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大学入試改革における英語民間試験の導入の雲行き


2018年3月10日、東大が、英語の民間検定試験を合否判定に利用しない方針を表明した。2018年4月3日の「東京大学新聞」では、東大の阿部公彦准教授が英語の民間検定試験導入だけでなく大学入試における4技能評価そのものを一般論として批判している。

「共通テストのプレテストでも民間試験と同様、遊園地の混雑度をウェブサイトで調べる問題など、日常生活の具体的な状況が題材の問題が多く見られた。しかし『これでは英語力ではなく情報処理の問題だ』」というのだ。

このタイミングで民間検定試験導入に対するネガティブな姿勢を東大が表明したことには、「いまさら大学入試改革の既定路線をひっくり返すことは難しい。しかしこのままではまずい。自らがいち早く態度を表明することで、他大学の方針に少しでも影響が与えられれば」という思いが感じられる。

それからちょうど1カ月後の4月27日、一転、東大は、英語の民間検定試験を入試に活用すると発表し、「何か大きな力が働いたのでは?」と騒然としたが、それもまた「改めて導入の可否を検討する」主旨であるとして訂正された。

7月12日、東大の「入学者選抜方法検討ワーキング・グループ」は、「英語民間試験の成績提出を求めない」つまり英語民間試験を用いないという案を最優先順位に据えた答申を発表した。

要約すれば、英語の発信力を重視することには東大としても賛同しているが、それを受験者全員に求めることは現実的・技術的に不可能ではないかという話だ。

朝日新聞が全国に82ある国立大学に確認したところ、8月10日の時点で、英語民間試験に具体的な方針を示したのは12大学にとどまり、37大学は活用するかも未定と答えた。

一定以上の成績を出願資格とするのは東京外国語大学など4大学。大学入試センター政策の英語試験に加点する方針を示したのは広島大学など6大学。出願資格とした上で加点もするというのが、長崎大学と熊本大学の2大学。33大学が活用する方針だが詳細は未定。37大学がまったくの未定と回答した。「未定」の大学には、東大の動向を見ながら考えたいとする声もある。

「これからのグローバル社会では使える英語が必要。だから読む・書く・聞く・話すの四技能を評価の対象にする」というのが大学入試改革の当初の狙いだったのだが、ここに来て、「それってできるんだっけ?」「本当に必要なんだっけ?」という「そもそも論」が再燃した。

ギリギリのタイミングで「待った」をかけた東大に、賛否の声がある。これについては東大も答申書の中で、「国大協におけるこれまでの審議過程に本学が十分にコミットしてこなかった」と反省の弁も述べている。

新テストは、現在の高校1年生からが対象。まだどんな大学入試になるのかも定まらないのはちょっと異常事態。これこそ「先行き不透明な時代を生き抜く力を身に付けるための実戦試練」だと思って乗り切るしかなさそうだ。

※2018年8月30日FMラジオJFN系列で放送された「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。

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