を務める!」という気でいます。

バラク・オバマ、ジョージW.ブッシュ、ビル・クリントンなど最近の歴代の大統領は、いずれも2期8年務めたことを考えると「なぜトランプだけが1期なの?」というちゃんとした根拠を示す必要がある気がします。

言い換えれば、トランプ本人は「長いゲーム」を戦っているつもりだということ。

だから株式市場の参加者の我々だけが(これは「台風、カミナリ、火事、オヤジ……」一過性の現象に過ぎない)とたかをくくるのはまずい気がします。

ちなみに日米貿易摩擦は1972年の日米繊維交渉から始まり1977年には鉄鋼・カラーテレビ、1980年代には農産物・自動車、最後には1985年のスーパーコンピュータのキャンセルにまで至った……つまり10年以上に渡って激しいバトルが繰り返されたということ。

普通、貿易交渉は長引きます

なぜ2018年から本格的に始まったばかりの米中貿易戦争が1年も経たないうちに終結すると確信するのかの根拠があまりにも希薄。

それから日米構造協議ではアメリカが「やれ公共事業を増やして内需を拡大しろ!」とか「土地税制を見直せ」とか「大店法はイケナイ」とか箸の上げ下ろしまでイチャモンつけ、それに従った日本は国家の財政の悪化を見たし、地価下落→デフレという地獄絵を見たし、地方商店街はシャッター街に変貌したのです。

つまり日本経済は原形をとどめないほど変わり果ててしまったということ。

それは単なる「加工輸出モデルの終焉」にはとどまらず、我々の暮らしの、あらゆる分野にまでヒタヒタと変化は押し寄せました。

べつの言い方をすれば(いい思いはしなかったな)というか、悔しさだけが残るわけです。

そもそもアメリカが日本を袖にして中国と仲良くした背景には、当時のアメリカは「コスト削減マインド」が強くあり、アウトソーシングに極めて積極的だったということがあります。

「図面も、ノウハウも、ブランドも、みんなアメリカが持ってきてやるから、組み立てだけやってくれ!」というわけです。

しかし今日のアメリカ経済は付加価値の高いIT、バイオなどの分野によって駆動されているわけで、アメリカ人の心の位置は「コスト削減一辺倒」ではないです。

アウトソーシング・モデルに対してアメリカ人全体が冷ややかになっている点をみのがすべきではありません。

最近、ヘンリー・キッシンジャーがフィナンシャルタイムズとのインタビューで「トランプは変化の大統領。世界の枠組みを変える」と語りました。

キッシンジャー本人もかつてリチャード・ニクソン大統領の国務長官として「ピンポン外交」で中国との国交を電撃的に回復し、世界を「あっ!」と言わせました。つまり「世界の枠組みを変えた人」なのです。

そのキッシンジャーが「トランプという現象は軽視すべきでない」と言っているわけだから、この賢者の言葉は重いと思います。

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