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夏休み明けに苦しさを感じる子どもの「SOS」を見逃さないために周囲ができること

いまから3年前の2015年、内閣府から「夏休み明け」に子どもの自殺が多くなる傾向が明らかにされました。

※内閣府『自殺対策白書』(2015年発表)より

内閣府の調査によれば、過去42年間の18歳以下の総自殺者数は1万8048人(1972年~2013年)。日別でみると9月1日(131人/年間1位)、9月2日(94人/年間4位)、8月31日(92人/年間5位)と夏休み明け前後に集中していることがわかりました。

このほか4月の春休み明けも集中しており、長期休み明け全般で子どもの自殺が多くなることも内閣府は指摘しています。

また、9月は子どもたちのいじめが増加する時期としても知られており、心理カウンセラー・内田良子さんは以下のように指摘しています。

「夏休み明けは学校が始まってどの子にとってもストレスがたまる時期。さらに学校行事の影響で部活動がなくなるなどストレスの発散場もなく、いじめが起きやすい」(内田)。

子どもの自殺は氷山の一角にすぎません。夏休み明けはどんな子にとって緊張感が高まっている時期だと言えます。新学期初日はもちろん、新学期序盤には、どんな周囲の対応が求められるのか、その「SOSの対応方法」について伝えられればと思っています。

苦しんでいる子ほど言葉になりづらい「SOS」

私は中学2年生で不登校をし、17年間、不登校の当事者や親を『不登校新聞』で取材してきました。私自身の経験と、取材経験から言えるのは、学校で苦しんでいる子ほど「学校へ行きたくない」という一言を言いづらいものはありません。

私の場合は、不登校になった日に初めて「行きたくない」と口にして自分自身が学校に追い詰められていることを知りました。

私は36歳なので20年以上も前の不登校ですが、今年15歳の女の子も「行きたくないという言葉は誰にも言えなかった」と語ってくれました。

今も昔も「学校へ行きたくない」という明確なSOSほど、言いづらいというのは変わっていないようです。もちろん大人も「助けて」という一言は言いづらいでしょう。

であれば、学校で苦しむ子どもたちからのSOSはどのようなかたちで出るのでしょうか。

児童精神科医の高岡健さんによれば「宿題が手につかない」「体調不良を訴える」「朝、起きられない」などの言動は自殺リスクが高まっているSOSのサインだと指摘しています。

大人から見れば、ささいな言動にも見えますが、子ども本人は周囲に悟られずにいじめなどを受けている場合があります。高岡さんによれば「本人の気持ちを軽視することが一番のリスク」なんだそうです。

当然、子どもが言いづらい「学校へ行きたくない」と言った場合も含めて、そのSOSはていねいに拾っていきたいものです。

子どもの話を最後まで「聴く」ことが大切

子どもが苦しさを抱えている、SOSの予兆が出ていると気づいた場合、周囲にはどんなことができるのでしょうか。

年間20万件の子どもの電話相談を受ける「NPO法人チャイルドライン」では「聴くこと(傾聴)」によって本人の気持ちに寄り添う支援をしています。

チャイルドラインでは、子どもと話す場合、アドバイスをするのではなく「話をさえぎらず、最後まで聞く」ことに一番の重きを置いています。なぜ「聴く」ことに徹底するのかと言えば主に3つの理由があるそうです。

1.はじめに話す内容と本人の本音がちがうこともあるため
2.話すことで気持ちが整理されるため
3. 「わかってほしい」という気持ちを受けとめるため

本人は話をするなかで気持ちが整理され、その気持ちが受けとめられることで「大人の理解者もいる」と思うことができます。こうした過程が「解決のための一歩になる」とチャイルドライン向井事務局長は話しています。

第三者は冷静であるぶん問題の解決を急ぎますが、困っている本人にとっては、まず気持ちが受けとめられることが必要です。こうした「聴く(傾聴)支援」はチャイルドラインだけでなく、多くの子ども支援の場でも行なわれています。

人は共感されて初めて「自分を救いたい」と思うことができる

本人の話をしっかりと聞くことにはどんな効果があるのか。

私は「聞く力」によって変わっていった26歳の女性のことをよく思い出します。

この女性は、離婚や家庭崩壊といった複雑な家庭環境のうえに友人関係のトラブルが重なり、中学2年生で不登校になりました。

抱える問題や苦しさについて彼女は、両親、親戚、担任教師、養護教員、スクールカウンセラーなどに相談しましたが「誰も気持ちを理解してくれる人はいなかった」と言います。

彼女は祖母のすすめで不登校の子が集まるフリースクールへ入会。フリースクールで「やっと私の側に立って理解してくれる大人と出会えた」そうです。

これまで出会ってきた大人は、彼女の話を途中でさえぎり、矢継ぎ早にアドバイスをしてくるため「聞いていて苦しかった」とも言っていました。

人は共感されて初めて気持ちが救われます。自分の気持ちが救われてこそ「自分を救いたいと思えるのだ」と彼女は話してくれました。

現在、彼女はフリースクールを退会後、児童厚生施設で働いています。「SOS(気持ち)の受け取り方」によって本人の状況が大きく変わったケースだったと言えるでしょう。

” ワラにもすがる気持ち”を軽視しないために

くり返しになりますが、夏休み明け前後、私たちが考えなければいけないのは、子どもの自殺だけではありません。自殺は子どもたちを取り巻く状況の一端を示しているにすぎないからです。いじめへの不安などがあり学校に苦しさを感じる子は、その何倍もいます。

周囲の子どもからSOSを感じとった場合、まずはその思いを軽視しないでもらえればと思います。

子どもからすれば「この人ならばわかってくれるかもしれない」とワラにもすがる気持ちでSOSを発したのかもしれません。

極端な例かもしれませんが、取材ではSOSを受けとめられず苦しんだという話も聞いてきました。

ある女性は、中学生のころ、同級生からのいじめに耐え切れず、教師に相談したものの「ウソをつくな」と言われ、ショックを受けて不登校になりました。

また、ある男子中学生は、教師からのいじめや校則に不満を感じて不登校をしましたが、親や学校から「なぜ学校へ行けないのか」と責められる日々が続いたそうです。彼は「学校に問題があるのに、学校を休んだ僕が問題にされるのはなぜなんだ」と話してくれました。

学校では子どもが傷つけられたうえで、さらに気持ちが軽視されて傷を深めるという二重苦が起きています。

子どもが欲しているのは即時解決とはかぎりません。つらさに共感してくれるだけでも気持ちが和らぐことがあります。そうした「SOSの受け取り方」があるということを頭の隅に置いてもらえればと思っています。

最後になりましたが、親や周囲が苦しんだとき、または学校へ行っている本人が苦しんでいるときの連絡先を示します。「学校を休みたくないほどじゃない」「深刻なケースではない」という場合でもけっこうです。

「もしかしたら?」と思ったり、試にかけてもらうのでもけっこうです。気兼ねなく利用いただければ幸いです。

■保護者や子どもの相談窓口
「子どもの人権110番」(電話0120-007-110)

■不登校の相談窓口
「登校拒否・不登校を考える会全国ネットワーク」(電話03-3906-5614)

■学校へ行っているなど子どもの相談窓口
「チャイルドライン」0120-99-7777

『不登校新聞』編集長 石井志昂

■執筆者プロフィール

石井志昂(いしい しこう)
1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からは創刊号から関わってきた『不登校新聞』のスタッフ。2006年から『不登校新聞』編集長。これまで、不登校の子どもや若者、親など300名以上に取材を行なってきた。

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