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"ドロドロよりサラサラ"カレー革命の真実

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小麦粉入りのルウカレーから、小麦粉抜きのサラサラカレーへ。国民食・カレーのトレンドが変わった。食の雑誌「dancyu」(9月号)では、編集担当者たちがカレーの海に溺れながら、この「スパイスカレー」の動きを特集にまとめた。「カレー革命」の知られざる真実とルーツの一部をご紹介しよう――。

なぜ日本人の心と体は今、「スパイスカレー」を欲するのか

食の雑誌「dancyu」9月号は、カレー特集です。真っ赤な表紙のカレーは、一見、古典的な“カレーライス”に見えますが、実はこれ“スパイスカレー”と呼ばれるカレー。

カレーにスパイスが入っているのは当たり前でしょ? と突っ込まれそうですが、いま、この古くて新しいスタイルがカレーの世界を席巻しつつあります。さて、その全貌と人気のほどとは? 果てしなく広がるスパイスの海を、時に感動し、時に溺れながら、多幸感と炭水化物過多と一緒に泳いだ取材リポートです。

「dancyu」(9月号)の特集は「スパイスカレー 新・国民食宣言」。(撮影=三木麻奈)

とあるカレーの店を訪れたのは、取材が始動したばかりのある晩春の夜のことでした。わずか6席の喫茶店の間借り、週一の夜だけ営業。東京は東の、どの駅から歩いても15分はかかるという立地で、おまけにその日は土砂降りでした。

こんな夜に客はいるのだろうかと訝(いぶか)しがりながら暗い道を歩いて行くと、闇の向こうにぽつんと小さな灯が。そして、そこには5つ~6つもの色とりどりの傘の花が、雨の中、静かに順番待ちの列をつくっていたのでした。

あの時の衝撃はにわかには忘れられません。

カレーの「骨格」が世代交代していた

なるほど、人々はカレーに煌々たる情熱の炎を燃やしているらしい。席に通されて、ことんと目の前に置かれたミールスをひと匙食べて、その夜、2度目の瞠目。なんだこれ、ものすごくうまいじゃないか!

日本のカレーは変わりつつある……。

そんな予感が、dancyuカレー担当者たちの間で確信に変わったのは2016年くらいかと思います。「カレーは、ライス」とタイトルが付けられたその特集号(2016年7月号)は、カレー界が一巡して、カレーライスに原点回帰した年でもありました。

しかし、その年、誌面に並んだカレーの面々は、なんというか“顔”が違いました。これまでの日本のそれでもなければ、いわゆる本場のそれでもない。まず、ルウというよりもソースと呼びたくなるような、小麦粉抜きのサラサラカレーが大多数。

しかも、ワンプレートにいくつものソースがかかっているものも少なくない。野菜が多いし、ライスの盛り付けが丸かったり三角だったり、パクチーの緑がさりげなく添えられたり。それは表層的な変化だけではなく、例えれば、最近の若い子はみんなアゴがほっそりしているね、といった具合の、骨格からしての世代交代感がありました。

「大阪スパイスカレー」がカレー革命の火付け役のひとつ

そこには、なにより、大阪で起こったダイナミックなカレー革命の影響があったのでしょう。

かの地では、「大阪スパイスカレー」と呼ばれる、自由なスタイルのカレーが大ブーム。火付け役のひとつに、1992年開店の「カシミール」という一軒があります。ライスが見えないほどに、皿の縁ぎりぎりまで注がれたカレーは、紛れもなくサラサラのスパイスカレー。時代を先取りしたこの一皿で、同店は、ほどなく行列の絶えないレジェンドとなっていきます。

主人の後藤明人さんが音楽ユニットEGO-WRAPPIN’の初代メンバーだというのは、知る人ぞ知るエピソードでしょうか。そのことがあってのことか否かは不明ですが、大阪のカレーシーンは、音楽と結びつきながら今に至る発展を遂げていきます。それは、フェスやイベントなどの開催も含めて、つくり手と食べ手が一体となって完成させた一つのカルチャーとなり、東京をはじめとした全国にその影響力を広めていきます。

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