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『外国人労働者』を『人』として受け入れる~ただし、移民政策をヒューマニズムだけで語るべきでない

前回前々回と、外国労働者政策の現状と今後について書いてきた。技能実習生の送り出し国に技術を移転することを建て前に掲げながら、労働者不足を補うために利用されてきた技能実習生制度は、明らかに限界が来ている。私は、外国人を正面から労働者として受け入れる政策転換に基本的に賛成だ。

ただ、どうも『外国人労働者』という言葉がしっくりこない。何か、労働力という塊がやってくるというイメージがぬぐえないからだ。一方で、政府が使いたがらない『移民』という言葉は、実に生々しい。一歩、踏み出すためには、彼らの人生や生活も含めて受け止める覚悟が必要だ。私があえて『移民』という言葉を使うのはそのためだ。

○配偶者の帯同の検討を

特定技能という新たな在留資格が導入され、ミドルクラスの人材および単純労働の外国人が入ってくるにあたって再検討すべきなのは家族の帯同だ。技能実習生は3年から5年に延長された後も、家族の帯同は認められてこなかった。政府の提案するのは、特定技能についても、技能実習生と同様に認めないというものだ。

技能実習で日本に渡る若者は20歳前後。3年から5年で20代の半ばになる。多くは、決して恵まれているとは言えない住環境の中で共同生活をしている。技能実習を終えて、20代の半ばから更に5年、特定技能の在留資格で日本に留まるとなると、彼らは日本で30歳前後になる。結婚適齢期が20代の前半とされているベトナムの女性にとっては、婚期を逃すことにもなりかねない。

先日、ベトナムを訪問し、彼女たちと話をする機会があったので、日本で何年働きたいか聞いてみたところ、半数の若者は5年以上、残りの半数は、日本に行ってから5年以上働くかどうか判断すると答えてくれた。日本だとセクハラと言われそうで迷ったが、同世代の娘を持つ親の気持ちでと前置きして、女性に「結婚はどうするの」と聞いてみたところ、一旦帰国した時に結婚して、再び単身で日本に行くと答えていた。実にたくましい。


女性だけの問題ではない。技能実習生を見ていて感じるのは、若い男性のみの集団生活はどうしても荒みがちだということだ。異国で心が折れそうになる時もあるだろう。失踪や犯罪の誘惑にかられそうになった時、家族がいることでブレーキがかかることもあるのではないか。

いわゆる高度人材については、家族の帯同が認められている。特定技能の在留許可が下りた時点ですぐにとは言わない。例えば、1年間、労働者としてしっかり働けば、妻を連れて来られるということになれば、励みになるだろう。仮に子どもが生まれれば、地域とのつながりもより強くなるだろう。

家族の帯同を認める場合、最大の課題は教育の問題だろう。日系人の受け入れを長年にわたって進めてきた太田市や浜松市は、多くの困難を乗り越えて、外国人の教育で実績をあげてきた。先進事例を見てみると、日本人の子どもたちが、若い時に身をもってダイバーシティに対する許容力を身に着ける機会として捉えるべきだと考える。

○医療保険の扶養範囲の絞込みが必要

家族の帯同と逆の意味で再検討が必要なのが、健康保険の被保険者の範囲だ。日本の医療現場では、日本に住んでいないにも関わらず、日本の保険証を持って受診する外国人が増えている。彼らが巨額の医療費がかかる手術などを受けた場合、公費の負担は相当の金額になる。

日本の健康保険法は、「被保険者の直属尊属、配偶者、子及び兄弟姉妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの」を被扶養者として認めている。日本に住んでいる外国人が、母国に住んでいる親や祖父母、兄弟に仕送りをしていれば、保険証が公布されることになる。厚労省は通達で、海外で居住する家族の年間収入が被保険者からの仕送り額より少ないことを要件としているが、ベトナムなどからの出稼ぎの場合、該当するケースが相当にあるのではないか。

日本の医療保険は、平等に医療サービスを受けられるという意味で、世界的に見ても優れた制度だ。その恩恵は、この国で生活する外国人にも適用されるべきだ。一方で、優れた制度を維持するためには、どこかで線を引くしかない。わが国で働く外国人と同居する家族については医療保険の対象とする一方で、わが国で働く外国人が養っている家族であっても、日本国内に居住していない場合は対象から外すことを検討するべきだ。


○移民政策をヒューマニズムだけで語るべきではない

医療保険の適用対象について具体的に指摘したが、あらかじめ考えておくべき問題は多い。諸外国では、移民への社会保障の拡大が社会問題になっている例が多い。想定されうる問題については、あらかじめどこかに線を引いておかねばならない。

例えば、特定技能の資格で入国した外国人が病気で働けなくなった場合、どれぐらいの期間、在留を認めるのか。労災や飛行機での移動が困難な場合は、人道上も当然、在留が認められるべきだが、それ以外の病気で長期間療養する場合はどのように考えるか。

特定技能では、認めらえた技能の範囲で転職が認められることになる。その場合、仕事を辞めた後の求職期間をどの程度認めるのか。労働者として認める以上、在職中は外国人も失業保険料を払うことになるので、失業給付を受ける権利をどこまで認めるかの問題にもなってくる。

いわゆる高度人材では、在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合、在留資格が取り消されことになっているが、病気療養や失業中については、幅広く例外として在留が認められてきた。これを特定技能にそのまま適応すると、生活保護の対象者が出てくる可能性もある。ここは議論のあるところだろう。

ヒューマニズムの観点からすると、外国人に対して社会政策の観点から最大限配慮するべきだ。しかし、それが行き過ぎて国民の反発を招いた場合、深刻な社会的対立を招く危険性がある。私は、『外国人労働者』を『人』として受け入れるべきだとの立場だが、移民政策をヒューマニズムのみで語ることの危険性も指摘しておきたい。

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