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土地の権利関係処理

 農地バンク(農地中間管理機構)という制度が、政権の肝いりで進められていますが、あまり上手く行っていません。ウェブで検索しても、利用率がどんどん下がっていっています。各都道府県に設置された管理機構が事業を行っているものの、手続きの煩雑さ等があるとされています。

 たしかに、全農地の2割に当たる93.4万ヘクタールもの農地が未登記または登記されているかどうか不明な状態であり、そこに「貸したい人」、「借りたい人」が居るのは事実です。そこに机上でミクロ経済学のグラフを書けばマーケットが出来ていく事になります。発想はその辺りでしょう。しかし、これはあまりに人間社会の機微を排除した理屈です。農家の方は農地に強い思い入れがあり、それぞれの地域の歴史、文化を脇に置いた議論は通用しません。

 当初から、「元々賃借する予定だった土地を、行政が『(利用率を上げるために)どうしても』と言うから、機構経由でやる事にした。」というケースが結構ありました。機構経由でやると色々と行政からのサポートが得られるのですが、その賃借の一部は機構があろうがなかろうが成立したわけですから、ちょっと首を傾げてしまうような状態です。

 あまりに活用が進まないので、先の国会で農業経営基盤強化促進法を改正しました。法改正の最大の柱は、所有者不明の農地を意欲ある農家や農業法人などの担い手が借りやすくしたことです。現在、担い手が所有者不明農地を利用する場合は、農地バンクが間に入って担い手に貸し付ける形を取っていますが、所有者が複数いる農地の場合は半数以上の所有者の同意が必要な事が障害となっていたのを、要件を大幅に緩和しています。その他、貸付期間を5年から20年に大幅延長する等の措置も講じられています。

 何としても、不人気な農地バンクの活用を進めようとする強い政権の意図を感じます。ただ、残念ながら、こんな形で泥縄式にやっていっても農地バンクの活用が進むようには思えません。

 ただ、私は所有者不明の農地を貸し付ける際の要件緩和は興味深いと思いました。今回の法改正では、例えば、固定資産税を納めているような実質的な所有者が1人でもいれば農地を貸し付けできるようにしています。つまり、法定相続を通じて所有権を有する者が多くなり過ぎたため、特定して同意を得るまでに多大な労力とコストが掛かっている点を改善しようとしています。

 私が注目したのは、所有者不明の農地の問題は、日本全国に広がる空き家問題、空き地問題と同じ構造であり、今回の法改正を可能とさせた理屈は、もしかしたらこれらの問題へのブレイクスルーになるかもしれないと思ったからです。法定相続が2-3回入ると、大体権利者が30-50人くらいになって、その売買、賃借の際、ハンコを集めるのが困難となり、空き家、空き地の活用が進まないという話は全国津々浦々にあります。今後、時間が経てば経つほどに権利の分散は更に進むでしょう。その手続きを簡素化できる仕組みの萌芽を今回の法改正の中に見出せるかもしれません。

 普通に考えると、私有財産の所有者が分散している事に対して、その一部(実質的な所有者)のゴーサインで賃借できるという仕組みは、憲法上の財産権との関係まで絡む厄介な問題のはずです。どういう理屈で、農林水産省が内閣法制局との間でこの辺りをクリアーしたのかは分からないのですが、農地でこのような仕組みが可能なのであれば、別のカテゴリーの土地、ひいては土地一般でも同じようなアプローチが導入できるのではないか、という期待感はあります。

 法改正そのものよりも、その法律を作る時に駆使した理屈の方にとても期待感があります。

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