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社会保障と税を考える(2.インフレ、経済成長で解決というのは幻想)

国は毎年多額の借金をしている。増税(増税以外の収入増加策でもよい。以下同じ)や歳出削減で収支のギャップを埋めることが必要

一見、当たり前のように見えるこの命題、果たして正しいのでしょうか

正しいとすれば、収支のギャップを埋めるために、増税と歳出削減をどう組み合わせるか、というところに議論は絞り込まれていきます。
一方で、正しくないとすれば、増税も歳出削減もすることなく、問題を解決できるという選択肢が出てきて、議論の大前提が揺らいでしまいます。

この命題が正しくないとする主張を、あちこちで見かけるようになりました。
私の見るところ、その主張の根拠は、次の4つに大別できるように思います。

・デフレ解消のためにお札を大量に刷って、それを政府の収入にすればいい
経済成長すれば税収は十分に増えて、ギャップは埋まる
・国債が国内で消化されている限り、国の借金は国民の資産だから問題ない
・収支のバランスを取るのはもうムリ。破綻させてリセットしてやり直すのがいい

いずれもなかなかそれらしくて、経済にはまったくの素人である私の知識では、的確に反論するのは難しいです。
なので、この4つの主張を支持する人への論理的な反論はあきらめ、この4つの主張に対する私の感覚だけ書いておきます。

「そんなうまい話があるわけねーだろっ!」

これだけで私の言いたいことは過不足なく表現できていますが、蛇足ながら、そう感じるに至った拙い思考の流れを開陳しておきましょう。

1.デフレ解消や経済成長は必要だが、それで借金がなくなる訳ではない
「デフレ解消が必要」「経済成長が必要」という点には、全く異論はありません。

それを一歩進めて、今はデフレ継続中で、経済成長への足取りも弱いので、「今のタイミングで増税や歳出削減をすべきではない」という主張も、私はそうは考えないですが、あり得る主張として理解できます。

ここまでであれば、冒頭の「増税や歳出削減が必要」という命題は否定されていません。
「いつやるか」という時間軸の違いに過ぎず、「いずれは必要」という点では一致していますから。

そして、まともな経済学者や政治家が、デフレ解消や経済成長を理由として増税に反対する場合、このタイミングの問題に限定して主張しているように思います。
しかし、一部の方々の間では、それを拡張して、デフレ解消や経済成長さえすれば国の借金の問題は解決する、という主張もあるようです。

経済成長については、収支のギャップを埋めるには年5%以上の成長が必要とされており、今の時代にそりゃムリだろということで、多くの人は納得するでしょう。

より意見が分かれるのは、「デフレ解消のためにお札を大量に刷って、それを政府の収入にすればいい」という主張が正しいかどうか。

この主張が正しいかどうかを理解するには、そもそも貨幣とは何か、中央銀行は何ができるのか、という点についての深い知識が必要ですね。

私にはそのような知識はないですが、直感的には、中央銀行が打ち出の小槌のように無限に政府の収入を生み出せるわけないだろう、と思います。

国内に流通するお金の量はコントロールできるが、お金を増やした分が政府の収入になるわけではない、あるいはルール上そうできるとしても、市場の見えざる手の制約がかかり、事実上その量は制限されてしまうだろう、というのが私の理解。

あ~、実に拙い知識で書いていて恥ずかしいです。
「そんなうまい話があるわけねーだろっ!」の方が、私の考えに近いですね。

2.国の借金=国民の資産論は、お前のモノは俺のモノというジャイアン理論
「国の借金は、国債が国内で消化されている限り、国民の資産でもある」という点にも、全く異論はありません。

国外から借りていない限り、資産と借金を相殺することで、借金を返すことは理論上は当然に可能ということになるでしょう。

ただ、ちょっと待った。
「資産と借金を相殺」って軽~く書いたけど、資産を持っているのも借金を背負っているのも同じ日本人ではあっても、別人じゃないの?

ジャイアンがのび太から1万円借りているとします。
俺たちの仲間以外からは借りてないので、仲間内だけで借金を解消できるから安心だよな、とジャイアンが主張しているような……。

[画像をブログで見る]
↑「ジャイアンが主張」のイメージ画像



国債は確かに総体としての「国民」が、銀行預金などの形で保有していますが、国民1人1人ごとに保有している額は違います。
借金も総体としての「国民」が負担しており、最終的には何らかの形で返済しますが、返済の財源をどこに求めるかで、国民1人1人の負担額は違ってきます。

「国の借金=国民の資産」なので問題ないというのは、国民の全資産を没収すれば借金は返せると言っているに過ぎないと感じます。

それは保有資産に課税をするのと同じことで、消費税との違いは、資産というストックへの課税か、消費というフローへの課税かの違いでしかないと思います。

これも実に拙い知識で書いていて、読む価値のない文章だなぁ。
「そんなうまい話があるわけねーだろっ!」、以上!

3.「リセット」と言いたい気持ちは分かるけど、さすがに怖くない?
ここまでは、そんなことできねぇだろという話でしたが、いったん破綻させてリセットしてやり直すというのは、やろうと思えばできそうな話。

社会保障にも税にもあっちこっちにひずみがあって収拾がつかず、さらに、もう取り返しのつかない1,000兆円の借金があることを思うと、え~い、もう全部放り出してやり直しだ!と言いたくなる気持ちは分からないではありません。

これ、どうなんでしょうね。
社会保障や税制をゼロベースから作り直すという意味での「リセット」ならありでしょうが、いっそ破綻させてチャラにした方が後が楽という意味での「リセット」がうまくいくとは、私には思えません

国民が簡単に破綻のシナリオを選ぶとは思えず、弥縫策を講じて危機をずるずると先延ばしにし、事態の悪化を招く可能性の方が高いでしょう。
また、仮に破綻のシナリオを選べたとしても、国際政治・国際経済が、そんな無責任な国にやさしくしてくれるとは思えません。

4.まとめ
いずれにしても、私は、上の4つのような主張をする人に的確に反論できるほどの知識は、持ち合わせていません。

ただ、インフレ、経済成長、財政破綻させてのリセットで問題を解決できるというのは幻想としか思えない、というのが私の感覚です。

社会保障と税の議論が果てしなく拡散し、結論が出せなくならないよう、そういう感覚がみんなに共有されて、論点が絞り込まれていくといいなぁ、と願っています。

特に、デフレ解消や経済成長を理由に、タイミングの問題として現時点での増税に反対している、まともな経済学者や政治家の方々には、こういう幻想に基づく主張と同一視されないよう、気をつけてほしいと思っています。

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え?大赤字なんだから収入増か支出減が必要なんて当たり前だ、何くだらないこと長々と書いてんだ、って?

誰もがそう思っているのであれば、こんなうれしいことはありません。

私が書きたいのは、自分の主張ではなく、国民全員が議論の土台として共有できる客観的な事実関係です。

私の書く内容は既に誰もが知っていて、今さら聞いても何の役に立たないムダなものだというのであれば、すばらしいことだと思っています。

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