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地方議員の「なり手」が不足している

けさの中日新聞の一面アタマ(トップ)のニュースに、「地方議員、なり手不足52%」の文字が躍っていた。
全国52%の地方議会の議長がそう思っているという共同通信のアンケート結果だ。

さて、実際どうなんだろう。
もしその通りだとしたら、都市部より地方都市、地方都市より町村で、その傾向が目立つのだろう。
原因としてよく挙げられるのは議員報酬だが、ここでは議員に立候補する人の出身職業から考えてみたい。

かつて、三重県にあるような都市では、県庁所在地の津市でも、商業都市と言われた松阪市でも、議員の職業欄には「農業」と書く議員が、30人ぐらいの定員の中で7人も8人もいた。
議員のなり手としては「農業」が一番の主流だった。
ところが今では一番少ない部類に入る。

その原因は、マクロ的に見ると、それだけ日本の農業者が減っているということ。それを背景に豊かな農村を有力な集票基盤に当選してくる議員は減っている。
立候補して落選するのではなく、初めから候補者として出てこなくなった。

松阪市議会では、ほんの10数年前までは郊外の農村地帯に住む農家出身の議員が大手を振り、農村系議員だけで複数の保守系会派が存在した。しかし、市町の合併を機に選挙区が広域化し、小さなエリアだけを支持基盤に選挙をしても当選が難しくなったことも、農業の方の立候補意欲を減退させる引き金となっただろう。

農村では人口が減り高齢化が進んでいるうえ、その中核である農家が減り、後継者は都市に就職していて、地域とはかかわっていないので地元の自治体のことに関心や利害を持つ機会は少なくなり、議員職を考える若手が減った等々の背景を探ることもできる。

この部分は、日本の縮図のようなもので、国会議員ではどうだろう。同じような傾向にあるとは言えないだろうか。

また、産業界から労組代表として立候補してくる人も、労組の組織力の低下に伴うなどしてガクッと少なくなった。

ただ、農村社会や労組を支える産業界が安定し、安定的に議員を供給していた時代は、地域・団体に選んでもらって(推薦)立候補して当選確実な状態で議員になった人が多く、自ら“出る杭”になろうと立候補する人は少なかった。

そのような状態の中での議会の空気は同じで、議会の空気をかき回す議員はおらず、独特な地方議会文化を形づくった。
ときに議場で大立ち回りをし議会を紛糾させるのも、わがままを言うのもいたが、コップの中の争いにすぎない。
そのような猛者がときに暴れるぐらいでは、独自に形成された同質の議会文化は揺るがなかった。

しかし、時代の変化で、議会を受け入れる自治体のキャパ(財政)が厳しくなり、有権者住民の議会を見る眼も厳しくなり、同質性文化にかたくなであることは難しくなった。
それとともに、議員の主たる供給源だった農村社会の変容が加わって、新しい種族(たとえば、公務員試験よりも選挙のほうが圧倒的に競争率が低いのでねらい目ととらえるようなタイプ)が議員のなり手として台頭しつつある。

地域(農村を含む)・組織(労組等)が推さなければ立候補しにくかった議会に、そもそも推すべき地域や団体が疲弊したことで、自分の意志で立候補を考える人が増えた。その分、初めて立候補するときの年齢は若返った。ただ、そのトータルな数が、地域や組織から安定的に人材が供給されてきた数が不足するようになった分をカバーしきれていないということかもしれない。

けれども、それらは都市部に見られる傾向で、議員報酬だけでは生計を立てられない町村議会議員の立候補にはつながりにくい。

こうしたもろもろの結果を全体で見れば、議員のなり手は不足しているということになるのだろう。しかし、それは議員が悩むことではなく、それぞれの自治体の有権者の皆さんが、わが市・町・村の議員の数の話だけでなく、はたまた議会は要るのか要らないのか(地方自治法第94条で、町村は議会を設置せず、有権者による総会に置き換えてもよい)、要るとすればどんな議会にすればよいか、だから議員定数はどのくらいにしたほうがよいかを考える機会にしていくきっかけにつながっていくとよいと思う。

2018年8月26日付 中日新聞
「地方議員、なり手不足」52% 全国の議長調査

各地の地方議会で議員選挙の候補者が減り、52%の議長が、なり手不足を感じていることが、共同通信の全国アンケートで分かった。人口減少や住民の関心低下に危機感を示す意見が目立つ。人口規模が小さい自治体ほど議員のなり手確保に苦労しており、調査に応じた九百十六の町村議会に限ると59%が不足を感じていた。今後の対策では、議員報酬の引き上げが有効との回答が最も多かった。

 全ての都道府県と市区町村(計千七百八十八)の議長を対象として六~八月に調査し、99・2%の千七百七十四人が答えた。

 議員のなり手が少なくなっていると「感じる」は全体で18%、「どちらかといえば感じる」は34%。一方で「感じない」25%と「どちらかといえば感じない」18%を合わせると43%だった。四十七都道府県でも福井や滋賀など十五府県(32%)が、なり手不足と回答した。

 不足の主な理由は「中山間地域の人口減少が加速し、地区を代表する候補の擁立が厳しい」(長野県喬木村)「地方政治に対する住民の関心のなさを感じる」(鳥取県米子市)などだった。

 不足を感じない議長からも「自営業や定年退職者に偏る」(福島県柳津町)「二十~四十代のなり手がいない」(沖縄県西原町)との指摘があった。

 今後の対策(複数回答)は、報酬引き上げが48%でトップ。「優秀な人材を広く求めるなら相応の報酬を」(兵庫県稲美町)「兼業では議員活動に集中できない。専従できる報酬が必要」(熊本県天草市)といった意見が寄せられた。

 二番目は住民の関心喚起の38%。自治体と取引のある企業の役員などが議員になれない兼業制限の緩和・撤廃は25%。「人口の少ない地方では事業者が町のリーダー的存在であることが多く、立候補制限は地域の損失」(静岡県西伊豆町)などの指摘がある。

 複数の選挙区がある都道府県と政令指定都市以外で、前回の選挙(補選を除く)が無投票と回答したのは二百三十市町村で前々回百八十二の一・三倍に増加。長野県生坂村が連続四回、北海道新篠津村や福井県若狭町など六町村は連続三回と答えた。

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