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秋吉 健のArcaic Singularity:5Gで変わる世界。目前に迫るモバイル通信技術の大革命は人々の生活をどこまで変えるのか?各社の取り組みや現状からその未来を予想する【コラム】

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次世代通信規格「5G」へのMNO各社の取り組みやその未来について考えてみた!

モバイル通信の世界に再び「次世代」の波が押し寄せてきました。数年ごとにやってくるこの波は常に世界を変え、人々の生活を変えてきました。振り返ればポケベルが「電話」を拡張する道具として登場し、その後の携帯電話やPHSによって人々のコミュニケーションの密度が一気に引き上げられたのをきっかけに、人はモバイル通信という手段によって世界と繋がり続ける時代へと突入しました。

3Gサービスが始まった当初、人々はADSL回線並みに速い通信速度に圧倒され「音楽をダウンロードで購入する時代が来た」と喜んだのも束の間、次の4G時代ではスマートフォン(スマホ)の登場とともに「映画もストリーミング配信で観る時代なのか」と驚愕しました。自分たちと世界がつながっていることはもはや当たり前であり、その頃になると携帯電話がなかった時代にどうやって友人と待ち合わせしていたのかすらも忘れてしまっていたほどです。

そして今度の波は「5G(第5世代移動通信システム)」です。5Gのメリットや特徴についてはS-MAXにおいても何度も書かれているため説明は不要かもしれませんが、超高速、超低遅延、超多接続を主な特徴とし、現在の4Gが抱えている問題の多くを解決する「夢の次世代規格」とまで呼ばれています。面白い点は、この5Gへの取り組みがNTTドコモやau(KDDI)、ソフトバンクといった移動体通信事業者(MNO)各社によって微妙に違っていることです。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回はそんな5GへのMNO各社の取り組みやその傾向、そしてそこから見えてくる未来などについて考えてみたいと思います。

あと数年で人々の生活に大変革が訪れるかもしれない

■5Gでは何が変わるのか

はじめに5Gがもたらす通信革命についておさらいをしておきます。5Gとは通信における新たな規格ですが、これまでの3Gや4Gとは大きく異なる点があります。それは規格として他の通信規格を包括する「概念」的な要素を多分に含んでいるという点です。

例えば4Gは主にTD-LTEやFDD-LTEといった通信方式を指し、そこに3Gの通信方式であるW-CDMAやCDMA200 1xなどは含まれず、3Gと4Gは明確に分けられて運用されています。

しかし5Gは4Gとの相互運用なども視野に入れられた規格であり、5Gとしてのトラフィック構築には4G網も利用されることが想定されています。5Gとは4G(LTE)やWi-Fiをも包括し、時には3G網ですら活用して全てをシームレスに統合しつつ、超高速通信から低速・超多接続まで用途に応じて通信環境や接続環境を変化させるマルチレイヤーネットワークなのです。その意味では、5Gとは統合型モバイルネットワークシステムとしての第1世代だとも言えます。

ありとあらゆる通信を統合し繋いでいく無線ネットワーク技術が5Gだ

そのため、5G世代の通信機器ではさまざまな部分がソフトウェア化されます。端的なのは基地局です。当然ながら物理的な基地局は存在しますが、その基地局は単一の通信規格や通信環境のために用意されるのではなく、5Gというマルチレイヤーネットワークに対応したソフトウェア基地局が内包され、そこで複数の通信規格や通信環境が同時に可動することになります。

例えば大容量の映像ストリーミングを流すための基地局と、各家庭の電力量計に接続された通信モジュールからの通信を受け取る他接続用基地局、そして自動車同士の通信などに用いられるV2x向けの超低遅延環境に対応した基地局などが、それぞれソフトウェア的に処理され1つの基地局内で同時且つ個別に可動することが可能なのです。

