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TOKYO2020に向け眠っているビジネスチャンスとは?

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2020東京五輪まであと2年を切り、民泊新法施行だ、暑さ対策だ、サマータイム導入だと、ビジネスの芽に関わりそうな様々な分野の動きが慌しくなってきたように感じています。そこで現時点で私が個人的に考える、TOKYO2020を巡るビジネスの本命の話をこっそり記しておこうと思います。

「新幹線開通」は1964年の東京五輪がもたらした最大の功績

TOKYO2020を展望する前に、まず1964年東京五輪を思い起こしてみたいと思います。1959年9月生まれの私は、この年5歳になったばかりの幼稚園児でした。東洋の魔女と言われた女子バレーボールチームや重量挙げ三宅義信選手らの活躍は、どちらかと言えばおぼろな記憶。

むしろそれ以上に子供の私に強く印象付けられたのは、海外から多くの外国人たちが訪れて大人たちがはしゃいだ国をあげてのお祭り騒ぎと、当時住んでいたオリンピック開催の地東京で何か大きな変革が起きているという肌感でした。

最も強く幼い記憶に焼き付けられたのは、新幹線の開通です。「夢の超特急」は、子供たちの夢も乗せて開会式直前に走り出しました。時期同じくして、首都高速道路もその基本形が出来上がり頭の上を車が走るようになり、さらには足の下でも東京都心部の地下鉄新路線が続々開通し、絵本で見た世界が見事に展開されたのです。

世はまさに 「スピード時代」到来。空想の世界が実現に近づいている、という実感を覚えたものです。

このように1964東京五輪がもたらした最大の功績は、交通インフラの近代化でした。世界からの来訪者に迎えるにあたってオリンピック開催国として恥ずかしくない日本を見せなくてはいけない、そんな当時の国民と政府の思いが交通インフラの近代化整備に注力させたと言ってもいいと思います。

インフラの整備には、大きなコストと長い時間が必要になります。そして何より、動き出した近代化を後戻りさせないための起爆剤となるような"取っ掛り"も重要なのです。日本全体のあらゆる交通インフラ近代化に向けた整備は、未来に続く"取っ掛り"としての1964東京五輪を機に大きく動き出したのです。

同時に交通インフラ整備は、それまでは考えてもいなかった新たな周辺ビジネスを生み出し続けました。例えば新幹線の沿線開発。開業当初は見渡す限り畑と空き地だった新横浜駅周辺は、今や商業施設とオフィスが立ち並ぶ横浜市内でも指折りの大都会となりました。

また、新幹線の開通により国内東西の距離感が縮まり、一般観光需要の増加によりパッケージ旅行という大量消費型商品が開発され、旅行代理店は新たな収益源を作り出すに至ります。整備、近代化された他の交通インフラも同様です。新たなインフラが軌道に乗る中で、多くの人々の利用を背景に新たなビジネスは次々生まれてきたのです。

今回の東京五輪は通貨取引インフラ整備の起爆剤に

では、2020年には何が起こるのでしょう。やはりオリンピックを機に整備されるものは、国際的に見て立ち遅れているインフラ以外にないと思います。これまでなかなか進まずに世界に後れを取っているインフラ整備を一気に推し進める起爆剤としては、世界中から最高に注目が集まる場であるオリンピックをおいて、他にないからです。

ただし、今回整備されるであろうインフラは、交通インフラではありません。

それは通貨取引インフラです。その近代化・整備とは、リアル通貨の流通インフラから電子通貨のそれへのシフト、つまりキャッシュレス化の確立ということです。日本はキャッシュレス化の流れにおいて、世界の先進国の中では大きく遅れを取っています。

世界の状況を見てみると、アメリカの決済におけるキャッシュレス比率は2016年現在のデータで約50%、中国が約60%。英国では約70%という数字が公表されています。それに対して日本は僅か20%。この遅れは、およそ先進国とは言い難いレベルにあると言っていいでしょう。

キャッシュレス化が遅れると何が問題なのか。まず国としては、年間1兆円もの現金決済コストがかかるという点。産業レベルでは、少子化が続くことでこの先も想定される慢性的な人手不足の問題に、暗い影を落とすことになります。

また、「現金=有人サービス」が基本であり、サービス業における無人化イノベーションが進みにくいというデメリットもあります。何より、現金でないと買い物ができない国は、この先海外からの来訪者から敬遠され、観光産業のみならず国としてのイメージダウンにもつながりかねないのです。

そんな日本の通貨取引インフラ近代化戦略において、最も参考になるのは中国でしょう。中国も北京オリンピック開催前は、現在の日本と似たりよったりのキャッシュレス状況にありました。しかし、オリンピックを機に政府主導による銀嶺カード加盟店の爆発的な拡大と加盟店手数料規制策により、キャッシュレス決済拡大は飛躍的に進展しました。

その際ポイントになったのが、QRコード決済導入による店舗に経済負担を負わせないスマホ決済の普及でした。日本でも現在、急速に拡大しつつある決済方法であり、ここは注目点です。

中国が北京オリンピックを機に国内の通貨取引インフラ整備を一気に押し進めたように、キャッシュレス化進展を重要視している日本政府も、オリンピックイヤーの2020年までに現在の2倍である40%のキャッシュレス化実現を目指すとの方針を打ち出しています。

さらには、その先に控える2025年大阪万博までには、他の先進国に追いつくことを目標とした政府としての具体的な支援策を現在練っている状況でもあるのです。

1964東京五輪に話を戻せば、交通インフラ整備に伴う周辺ビジネス、付随ビジネスが、その後大きなビジネス・マーケットを生み出すことになりました。

インフラというものはそもそも、有力なビジネス・プラットフォームのひとつであり、このプラットフォーム整備がスタートすることが予見される段階で、大きなビジネスチャンスはすぐ目の前にあると考えるのが、ビジネス戦略策定における常套手段でもあるのです。

オリンピックはいつの時代も、長期的なインフラ整備に向けた起爆剤の場であるということ。そして今、日本が抱える国際的に遅れをとっているインフラは、通貨取引インフラであるということ。

TOKYO2020まであと2年。新たなビジネスチャンスは、まだまだたくさん眠っていると思います。

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