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アングル:カジノ運営権獲得に向け、海外企業が大阪でPR夏の陣


[大阪市 22日 ロイター] - 7月末のある夜、天神祭のフィナーレを飾る豪華な花火が、大阪の空を明るく染めた。今回初めて花火のスポンサーとなったのは、マカオのカジノ運営会社、メルコ・リゾーツ&エンターテインメント<MLCO.O>。

この数時間前、41歳の大富豪、メルコのローレンス・ホー最高経営責任者(CEO)は、松井一郎・大阪府知事と面会していた。それに先立ち、同氏は自然災害対策のために大阪府に多額の寄付を行った。

MGMリゾーツ・インターナショナル<MGM.N>のジェームス・ムーレンCEOも、大阪にいた。寄付は行わなかったが、チャーターした船に約100人を招待し、ブルーマングループのショーでもてなした。

同時期に行われたこうしたパーティーやイベントは、日本初のカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を目指す大阪に、カジノ運営会社として存在をアピールする試みだ。この数日前、国会ではIR実施法が成立し、最初の設置場所として3カ所が選ばれることが決まった。

政治的な強い支援、施設に利用可能な土地の存在、地元企業の後押しに支えられ、人口270万人を抱える大阪市は、カジノを設置する日本初の大都市になるとみられている。

MGM幹部、エド・バワーズ氏は「東京は手を上げていないし、横浜も手を上げていない。大阪は手を上げた」と話す。

大阪でのカジノ運営受託を目指す外国企業は、この他にギャラクシー・エンターテインメント<0027.HK>、シーザーズ・エンターテインメント<CZR.O>、ゲンティン・シンガポール<GENS.SI>、ラスベガス・サンズ<LVS.N>などがある。

モルガン・スタンレーの試算によると、大阪でカジノを運営すれば、年間約40億ドルの売り上げを生み出すという。

経済規模や政治的な力で東京の後を追う大阪にとって、IRは観光産業を拡大させ、収益を増やす手段となりえる。大阪では、2024年までにIRをオープンさせたいとしているが、自治体が事業者を選定した後にも、政府の承認が必要となる。

松井大阪府知事は、ロイターのインタビューで「国が観光立国の目標を掲げるなか、大阪が観光客誘致のトップエリアになりたい。観光産業をしっかりと大阪の産業の柱の1つに育てていきたい」と述べた。

カジノ運営会社の幹部、ロビイストや政治家など数十人への取材を通じ、カジノ誘致に前向きではない大阪府民の支持を得ようとする外国企業の高度なキャンペーンの姿が明らかになった。

一方、大阪府はカジノ事業者選定に関わる不透明さ、不正を一切排除するため、カジノ事業者との接触には厳格なルールを定めている。

「IR推進局における事業者対応等指針」では、「事業者提案や面会は、原則として庁舎内において2名以上で対応する」とされているほか、事業者との会食・パーティー、事業者から宣伝用のカレンダーや文房具などの事務用品を受け取ることが禁じられている。

現時点で、少なくとも8つの大手カジノ運営業者が大阪府と接触している。そのうちMGM、サンズ、メルコは、日本でのIR事業参入に関し、100億ドル以上の投資をする準備があると表明している。

<ドリームアイランド「夢洲」>

大阪は、「夢洲(ゆめしま)」と呼ばれる大阪湾の人工島にカジノを設置したいとしている。

夢洲は、1970年代の大阪における経済成長期に造られた。海岸沿いのエリアはかつて、化学工場や造船所が並び、多くの労働者が住む地域だった。

バブル経済の崩壊で大阪も打撃を受け、20年間にわたりこのベイエリアと大阪の街自体に活力を取り戻すことができずにいる。

しかし、大阪への外国人旅行者は5年間で4倍超に増え、2017年には過去最多の1100万人の外国人客が大阪を訪れた。「食い倒れ」で知られる食べ物の魅力と近隣の観光地へのアクセスのよさが観光客を引き付け、カジノ事業者の期待も高まる。

メルコのホーCEOはロイターの電話取材で「私の人生で最大のチャンスだ」と述べた。

大阪府の資料によると、2012年から2018年5月までに、11のカジノ企業の幹部が「表敬訪問」として、松井府知事と面会した。2017年5月以降、IR関連企業の関係者は、職員と119回会っている。大阪府は職員と会った企業の内訳については明らかにしなかった。

<心をつかむ>

地元メディアの報道によると、メルコによる直近の大阪府への寄付は5000万円とされるが、これが初めてではない。4人が亡くなった今年6月の大阪府北部地震と7月の水害被害にも、メルコは寄付を行った。

メルコは災害への寄付の額を明らかにしなかったが、天神祭の花火のスポンサー料は約9000ドルと試算されている。

メルコ日本法人の白男川亜子社長はロイターに対し、寄付について、大阪府に有利な扱いを求める目的ではないことを説明したと話した。

白男川氏は「やり過ぎと思われるかもしれないが、たまたま知事との面会が花火と同じ日になっただけ」と述べた。

マカオにおけるメルコのライバル、MGMは大阪でさらに大きなプレゼンスを築こうと、事務所を拡大している。同社は、大阪の府民と企業の心をつかみたいと話した。

天神祭の前に、MGMは船上パーティーへの招待券を、地元の商店街のくじ引きの景品に提供した。

IR事業への参画を目指す中小企業の組織、「IR推進100社会」の堀感治事務局長は、MGMは着実に大阪企業との関係を築いていると指摘する。

MGMのバワーズ氏によると、東京をベースとするGRジャパンは、MGMの代理としてロビー活動を展開している。GRジャパンは今年2月に大阪事務所をオープンし、副所長として、松井知事が代表を務める日本維新の会の元衆院議員を雇った。

ラスベガス・サンズは、地元自治体や企業、地域コミュニティーとの関わりを重視していると話す。同社のシェルドン・アデルソンCEOは、2017年9月に松井知事と面会している。サンズはロイターのインタビューの申し入れを拒否した。

<センシティブな話題>

NHKが3月に行った世論調査によると、大阪府民の42%が、ギャンブル依存症への懸念などからカジノに反対、賛成は20%に満たない。

大阪府では、住民の支持を得ようと、依存症に関するセミナーを行ったり、経済効果を宣伝している。府と市の共同内部組織であるIR推進局によると、IR設置で、年間約8万人の雇用が生まれるという。

しかし、カジノ反対運動をしている阪南大学の桜田照雄教授(経済学)は、IRの雇用は、ほとんどが非正規で賃金も低いと指摘する。「彼らは、観光産業と外国人の需要で地元経済を活性化させようとしているが、これは持続可能なモデルではない」と述べる。

カジノ事業者による大阪府への積極的な働きかけに対し、これまで不当行為に関する目立った告発はない。

唯一、問題になりかけた事案は、大阪府との間でカジノに関する3億7700万円のアドバイザー契約を結んでいるPwCコンサルティング合同会社の職員1人が、MGMの船上パーティーに出席していたことだ。違法ではないが、注意を受けた。PwCの広報担当者は、契約条項に違反はしていないと述べた。

松井知事は、今後の事業者選定のプロセスについて「今の時点では、IRのこの事業に対しては、フルオープンで、住民のみなさんに不公平や何かそこに疑いを持たれないようにしていくのは当然」とし、こう述べた。「大きなおカネが動くビッグビジネスになるのは、もう間違いないわけですから」──。

(Thomas Wilson, Mari Saito 翻訳:宮崎亜巳 編集:田巻一彦)

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