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なぜ、いま「高校生と地域」が注目されるのか(後編) ~「高校生と地域」をめぐる新潮流(1)~

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2018/06/20
公共経営・地域政策部 研究員 喜多下 悠貴

本シリーズ「『高校生と地域』をめぐる新潮流」では、現在、教育政策、地域政策など、多様な観点からの注目が高まっている「高校生と地域社会との関わりのあり方」の実態及び求められる方向性について、様々な事例や調査データを通して考察を深めていきたい。初回となる本稿の後編では、「高校生と地域」をめぐる注目すべき事例を取り上げ、いかにして地域と教育をめぐる課題解決を図っているのか、概観していきたい。

1.「高校生と地域」をめぐる実践事例 ~教育と地域の連携による課題解決の循環モデル~

前編で見てきたように、教育と地域における相互期待、そして解決が目指される課題は多様かつ複合的であり、両者の効果的な連携が目指されるところである。ここからは注目すべき事例を概観しながら、実践の中で具体的にどのような「解」が生まれつつあるのか紹介していきたい。先にも述べたように、ここで紹介する事例は、地域と教育をめぐる個別の論点(図表1。前編の図表を再掲)に対する各論的な対応策ではなく、1つの論点への対応を契機として、それが教育(高校、高校生)と地域に係る広範な課題への「解」として波及している点が大きな特徴である。こうした構造も踏まえながら事例を整理していきたい。

図表1 教育と地域の連携をめぐる主要な課題(前編より再掲)

「量」への対応
「質」への対応
教育 【(1)教育×「量」】
■人口減少に伴う生徒数減少にいかに対応するか

■地元進学率をいかに向上させるか

【(3)教育×「質」】
■地域との連携により、いかに教育内容・教育環境の魅力向上を図るか

■上記の結果として、いかに生徒の学び・成長を促進するか

地域 【(2)地域×「量」】
■教育環境を誘因とした移住・定住をいかに促進するか

■進学・就職に伴う人口流出にいかに対応するか

【(4)地域×「質」】
■地域活動や地域産業の担い手として、高校や高校生をいかに位置づけるか

■上記の結果として、将来的な地域の担い手をいかに育成、確保するか

事例①:地域と連携した教育プログラムの構築 ~質からの課題解決アプローチ~


<概要>
島根県では、「離島・中山間地域の高校魅力化・活性化事業」として、高校教育の魅力向上(=魅力化)に対する支援を行っている。こうした支援に前後して、県内の多くの高校では、地域と学校が連携した教育プログラムを創意工夫の上構築し、「その地域でしかできない学び」を模索、展開している。その内容や効果については、樋田(2018)によって整理されている。 図表2 「高校の魅力化」における地域の特色を活かした教育

魅力化の高校では、「地域学」「夢探究」「奥出雲学」「だんだんカンパニー」「聞き書き」「アントレプレナーシップ教育」「〇〇高校生による街への提言」「隠岐ジオパーク研究」「生命地球学」などの名前で各高校が工夫をして「地域の特色を活かした教育」を行っている。

「地域の特色を活かした教育」では、地域の社会、経済、自然、文化を学習する。こうした学習をアクティブ・ラーニング(AL:主体的、協働的で深い学び)の視点から検討すると、地域住民や地域の産業界、行政や講師や指導者や学習の支援者(地元特産品を用いた商品開発の支援)として参加し、生徒は支援の元で地域に働きかける。生徒は知識を獲得するだけでなく経験を獲得し、地域への当事者性を獲得し、生徒と地域は信頼、互酬性の規範(恩返し、恩回し)、ネットワーク形成を達成する(社会関係資本)。

注)下線は筆者加筆。
出典)樋田大二郎・樋田有一郎(2018)『人口減少社会と高校魅力化プロジェクト~地域人材育成の教育社会学~』p154。

また、文部科学省では、「地方創生、地域振興の観点から、高校生が地域の大人と共にソーシャルビジネスの展開により地域の課題を解決していく取組」として、地域ビジネス創出事業(SBP(Social Business Project))の普及支援を行っており、「全国高校生SBP交流フェア」を共催するなど、全国的な推進が図られている。この取組の特徴は、先に見た高校魅力化の取組と同様、地域と関わることによる生徒への教育的側面を重視している点に加え、「地域の課題を解決していく」ことを目的として、生徒に地域を舞台としたビジネスを経験する機会を与えている点である。

例えば、SBPの先行事例の1つとして紹介されている三重県立南伊勢高等学校南勢校舎の「南伊勢高校SBP」では、学校の部活動という位置づけで、「自ら働く場を確保することで地域に残れる仕組みを作っていくこと」を目標に、町の特産品を詰め合わせたセレクトギフト、町のゆるキャラをかたどったたい焼きなどの製造、販売を行う等、地域に根差したビジネスを手掛けている(注1) (注2)

<論点類型からみた整理>

これらの事例は、まず「地域の特色を活かした教育」を構築することで、生徒にとってアクティブ・ラーニングの実践の場を提供する、「(3)教育×質」に対する打ち手を契機としている。こうした取組を通じて、生徒は「地域への当事者性を獲得」し、地域課題解決を目指した挑戦に主体的に関わるようになる。こうした姿勢は、それに関わる大人に対しても好影響を与えていく。

さらに、高校時代に高校生が地域の実態やビジネスに触れることは、地域への定着や将来的なUターンにもつながっていくことで、人口の「量」に対する課題への打ち手にもなっていく。この点に関して、独立行政法人労働政策研究・研修機構が地方出身者に対して行った調査結果である図表3によると、「Uターン(希望)は、親との関係、ライフコース、地元への愛着、地元企業の認知によって形作られる。とりわけ愛着の影響する部分は大きいが、高校時代までに地域の「働く場」を知ったことが、地域を転出した後も愛着として残り、Uターン希望を喚起する可能性がうかがえた」(下線は筆者加筆)という結果が得られている(注3)

図表3 高校時代までの地元企業の認知程度別に見た出身市町村への愛着
出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構(2017)「資料シリーズ No.188 地方における雇用創出 ―人材還流の可能性を探る―」( http://www.jil.go.jp/institute/siryo/2017/188.html

最終的に、こうした地域に繰り出す魅力ある教育プログラムを実施しているという評価は、中学生や中学校の教員等の知るところとなり、地元進学率の向上にも寄与するという好循環の可能性を有している。こうした循環を図式化すると、図表4のようにまとめることができる。要約すれば、教育と地域が連携することによる「質」へのアプローチを契機として、それが「量」に関する課題の解決にも波及していくアプローチであると言える。

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