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台湾の国家承認

 今年に入ってから、ブルキナファソ、ドミニカ共和国、エルサルヴァドルが、台湾(中華民国)承認から北京(中華人民共和国)承認に切り換えました。台湾承認国は、もう17ヶ国にまで減っています。「国家承認」とは、どの政府を中国の正当政府と認めるかという事でして、台湾と北京を同時に承認する事は、双方とも受け入れていません。台湾か北京かを選択する事が求められます。

 多いのは南太平洋の島嶼国、カリブの島嶼国で、それに若干のラテンアメリカの国くらいです。例えば、アフリカでは、20年前くらい台湾承認国は結構多かったのです。記憶しているだけで、セネガル、ブルキナファソ、リベリア、ガンビア、ギニアビサオ、ニジェール、チャド、サントメプリンシペ・・・15くらいあったはずです。しかし、今となってはスワジランドだけになりました。

 私がセネガル在住時、セネガルは台湾承認でした。当時の相場は、台湾を承認すると手付金で大きな国なら100億円、小さな国なら50億円でした(なお、セネガルは「極めて大きな国」に入ります。)。裏金っぽい所がありまして、大体、大統領の私腹を肥やすのに役立っていました。その後、ほぼ3-4日に1回のペースで台湾の援助案件が新聞に出ていました。援助をエンドレスに継続する事が、承認を繋ぎ止める唯一の手法だったわけです。

 ヒドいケースでは、アフリカの某国大統領が台湾に「大統領選挙の費用出して」と依頼し、さすがに台湾が断ったら、スパッと台湾承認→北京承認に切り換えられたという悲しい物語があります(なお、その大統領はその後クーデターで放逐されましたが)。今回、エルサルヴァドルもどうやら港湾開発で巨額の資金を要請したものの、台湾側が断った事がきっかけの一つになっているようです。

 20世紀の内は、札束で頬を叩く競争で台湾が勝っていたのですが、もう北京は札束合戦に負けなくなったという事なのです。馬英九政権の時代は、北京による承認引っぺがしオペレーションは沈静化していましたが、蔡英文政権になってから、これみよがしに北京の引っぺがしオペレーションが強化されています。

 もう、台湾はこの承認獲得合戦は止めた方が良いと思います。まずもって、新規で台湾承認になる国はもう出て来ないと見ていいでしょう。むしろ、更にラテンアメリカやカリブの中で遠からず北京承認に切り換える動きが出てくるでしょう。

 その代わり、国際社会は台湾を経済的にどんどん取り込む動きをすべきです。台湾にとっても、国家承認というメンツを追うよりも、そちらの方が遥かに有益です。

 そういう観点から、私は昔、条約課補佐時代に「日本と『台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域』との間で自由貿易協定を締結できないか。」という事を結構真剣に研究した事があります。

 今、台湾はWTOに加盟していますが、それは「中華民国」でも、「台湾」でもなく、「台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域」という名称で加盟しています。WTOに加盟できるのは、国のみではなく、「独立の関税地域」でも加盟できるからです(例えば、香港もそれに該当します。)。

 マルチ(多数国間)でのお付き合いが、「独立の関税地域」である台湾とやれるのなら、バイ(二国間)でも同じ理屈でやれるんじゃないかな、と思って、論理的にかなり追求したのです。実際、シンガポールやニュージーランドは台湾とFTAを締結しているわけですし、法的に絶対超えられないという事でもないだろうと思ったわけです。ただ、日本と台湾で二国間で向き合って自由貿易協定を締結するのは、(政治的なテーマ以前に)法的論理構成としてもなかなかハードルが高かった事はよく覚えています。

 バイが難しいのであれば、TPPに誘い入れる事を検討してはどうかと思います。TPPは実は「独立の関税地域」が入って来る事を想定している協定です。第一章の「冒頭の規定及び一般的定義」の中で、「『締約国』とは、この協定が効力を有する国又は独立の関税地域をいう。」という規定があります。通商を長くやっている人間であれば、これを見れば「ああ、台湾が将来入って来る事も排除はしてないんだな。」という事がすぐに分かります。

 台湾が「国家承認」という外交上の基礎中の基礎の部分で苦しくなってきているわけですから、ここは経済面での誘い入れを積極的にやってみてはどうかと思うのです(今でもある程度の検討がなされているのは知っていますが、更にアクセルを踏んで。)。上記の通り、最低限のツールは揃えられています。

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