これらの通信を別々に運用するメリットは他の通信トラフィックの混雑や輻輳に影響されない点です。1つの通信環境(基地局)で全てを処理した場合、例えば災害時などに安否確認のための通信が増大しトラフィックが逼迫した場合、家庭や地域に設置されたIoT機器からの災害情報を送信するために必要なリソースまで奪われてしまい重大なトラブルを起こしかねませんが、1つの物理的な基地局内でそれぞれの通信を仮想的に分けておくことで、スマホ向けなどの一般回線がパンクした場合でも災害情報などは問題なく送受信可能になります。

こういった柔軟な対応は上記のように既存の4G回線などにも適用可能であるとされており、今後は基地局のみならずさまざまなレイヤーで通信が仮想化され干渉問題や輻輳問題などが解決されていくものと思われます。

KDDIが進めている仮想化基地局のスライシング技術。基地局をレイヤー化することで目的に応じた理想的な通信環境を構築し効率的な回線運用が可能となる

■MNO各社の5Gへの取り組みとその傾向

5Gへの取り組みはMNO 3社ともに進めており、いずれも2020年のサービス開始を目標に研究や開発を進めていますが、その取り組みの内容や方向性には意外と特徴的な「色」が見えます。

NTTドコモの場合、取り組み全体の印象は「王道」です。5Gの技術開発そのものへの投資を惜しまず、鉄道会社や電力会社との協業や連携を通じて大きく実証実験を進める一方でエキシビジョン的なユーザーイベントをいくつも開催し、ユーザーアピールにも力を入れることで5Gの認知度向上や企業としてのアドバンテージのアピールを忘れていません。

とくに同社が力を入れているのはユーザーへの啓蒙活動であり、各種モバイル関連展示商談会への積極的且つ大規模な出展や東京ソラマチにおける「PLAY 5G」イベントの常設展示など、企業・一般問わずその姿勢が前面に現れています。特定の分野に注力するのではなく全方位で攻めていくスタイルには、自他ともに認めるモバイル通信のリーディングカンパニーとしての意地と自信のようなものすら感じます。

ワイヤレスジャパン2018では展示会場で最大スペースとなるブース出展を行い企業としての取り組み規模と体力をアピール。数多くのパートナー企業によるブース内展示にも力を入れていた

一般ユーザーを招待して行われたサッカー観戦イベント。巨大な4K解像度のエキシビジョンモニター3枚に5G回線で映像を送るという実証実験を兼ねたものだが、その視覚的なインパクトは一般人にも十分伝わるだろう

NTTドコモが東京ソラマチに常設展示している「PLAY 5G」ではいち早く5Gの世界を体験できる

au(KDDI)の5G戦略に感じる点は交通インフラからの切り崩しです。KDDIと言えばその株主にはトヨタ自動車が名を連ねており、5G分野においてもトヨタとの協業や連携が強く見られます。

とくにトヨタ自動車が現在推し進めているコネクティッドカー構想への参画と投資規模は大きく、自動運転車の実現にも5Gが得意とする低遅延性は必須になります。また自動車に搭載される通信モジュールをIoT機器化することで、V2V(車車間通信)やV2N(車載通信ネットワークサービス)技術によって得られた情報を安全で快適な交通システムの構築へ役立てようという研究も進められています。

また5G技術そのもののアピールよりも「5Gを活用して何ができるのか」を模索・提案している印象が強く、VR・MRゴーグルやテレイグジスタンスといった先進デバイスへの活用やスポーツ観戦イベントでの5G端末を用いた実証実験なども積極的に進めており、よりユーザーに分かりやすい技術の見せ方にこだわっているようにも感じられます。

自動車の自動運転技術自体は4Gでも可能だが、5Gの低遅延性や鮮明な映像送信を可能とする大容量通信性能がなければ実用化は難しい

自動運転車やV2x技術で世界に遅れを取りたくないトヨタ自動車にとって、KDDIが持つ5G技術の活用は絶対条件となる

ロボットの遠隔操作技術であるテレイグジスタンスもまた、5Gが持つ通信性能を余すことなく活用できる技術の1つ。医療や工場作業などへの活用のほか、エンターテインメント分野への活用も模索している点がKDDIらしい

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