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霞が関賄賂ブローカー「政官31人接待リスト」の破壊力

【霞が関リストラに意欲満々(時事通信フォト)】

東京地検特捜部の文科省接待汚職事件捜査が新たな展開を見せた。事件のキーマンとされる政・官界を股にかけたブローカーの「31人接待リスト」が流出し、そこに石破派大幹部の名前があるのだ。

文科省の接待汚職は佐野太・前局長(受託収賄容疑で起訴)が東京医大の補助金申請で便宜をはかる見返りに、同大が佐野被告の息子を「裏口入学」させた前代未聞のスキャンダルだ。そのなかで、特捜部が最も注目しているのは佐野被告と同大側をつないだとして収賄幇助容疑で逮捕された医療コンサルタント会社元役員の谷口浩司被告である。

その谷口被告の「接待記録」として検察筋から流出したのが前述のリストだ。本誌・週刊ポストが入手したリストには文科省、外務省、国交省、厚労省、金融庁、内閣官房の6省庁31人の名前があり、接待汚職で逮捕された文科省の佐野被告、前国際統括官の川端和明被告の名前も含まれている。

官僚ばかりのリストの中で唯一人の政治家が田村憲久・代議士だ。第2次安倍内閣で1年9か月にわたって厚生労働大臣を務め、現在は自民党政調会長代理の要職にある。石破茂氏の信頼厚い腹心として知られ、石破派副会長という派閥の大幹部でもある。

9月に迫る自民党総裁選挙では安倍晋三・首相と石破氏の一騎打ちの公算が高い中での流出である。

「検察の独立」を重んじたかつての特捜部には、政界捜査を進めるにあたって国政選挙や総裁選に影響を与えることを極力回避すべきという不文律があった。今回はまるで逆だ。

総裁選の渦中に、安倍首相を利するような対立候補の陣営がからむ“捜査情報”が流出すること自体、政治色がプンプン匂う。ノンフィクション作家の森功氏が語る。

「特捜部の捜査は不可解な方向に向かっている。文科省の汚職事件は『私立大学研究ブランディング事業』の助成金をめぐって起きた。この事業は安倍首相のお友達の下村博文・文科相時代に創設され、助成対象には加計学園の名前も出てくるという伏魔殿です。

捜査が東京医大から他の助成先に延びれば政権は打撃を受けるとみられていた。ところが、特捜部はそこまで踏み込まず、逆に安倍政権にとって好都合な政官の接待リストなるものが浮上した。

森友学園を舞台にした公文書改竄事件では、大阪地検特捜部が財務省幹部を軒並み不起訴にして安倍首相を守ることにつながったが、今度は東京地検特捜部が結果的に官邸の先兵の役割を果たし、首相の政敵つぶしの“サポート”をする構図になるのではないか」

◆逆らえば“お取り潰し”になる

首相サイドにとってリストの“政治的利用価値”はそれだけにはとどまらない。安倍政権が憲法改正と並んで3期目の政策の柱として打ち出そうとしているのが中央省庁再々編だ。

安倍首相の盟友の1人、甘利明・自民党行革推進本部長は9月に正式に首相に提言を出す。菅義偉・官房長官も「時代の要請に応じるのは大事だ」と再々編に前向きだ。

省庁再々編の一番の標的が第2の“消えた年金”問題(※注)や働き方改革のデータ改竄などで散々政権の足を引っぱった厚労省。党行革推進本部の原案では、同省の2分割案が検討され、甘利氏ら首相側近の再編推進派と分割に反対する厚労官僚や自民党厚労族議員との綱引きが始まっていた。

【※注/昨年9月、厚労省が共済年金の加算制度で事務処理ミスなどがあり、約598億円の年金支給漏れがあったことを公表した問題】

その最中、検察筋から「接待リスト」が流れて厚労省を疑惑が直撃。再編推進派にすれば、官僚を黙らせる格好の材料になる。

「安倍首相は森友・加計問題では文書改竄など役所からの情報漏洩で窮地に立たされた。中央省庁の再々編を打ち出せば、官邸は各省庁に“逆らえば再編の対象にする”と締め付けることができる。再々編は霞が関の粛清の武器になる」(森氏)

しかも、中央省庁を整理統合するのは大事業で、1内閣では終わらない。菅氏や甘利氏など安倍政権で力をつけた政治家はそろそろポスト安倍時代の生き残りを考えなければならないが、安倍政権のうちに中央省庁再々編のレールを敷いて主導権を握れば、この先も霞が関と政界に睨みを利かせることができる。リストはそのための切り札にもなる。

総裁選の政敵潰しと霞が関の粛清、1通のリストが永田町と霞が関を大きく揺らし始めた。

※週刊ポスト2018年9月7日号

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