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LINEの逆襲、手数料“0円戦略”の衝撃

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「決済事業はマーケットリーダーになるか、ならないかの二択。カードを切るのは今。機は熟した」。今年6月、LINEがQRコード決済「LINE Pay」について「3年間、手数料0%」という破格の条件を出して、業界に衝撃を与えた。QRコード決済はすでにドコモや楽天などが参入している。なぜLINEは今になって本腰を入れたのか。LINE取締役最高戦略・マーケティング責任者(CSMO)の舛田淳氏に聞いた――。

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

社内の活気は「第2の創業」といえるほど

かつて、キャリアメール(携帯メール)全盛だった日本人のコミュニケーションをわずか数年でガラリと変え、国内のみならずタイやインドネシア、台湾のメッセンジャー市場を席巻していった「LINE」。だが、欧米への浸透には至らず最近は頭打ちの感が否めない。

業績もかつての勢いは見られない。本業が生む広告事業は順調に成長しているものの、新規事業への投資などがかさみ、2018年1~6月期の連結営業利益は前年同期比45%減の103億円と大幅な減益となっている。

本業のメッセンジャーに加え、音楽配信やAIスピーカーなどあらゆる事業において米国の巨人「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」とぶつかり、市場関係者の一部には厭世観すら漂っていた。

それでも今、LINEの社内は「第2の創業」と言ってよいほどの活気と希望に満ちている。2014年以来、温めてきた肝いりの戦略事業を一気に急拡大させる「秘策」を展開し始めたからだ。6月に手数料「0%」を打ち出した決済サービス「LINE Pay」である。

金融領域への挑戦は「本気だった」

「LINEという会社が、決済などの金融領域にどこまで本気なのか分からない、というのは皆さんからよく言われていました。いろいろなことをやっているけれども、やっぱりメッセンジャーの会社で、一応、金融もやっている。皆さんの認識はたぶんそうだったと思うんですね」

「ただ、われわれは本気だったんです。今回で言うと、中小企業向けの領域において、加盟店の手数料をゼロにしますという、この判断自体も、われわれが本気であるという強い意志の表れです」

LINEの誕生からこれまで、ビジョナリスト、あるいは戦略家として八面六臂の活躍を見せてきた取締役最高戦略・マーケティング責任者(CSMO)の舛田淳。決済サービスに対する本気度を彼に問うと、語気を強めてこう語った。その“本気”の施策が、8月から始まっている。

LINEは8月1日から、通常は決済額の2.45%が店舗側にかかるLINE Payの決済手数料を0%とするキャンペーン施策を開始した。期間は2021年7月31日までの3年間。加盟店が無料の店舗用アプリを利用し、且つQRコード決済を選択した場合に限る。

従来、クレジットカードや「Edy」などの電子マネーによる決済を導入しようとすると、1台数万円の決済端末を必要とし、さらに1決済ごとに3%台前半の手数料がかかっていた。今回の施策は、そうした店舗側の負担をゼロ円にするというものだ。

この施策を発表したのは今年6月末に開催した「LINEカンファレンス」の場。その前日、同じくQRコード決済を普及させようと務めている金融関連ベンチャーのメタップスが「決済手数料を0.95%にする」と打ち出し、ネット上では驚きをもって伝わったのだが、LINEの「0%」はそれを一瞬にして吹き飛ばす威力があった。


“店舗は3年無料、顧客は最大5%還元”という破格の条件

店舗のメリットは大きい。導入にはスマートフォンやタブレット端末が1台あれば良い。無料の店舗向け決済アプリをダウンロードし、アプリから加盟店申請を行い、審査に通ればLINE PayのQRコード決済を受け付けることができる。決済時には顧客のLINEアプリの中にある「コード」を画面に表示してもらい、それを店舗向け決済アプリで読み取って金額を入力するだけで処理が終わる。今後3年間は、その全ての機能がタダで利用できる。

顧客にもメリットがある。LINEユーザーはあらかじめ「LINE Pay」の登録を済ませ、銀行口座を連携するなどしてお金をチャージしておく必要がある。だが、最初の手間さえ乗り越えれば、極めて簡単な動作で現金いらずのQRコード払いを利用できるどころか、買い物ごとに3.5%~最大5%ものポイントが付与される。

クレジットカード利用時のポイント還元率は平均で0.5%。1%でも高いといわれる中で、LINEは破格の還元率を打ち出した。いったい、なぜこんなことをLINEは始めたのか。

「日本はキャッシュレス後進国。いろいろな国のメンバーがLINEの本社に来ますが、『日本に行くときは現金を持っていかなきゃ』みたいな心得がある。でもわれわれが海外に行くと、みんな当たり前のようにスマホで決済をしている。2020年の東京五輪も含めて、『おい、日本大丈夫か』と、日本人として危機感を覚えるんです」

「じゃあ、放っておいたら誰かが解決してくれるかというと、そうでもない。ある種の強い流れがないと、たぶんこの国は変わらない。7600万人というLINEのユーザーを奇跡的にも与えていただき、チャレンジできるポジションにいるのであれば、そこは明確な意思を込めて、われわれが社会を変えていくべきだと思いました」

舛田が言うように、日本はキャッシュレス後進国として知られている。経済産業省の資料によると、世界各国のキャッシュレス決済比率(2015年)は日本が18.4%。対して欧米は30~50%台で、中国は60%、クレジットカード比率が高い韓国は89%にも上る。

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

枯れた技術に抜かれた「おサイフケータイ」

とりわけ中国やインド、アフリカ諸国などでは、この数年でスマートフォン(モバイル)によるQRコード決済が爆発的に成長している。

昨年、日本銀行が公表した調査結果では、日本においてモバイル決済を利用していると答えた人は全体の6%にとどまっている。対して、参考値として「ケニアでは携帯電話加入者の約76.8%がモバイル決済を利用しているとの調査がある。また中国でも、都市部の消費者を対象に実施された調査によれば、98.3%が過去3カ月にモバイル決済を利用したと答えたとの報道もある」と紹介している。

中国ではインターネット大手のアリババ集団(阿里巴巴集団)とテンセント(騰訊控股)がそれぞれ展開するQRコード決済(前者が「アリペイ(Alipay)」、後者が「ウィーチャットペイ(WeChatPay)」)が国民のデファクトとなりつつあり、屋台の支払いから路上生活者への寄付までもが、スマホで完結しているという。支払いにはQRコードが印刷された紙ペラを掲示するだけ、という店舗も多い。

日本は「Suica」「Edy」といった非接触ICを利用した電子マネーや、それを携帯電話に入れた「おサイフケータイ」をいち早く導入した電子マネー先進国だった。だが、その決済高は近年、ほぼ横ばい。日本で2017年に利用された電子マネーの総額は5兆2000億円ほどだが、中国では1700兆円のモバイル決済があったという調査もある。QRコードという枯れた技術によって一気に追い抜かされた格好だ。

LINEは後進ながら、これを模範に日本でも一気にQRコード決済を普及させようと動いた。

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