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危機管理と安全神話

 危機管理の要諦とは「悲観的に予測し、楽観的に行動する。」、そして、最悪なのが「楽観的に予測し、悲観的に行動する。」。大学時代に読んだ佐々淳行さんの本で学んで以来、ずっと肝に銘じています。 

 最近、色々な日本を取り巻く危機について思いを致しながら熟考する中で、非常に奇妙な現象に気付きました。

 原子力発電所には、かつて安全神話がありました。かねてから国会で全電源喪失の可能性を指摘されてきたにもかかわらず、「そうならないよう万全の態勢を整えている」というのが政府答弁でした。正に「楽観的に予測」するという安全神話に陥っていたわけです。その安全神話が東日本大震災で崩壊しました。

 そして、国の安全保障は(当然の事として)一つの危機管理です。原子力発電所の安全神話を厳しく批判してきた人達の中に、国の安全保障について「楽観的な予測」をする方が居られます。本来であれば、全電源喪失の時と同じようにありとあらゆる可能性を念頭に安全保障を考えるというのが筋論だと思います。

 更には、昨今、国の安全保障ではかなり微に入り、細に入るような危機管理に御関心の方の中に、財政危機に対する「楽観的な予測」する方がかなり増えてきています。えてして、その手の予測は経済学上の議論に堪え得ないものが多いのですが、それでもかなり世間に流布しています。日本全体で、財政危機について「悲観的に予測」する文化が下がってきているな、というのが率直な感想です。安保法制の時に政府が展開したような「ちょっと起こり得ないような想定」まで踏み込んだ議論が必要なはずです。

(こう書くと、「悲観論ばかりでは景気は良くならない」というお叱りが来ます。一旦、悲観的に予測したら、その後は予測に基づき楽観的に行動するべきだという事は強調しておきます。)

 ここまで述べてみて、「実は『危機管理』についてはポジション・トークが横行しているのではないか。自分の願う方向性に沿うのであれば『危機管理』に熱心であり、沿わないのであれば不熱心、というのは、本質的な意味において『危機管理』には関心が無いという事かもしれない。」と思うようになりました。

 どのような危機であろうとも、まずはポジション・トークから離れ、きちんと安全神話を排し、「悲観的に予測し、楽観的に行動する」という原則を貫く、そういう政治が求められていると思います。

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