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広がる「スルガショック」、アパートローンなど不動産融資引き締め 中西 享 (経済ジャーナリスト)

 スルガ銀行(本店静岡県沼津市)の不動産関連の不正融資が明らかになったことで、アパートローンなど不動産融資に引き締めの動きが広がり、同業界の一部で資金繰りが苦しくなるなど「スルガショック」が起きている。

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1兆円を超える不適切融資

 不動産業界では、数年前からほかの金融機関では貸してくれなくてもスルガ銀行に行けば、高金利を取られるが貸してくれるという評判になっていた。しかし、同行の第三者委員会実施した融資の実態調査の結果1兆円を超える不適切融資を行っていたことが判明、シェアハウス向け融資の99%が承認されるなど、審査がほとんどされていなかったことも浮き彫りになってきた。

 事態を重視した金融庁は、ほかの金融機関に対して不動産関連融資は審査を厳しくするよう求めているようで、不動産関連融資の「蛇口」が細くなり、一部の業者は資金繰りがつかなくなっているところもあるという。

 長年続いてきた金融緩和により、金融機関は企業向け融資が伸びないこともあって、カード、アパート、マンションローンなどに注力してきた。金融機関の中にはこれらのローンによる収益が全利益の半分近くにもなる金融機関も出ていた。その中で群を抜いていたのがスルガ銀行だった。

「駆け込み寺」銀行

 同行の場合、リーマンショック後あたりから、伸びが期待できない企業向け融資から個人向け融資にシフトするなど融資戦略を転換した。その中心を担ったのが不動産関連融資だった。アパートローンなどは頭金がゼロでも金利を4.5~5.0%も取る代わりに全額融資するなど、他の銀行ではまねのできない思い切った融資を行って不動産融資を急激に伸ばしてきた。

 主要な地銀ではアパートローンの場合、アパートの建築費用の20%~30%の資金を持っている場合で、残りの建築費について2%~3%の金利で融資するのが通常のパターンだった。スルガの場合は手持ち資金がゼロでも貸してくれるということで、他行で融資を断られた業者の「駆け込み銀行」となっていたという。スルガ銀行はこうした業者に対しては焦げ付きのリスクはあることは承知の上で、高い金利を取る代わりに融資を実行してきた。

 第三者委員会の報告ではスルガ銀行は、融資に当たり書類を偽造したりするなど悪質な違法行為も見つかっており、杜撰な融資実態が日常化していたようだ。

不動産業界全体に悪影響も

 短期間で資金のやりくりをする不動産産業界は、スルガ銀行以外にも頭金なしでも高金利で貸してくれる地域の金融機関を頼りにしてきた。しかし、スルガの実態が明らかになったことで、これまで不動産関連融資で利益を上げていた金融機関もこうした融資を絞り込むことになりそうで、不動産向け融資量が減ると資金の工面に走らなければならなくなる不動産関連業者も出てきそうだ。

 また不動産関連融資を受ける際の不動産担保の掛け目も厳しくなってきている。これまでは手持ち不動産を担保にその価値の60%くらいは融資してくれていたのが、50%~40%に引き下げられてきているようで、不動産を担保にした融資も絞られてきそうだ。こうなると、不動産業界全体に供給される資金量が圧縮されてくるため、業界全体の資金の流れが悪くなる恐れがある。このショックがさらに広がれば、マンションを含む住宅業界全体に悪影響を及ぼしかねない。

 住宅ローンは金融機関の貸出残高として、この10年ほどは着実に伸びてきた。現在は年齢や家族構成などにもよるが、年収の7~8倍程度は借りられるようだが、金融機関が住宅ローンも含めて「蛇口」を絞るようなことになれば、マンションなどの売れ行きにも響いてくることになる。

問われる金融庁の手腕

 ショックの「震源」となったスルガ銀行では預金の引き出しが増えているという。株価は8月22日にはストップ安となり、今年1月時点で2500円以上もしていた株価は株価は8月24日の終値が564円まで急落した。今週に入って600円台を回復しているが、信用が求められる金融機関の株価がここまで暴落すると、先行きどうなるのかと言う不安感が付きまとうことになる。

 今後は経営陣を一掃して不適切な融資を抜本的に改める必要があるが、焦点はこの問題含みのスルガ銀行をどうやって再建するかだ。スルガ銀行は岡野一族が創業した銀行で、現在は5代目の岡野光喜氏が会長兼最高経営者(CEO)として君臨している。この数年は高い業績を上げ、行員の給与水準は地銀の中でトップクラスにするなど、金融業界の中でもその独自な経営方針は目立っていた。金融庁の森信親・前長官はその経営のやり方を高く評価するなどしていた。

 いまのところ、どこの銀行も再建に名乗りを上げているところはないが、同県の有力地銀である静岡銀行などが候補としては上がってくるのではないかみられている。しかし、スルガ銀行はこれまで

 不動産関連融資を柱に、行員にノルマを課した無理な経営をしてきただけに、吸収合併してでも再建に乗り出そうという銀行は出てきにくい。金融庁としては近隣の有力銀行に鈴をつけたいところだが、容易ではなさそうだ。森長官の後を受けて7月に金融庁長官に就任した遠藤俊英長官にとっては、「スルガショック」が広がらないような対策を取ると同時に、スルガ銀行をどのように「処理」するかその手腕が問われそうだ。

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