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完熟フレッシュ・池田レイラの初単独ライブに見た13歳の繊細な感受性

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BLOGOS編集部

2018年8月23日、台風19号が九州の西を、台風20号が四国に向かって北上し、湿度高めの残暑に汗ばむ夕刻、東京・表参道GROUNDで、完熟フレッシュ・池田レイラによる初の単独トークライブが開催された。

表参道GROUNDはワタナベエンターテインメントのホームグラウンドとなるライブスペースであり、完熟フレッシュは父(池田57CRAZY)と娘(池田レイラ)の漫才コンビであり、池田レイラは2005年生まれの13歳で中学2年生だ。

完熟フレッシュはコンビとしての単独ライブをまだ開催していないのに、娘レイラによるピンでの単独が先行された。そこには、まあ、様々な人々の思惑がある、ということだろう。結果、その思惑によって中2女子がお笑い芸人として「単独トークライブ」を実施する、この、お笑い史に類例のない、充分驚いていいイベントに惹かれて会場に足を運んだ。

Mー1の"記念受験"に風穴を開けた完熟フレッシュ

思い巡らせば、子どもが達者な芸をする――、そのこと自体には驚きはない。芸能史をひもとけば、江戸期から角兵衛獅子のような大道芸があり、歌舞伎には役者の子による「初お目見得」「初舞台」という気の早い披露目があり、寄席演芸なら昭和の名人・六代目三遊亭円生が明治期に子供義太夫を経て落語家・橘家圓童として9歳で初高座を務めたエピソードがある。

映像の時代に入れば、戦後からの時代を背負った美空ひばりを頂きに、平成の芦田愛菜まで数多の子役スターが登場している。

これを「笑い・バラエティ」のジャンルに絞ると、筆者の記憶だと80年代からになるが、最初に押さえざるをえない強度でエマニエル坊や(1971~)がいて、掛布雅之に似ていることで人気を得たカケフくん(1977~)がいて、「あっぱれさんま大先生」で明石家さんまに見出された当時6歳の内山信二(1981~)あたりからは、ビジュアルインパクトに加え、内容を問われる局面に入っていった。

90年代以降は、吉本興業の漫才コンビ・りあるキッズが1996年結成で当時11歳同士。松竹芸能のまえだまえだは2007年結成で当時8歳と6歳だった。あと誰かいたかな…。

そしてゼロ年代はM-1というシステムが浸透したことで、漫才にトライする一般の少年少女が予選をにぎわせるようになる。だが彼らは、真剣にプロの芸人を目指しているというよりも「M-1にチャレンジした」という思い出づくりの内に収まっていた。

そんな思い出づくりシーンに風穴を開けたのが、完熟フレッシュとなる。

完熟フレッシュは40代を越えた元芸人(池田57CRAZY)がM-1への思い断ち切れず、父子家庭で当時中1の娘(池田レイラ)を誘い、2017年夏に父娘でコンビを結成してM-1に挑んだ。家庭の事情をドキュメントでぼやくネタで1,2,3回戦を突破。準々決勝まで勝ち上がり、思い出に収まらない爪痕を残した。
< 2017年11月3日「M-1グランプリ2017準々決勝~完熟フレッシュ」(浅草公会堂) >

レイラ「そもそも父子家庭とか言うのやめて、パパが売れない芸人をダラダラ、ダラダラ続けてたせいでママが出てったんだから」
57(パパ)「そこに関しては申し訳ないと思っているからさ、何年も前に芸人やめて今はまじめに働いてんじゃん」
57「それはさあ(泣)」
レイラ「芸人やってて売れないのは、罪だから、罪!」
57「息が出来ない~」
レイラ「みなさん、売れない芸人はもはや犯罪者です!」
57「それは極論だよ」
レイラ「そうだよ、今日出てる人なんかほとんど犯罪者です」
57「ほかの人いじっちゃダメだよ」
57「なになに」
レイラ「おまえら売れないうちに結婚なんか絶対にすんじゃねえぞ!」
57「もう、言葉の重みがすごいよ」
そしてM-1が終わって新年になると、完熟フレッシュは元旦深夜の「ぐるナイおもしろ荘 若手にチャンスを頂戴 今年も誰か売れてSP」に登場する。オーディション参加数916組から最終10組に選ばれての出演だった。

ここで、看板ネタを披露したあと、スタジオでのやりとりが以下だ。
< 2018年1月1日放送「ぐるナイおもしろ荘 若手にチャンスを頂戴 今年も誰か売れてSP」(日本テレビ) >

出川哲朗「レイラちゃん途中で、売れてない芸人は結婚しちゃダメだって、あれはレイラちゃんの言葉なの、それともお父さんの台本で言わされてるの?」
レイラ「やっぱりその台本見て覚えるんですけど、やっぱりやっていくうちに本気で思い始めた」
スタジオ「(大ウケ)」
57(パパ)「で、元嫁に、あのう最後のほうで言われてた、あの・・・あの・・・」
レイラ「(パパをツッコんで)ほら、大事なとこで噛む! 最初から黙っとけって」
スタジオ「(大ウケ)」
岡村隆史「まだ事務所はフリーなんですよね? 事務所は入っといたほうがいいですよね」
レイラ「入りたいです」
岡村「レイラちゃんはどっか入りたい事務所みたいのあるんですか」
レイラ「もちろん、ワタナベエンターテインメント」
岡村「今や、もちろんという! 吉本興業ではないという」
ここでは、漫才だけでなくスタジオのフリーなからみでも、池田レイラは堂々たる対応を見せ、頼もしいタレント性を印象づける。レイラはワタナベエンターテインメントを公開逆指名、完熟フレッシュは1月8日付けでワタナベエンタに所属する。

ちなみに「おもしろ荘SP」はこの数年、メジャーな賞レースと肩を並べる若手芸人ブレイク枠だ。

2013年:あばれる君(優勝)
2014年:日本エレキテル連合
2015年:おかずクラブ(優勝)、8.6秒バズーカ
2016年:(輩出なし)
2017年:ブルゾンちえみwithB(優勝)
2018年:ひょっこりはん、完熟フレッシュ

日本テレビには若手芸人にネタの門戸を開いてきた「エンタの神様」があるが、この「おもしろ荘SP」がここ数年ネクストブレイクの当たりクジを引いてきた実績を吸い上げ、「おもしろ荘SP」で結果を残した原石を日テレ看板番組に「今年注目の」という推しで順次出演させ、人気者に育成していくブレイクロードが確立している。

完熟フレッシュは、まさにこの日テレの若手芸人ショーケースから抜け出し、ブレイクロードに乗った。

「行列のできる法律相談所」(1/28)
「ぐるぐるナインティナイン 家族対抗ゴチ」(2/15)
「人生が変わる1分間のいい話」(2/26)
「しゃべくり007」(3/12)
「ヒルナンデス!」(3/14~)
「エンタの神様」(3/24)
「有吉ゼミ」(3/26)
「メレンゲの気持ち」(4/7)
「踊る踊る踊る!さんま御殿」(4/10)
「秘密のケンミンSHOW&ダウンタウンDX春の合体2時間スペシャル!」(4/12)

ほか、ほとんど日テレ優先でゴールデン帯に露出を重ね、知名度を上積みしていった。

ちなみに今年の「おもしろ荘SP」で優勝したのは「キレイだキレイだ」のホメ男と女装のレインボーだったが、この世界のコンテストは優勝がすべてとはならない審査外審査が並行しているのが常だ。結局、レインボーを差し置いて、日テレの女神(?)は完熟フレッシュ(と、ひょっこりはん)に微笑む2018年上半期となった。

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