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同性婚公表から1週間 ロバートキャンベル氏が心境を語る「僕の中で『でこぼこ』がなくなった」

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BLOGOS編集部

日本文学研究者で米国出身のロバートキャンベル氏(61)が同性愛者であることを明かし、性的少数者への差別発言をした自民党・杉田水脈衆院議員を批判した手記が大きな反響を呼んでいる。手記の発表から1週間が経ち、キャンベル氏が公表するに至った経緯や心境の変化を東京都内の自宅で語った。

はじめは「反論するのは僕じゃない」と思っていた

――自民党・杉田水脈衆院議員の発言を受け、党が「配慮欠く」として同氏を指導する異例の事態になりました

寄稿が掲載されている『新潮45』が発売(7月18日)された後、すぐに購入して読みました。自身の経験や、自分の身近なところで起きたできごとを書くことは良いことだと思います。しかしそこから「こういう特徴を持っている人たちは、すべてそうである」と結論付ける、同氏の主張というのは、反論するに値しないくらい事実に基づいておらず、論理的に破綻しているものでした。それに反論する必要はあると感じましたが、はじめは「それは僕じゃないな」と思っていました。そこに正面から発言をする衝動というか、体温が上がらなかったのです。

ただ、その寄稿が取り上げられていく中で、もうひとりの議員(自民党・谷川とむ衆院議員)が「(同性愛は)趣味みたいなもの」と発言しました。それが「議員が言っているからこのままでいいんだ」「会社の中のセクシャリティに関わることを話し合う必要はない」といった考えに対する「裏づけ」となっていく風潮を見ていて、8月頭にもう一度、雑誌を読み直しました。

――もう一度読んで印象は変わりましたか

メディアでは、特に彼女の「生産性がない」という発言が取り上げられており、それは論外です。ただ、もっと根深く侵食していて当事者を苦しめかねないことがふたつ、書かれているなと感じました。まずひとつは

LGBTの両親が、彼ら彼女らの性的指向を受け入れてくれるかどうかこそが、生きづらさに関わっています。そこさえクリアできれば、LGBTの方々にとって、日本はかなり生きやすい社会ではないでしょうか
出典:月刊誌「新潮45」2018年8月号での杉田水脈氏の寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」

という部分です。アメリカでも日本でも、これまで知り合ってきた当事者と話をしていると、親は打ち明けるのに最も高いハードルがある。一番打ち明けることができない存在なのです。

色々な家庭があると思いますが、親の期待に応えたいと子供は思うものです。でも、今回のような場合、親の期待というのは、おおよそ「自分と同じように異性者と結婚して子供をつくる」というものです。それは親が、社会の中で子供たちに元気に生きてほしいと思っているからこその思いでもあります。それなのに、子供である自分にはその選択はない、あるいは子供をもうけたいけれども、愛する人が女性ではない、男性ではないという現実があるのです。

親に事実を伝えたとき、「その瞬間に自分の存在まで否定されかねない」ということへの恐怖は、上司や同級生に対するものよりも、はるかに大きいものです。それを「自己責任で、家族のなかで解決すれば問題ない」とすることに、残酷さを感じました。

もうひとつは、自身が女子校出身という経験に基づき、

女子校では、同級生や先輩といった女性が疑似恋愛の対象になります。ただ、それは一過性のもので、成長するにつれ、みんな男性と恋愛して、普通に結婚していきました。マスメディアが「多様性の時代だから、女性(男性)が女性(男性)を好きになっても当然」と報道することがいいことなのかどうか。普通に恋愛して結婚できる人まで、「これ(同性愛)でいいんだ」と、不幸な人を増やすことにつながりかねません。
出典:月刊誌「新潮45」2018年8月号での杉田水脈氏の寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」

という発言。つまり、異性と結婚しなければ不幸だということです。「不幸」「幸せ」の価値判断を勝手におこなっている、これは言うまでもなく、事実に基づいていません。

BLOGOS編集部

そうした著しい事実誤認を政策の形成に関わる政治家が発言することは、短絡的なだけではなく、非常に重いものでした。そして、いまこの瞬間にも、自分の皮膚感や周りの空気を見ていて「自分はやっぱり人とはちがうんだ、どうしよう」と考えている10代、20代の若者たちがいます。彼らが読んだとしたら、きっとすごくげんなりするだろうなと思ったのです。その思いが僕の中に訪れたときに、やはり「間違っている」と伝えないといけないと思いました。

反論するために自分の立場を明らかにした

――最終的に公表をするまでに不安はありましたか?

今回、手記を書いたときはお盆休みで都外にいました。日常から少し離れていたということもあったのかもしれません。しばらく抱えていた、もやもやした思いをどこかで発言をしたほうがいいかなと思うようになりました。そして反論としての僕の考えを届けるためには、自分の立場を明らかにした上で、「だからここが間違っている」と書かざるを得ないと思いました。

僕には20年近く共に人生を歩み、昨年アメリカで結婚をしたパートナーがいます。僕ひとりのことではないため、パートナーにも手記を書くことを相談をしたところ「いいじゃない」と受け入れてもらうことができました。反論する内容はまとまっていたので、具体的に僕の背景や経験として何を載せるのかということを二人で話し合うことにしました。

僕は一度大きな病気をして入院したことがあります。その際、パートナーとの関係を医師や看護師さんら病院の方々に説明し、ありがたいことに非常に良くしていただきました。一方で、病院で知り合った人たちからは「家族が付き添いにきているが、パートナーとの関係を伝えていないため相手を呼ぶことができずさびしい。会えていいね」ということを聞いていたため、そのことを伝えることにしました。

また、パートナーとは、どちらかが先にこの世を去ったときに何か不自由が残らないかということを時折話し合っていたので、そのことも付け加えることにしました。完成したころには夜12時を回っていたでしょうか。ホームページをちょっとクリックして手記を投稿しました。

――寝つきが悪くなりませんでしたか

いえ、まったく。けろりと寝てしまいました。ただ、これは笑い話なのですが、翌日どんな反応があるかなとパートナーとパソコンを開いてチェックしてみたところ、実は反応はゼロだったのです。ブログの更新も滞っており前回の投稿が今年の4月だったので、「まるで墓場のようだから誰も見てないのかもね」とジョークを言ったり、ふたりで自分の投稿にいいねを押して「いいね2」にしたりして、くすくすと笑っていたのです。

ただ、その翌朝にもう一度フェイスブックとツイッターで発信をしたら、たちどころにたくさんの方が気づいてくれて。その後も次々とメッセージが届き、メディアからも問い合わせを受けることとなり、瞬く間に全国へ拡散されていきました。

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